経済的な不安は無く、交友関係も良好。美しい恋人だっているし、追うべき夢も持っている。
前触れもなく現れる人生の分かれ道の度に、一つの道を選んできたけれど、そうして辿り着いたのは不足なんて何もない人生だった。
それでも時々、考えてしまう。もしもあの時、別の道を選んでいたならば、一体どんな人生を歩んだのか――と。
ある日、一人の男が僕の前に現れる。僕と同じ顔をしたその男は、僕と同じ声でこう言った。
「よう、俺はお
前だよ」
分かれ道の向こう側。出会うはずの無いその男は、奇しくも今、僕の前に立っている――。折りたたむ>>続きをよむ