むかしむかし、江戸の世にて、一ふりの太刀、人を喰らひけり。
その名をば"むらまさ"とぞ申す。
血をすすり、魂を裂き、持ち主の意をもてあそび、つひには人を堕とす、呪ひの妖刀なりけり。
その太刀を佩きし者の素性、いまに
しては詳らかならず。
浪人とも、忍びとも、または幕府に捨てられし武門の末葉とも、さまざまに囁かれける。
されど、唯一つ疑ひなきは、
徳川家康をば、斬り伏せし者なり.....といふことなり。
太刀を抜きし時にはすでに、血に塗れたる将軍の間に立ちゐたり。
幕府の柱ともいふべき御身を傷つけし罪、その咎は命をもて贖ふものなり。
追手の刃をかひくぐりて、彼が身を投げたるは、一つの古井戸なり。
されど、その底には水も泥もあらず。
ただ、この世ならぬ異界の口、妖棲まひ、死人歩む、もう一つの江戸に通じてをりし。
かくして、彼は人ならぬもの、異界に生きる者、はたまた異なる時の人々と交はり、またしても追はるる身となりぬ。
これは、ひとりの剣士と、呪はれし太刀との宿世を断たんとする物語なり。
人と妖、現世と異界、過去と未来とを貫き、
つひに伝説と化せし男の、名もなき剣の譚なりけり。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-28 00:00:00
41772文字
会話率:19%
むかしむかし、あるところに、マチコという小さな女の子がおりました。
おなかをすかせたマチコちゃんは、火炎魔法――「ファイヤ」の巻物を売り歩いていましたが、だれも見向きもしてくれません。
寒さにふるえながら、一枚だけファイヤを発火してみたとこ
ろ……たいへん! 炎が止まらなくなって、お城をうっかり燃やしてしまいました。
おまけに、なりゆきで王女様(幼女)をさらってしまい、なぜかマチコちゃんは「魔王」と呼ばれるようになったのです。
でも、マチコさんの願いはただひとつだけ。
「おなかいっぱい、ごはんが食べたいだけなのに!」
これは、ちょっぴり不運で、ちょっぴり図太い、腹黒幼女のお話です――。
/////////
※カクヨムでも投稿しております。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-27 20:00:00
14058文字
会話率:46%
――むかしむかし、と言うには、少しだけ新しい時代の話。
“ヨイノ”という国があった。
江戸にも似た街並みに、妖怪と人間が肩を並べて暮らす、不思議な場所。
笑い声と泣き声と、時々ちょっとした悲鳴が混じる、雑多でにぎやかな町だ。
その街のは
ずれ、目立たぬ長屋の一角に、ひとつの暖簾がかかっている。
「ことのは堂」
看板も貼り紙もない。ただ暖簾に筆文字がひとつ。
何の店なのか、初めての者にはよく分からない。
けれど、口コミは広がっている。
「悩みごとがあるなら、ことのは堂に行ってみな」
「声にできない話でも、聞いてくれるらしい」
「人でも、妖でも、ちゃんと向き合ってくれるってさ」
そんな噂を頼りに、人も妖もやってくる。
何を買うでもない。何を売るでもない。ただ、誰かに“言葉を届けたい”者たちが。
ことのは堂を営んでいるのは、一人の男だ。
名を、高道(たかみち)という。
歳は三十代の半ば。物腰は柔らかく、言葉は穏やか。
人と話すときは冷静だが、その目の奥には火種のような熱がある。
「お悩みなら、お聞かせください。……言葉は、口から出たときが始まりですから」
そう言って、相談者を迎えるその姿は、僧侶でも教師でもなく──ただのひとりの聞き手だ。
けれど、その言葉は、不思議と胸に残る。
彼は、話を押しつけない。助言もしないことがある。
けれど、いつのまにか相談者の心に、小さな光を灯していく。
高道はもともと、ヨイノの人間ではない。
──ある日突然、ここにいた。
転生だったのか、流れ着いたのか。彼自身もその理由は語らない。
けれど、“ことのは堂”という場所が、彼にとっての新しい生きる場であることは確かだった。
高道には未練がない。過去に戻りたいと思わない。
この不思議な国の喧騒も、妖怪たちの奇行も、どこか面白がって受け止めている。
「せっかく異世界に来たんだ。なら、楽しく暮らしてやろう」
その心持ちが、妖も人も、彼の元に惹きつけるのだろう。
今日もまた、誰かが暖簾をくぐる。
言葉にできない気持ちを抱えて。
声にならない声を、届けたくて。
そして高道は、静かに湯を沸かしながら、その人(あるいは妖)の話に耳を傾ける。
「焦らなくていいですよ。……言葉が整うのを、ここで一緒に待ちましょう」折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-07-27 17:30:00
52298文字
会話率:51%
むかしむかし、不可思議に満ち溢れた剣と魔法の世界。魔物を束ねし王、魔王の率いる魔王軍の進攻により、劣勢を強いられた人々は、異世界より英雄を招く術を遂行、召喚された勇者は魔王の配下、果ては魔王自身をも下し、異世界には平和がもたらされた
時
は飛んで千年後。とある村に一人の青年がいた。彼の名はフェイ・クラウン。特筆すべき事などないありふれた平民
