それぞれの思惑が重なり、打算で組んでいた勇者パーティのメンバーらに裏切られ、重傷を負った魔術師がいた。
傷を庇いながら命辛々、どこの何者だか知らない別の魔術師が作ったらしき洞窟に逃げ込んだが、一難去ってまた一難、今度は逃げた先で若い盗賊の女に殺されそうになる。
死にそうになった間際、壁に刻まれた文字を唱えた彼に起きた奇跡が起こる。
眩い光に閉じた目を開けると確実に殺意を持っていたはずであった盗賊がなんと、魔術師に好意を寄せるなが
ら優しく介抱をしてくれるようになっていた。
彼の心配をよそに彼女は介抱に留まらず、ほとんど顔見知り程度の彼をご主人様と祭り上げ、ありとあらゆるサポートを目的とした究極的な奉仕をしてくれる。
魔術師が状況から読み取れるのは、実は彼女のそれは好意を寄せるなんて単純なものではなく、執着、そして盲信であるということであり、瞳に浮かんだ魔法陣が彼女をおかしくしているのは明白だった。
手に入れた魔術の正体は人体の洗脳に特化したもので、尊厳の蹂躙においては右に出る者は無いほど。
これを受けたら最後、脳に術式が張り付き、侵食、二度と解けないであろう強力な呪いが刻まれることとなる。つまり、一生操られる生涯を送る奴隷の証というわけだ。
そんな魔術を受けた盗賊を含めた奴隷は彼以外の者を敵視し、彼へ絶対的な忠誠を誓うことが次第に明らかになっていく。
再起を望むテムズは盗賊エリアルや、新たに加わっていく奴隷たちが持つこのような危なっかしい性質を存分に利用した復讐を決意し、今宵、大いなる狼煙を上げる。
改題、改稿して再投稿したものです。カクヨムにも投稿しています。折りたたむ>>続きをよむ