訂正。自身の事を千年前に魔王を下した勇者の末裔であると言う妄想に入り浸るありふれた変態である。とある危機を奇跡的に乗り越えてしまった事を皮切りに、彼の人生は大きく歪み始めた
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-21 22:45:09
103903文字
会話率:34%
【ざっくりあらすじ】田舎の狼獣人の双子兄弟が猫獣人の双子姉妹姫の騎士を目指す物語です。
【本あらすじ】
──むかしむかし、ヤルンウィドと呼ばれる村には狼の双子が暮らしておりました。
父の英雄譚を聞かされて育ったルチルとサーフィアは
、魔法紋(ルーン)と呼ばれる獣人だけが持つ不思議な力を目覚めさせる立志の儀式に臨んだ。
だが、銀剣を産み出せる力を得た兄サーフィアとは裏腹に弟のルチルが手にしたのは道具の力を引き出すという曖昧で戦いには役に立たなそうなものであった。
失意に駆られて教会を飛び出した彼は、ひょんなことから猫魔族の双子姫との運命の出会いを果たす。
そしてこれは、王都の学園にて生徒の中でも選り抜きの十人の騎士候補生(エスクワイア)の一員となったルチルが最強の魔道具使いに、サーフィアが無類の銀剣士に──そして王女たちの騎士になるまでの物語である。
共用魔法の表記には【】個別魔法能力|魔法紋(ルーン)の表記には《》を用います。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-19 17:40:52
369991文字
会話率:48%
某県某所で、ごく一部の人々に伝わる昔話を聞きました。
《をとめ蟹淵》と呼ばれているそこには、何とも惚れっぽい女精が棲んでいて、好みの若い男を見つけると自分の暮らす川の底へと引きずり込んでしまうのだとか。
……まあ、若くすらない自分には、関係
のない話なんですけどね。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-15 06:37:46
4014文字
会話率:32%
篤郎じいちゃんが語ってくれた、とある山奥に伝わる昔話です。
その山には腐れ蜘蛛と呼ばれる人喰いの化け物が棲みついていました。
腐れ蜘蛛を退治しようと挑む若い衆のうち、徳郎という若者がただひとり、逃げ帰ってきたのですが……
最終更新:2023-06-05 12:24:14
1916文字
会話率:24%
戦争孤児として育った少年レイ・フォワード達は、大人の争いにゆっくりと巻き込まれて行く。
時には小さな宿場町のいざこざに、時には港町の覇権争いに、そして次第に大きな戦争へと彼等の戦火は伸びていく事になる。
異なる価値観、異なる思想、異な
る種族。あらゆる思いが交差していくこの世界。
蒸気機関が発達した西大陸、帝国が支配する中央大陸、法術発祥の地東大陸。あらゆる力に惑わされる少年達。
彼等は、世界の歯車に組み込まれながらその世界の仕組みと謎に触れていく事になる。
そんな時代に生きた少年達が居る。
彼らの物語の書き出しはそう――「むかしむかし、ある所に」
お伽噺の様式美から始まる、あの日読んだ物語。
・ファンタジー×スチームパンク×ジュブナイルでお届けする、少年達の友情と希望の物語。
◆こんな方にお勧め!
・オリジナル世界観が好きな方
・成長物語が好きな方
・じっくり読みたい方
・ネクストファンタジー以外をお探しの方
・チートやハーレム物に飽きてしまった方
※当作品には『暴力描写、残酷描写、猟奇的な内容の描写、ゴア表現』があります。観覧の際にはご注意ください。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-08 18:35:17
445199文字
会話率:54%
むかしむかし、冒険者を目指す少年がいました。
ある日、少年は言葉を話す剣と出会います。
それはやがて世界の命運さえも賭けた大冒険の始まりだったのです──。
最終更新:2025-06-28 10:00:00
8515文字
会話率:39%
え~、『人』という字はですね、ひとりの人がもうひとりの人を支えている形を表した文字だと言われています。人間というのはお互いが支え合って生きている……いや、実は片方が寄りかかっているだけだとか、いやいや、ひとりで堂々立っている姿を表している
んだとか……まあ、ごちゃごちゃ言っておりますけども、結局のところ、いろいろな物の見方がありますよねって話です。はい。
まあ、なんにせよ、人が支え合って生きているってのは確かなことでして、持ちつ持たれつ、優しさには優しさを、礼には礼を、恩には恩で返し――そういうもんです。
でも、この恩返しってやつは、なにも人間だけの美徳じゃございません。時には、動物だって恩を返すことがあるもんです。
もっとも、動物ですから、物の見方は人間とはまたちょっと違ってくるのかもしれませんがね。
ところで、『人』という字、蛇の舌にも見えませんか……?
むかしむかし、あるところにみすぼらしい家に住む一人の男がいた。怠け者で定職にも就かず、日銭を稼いでは酒と飯に消え、その日暮らしを続けていた。
当然、食うに困る日もしばしばあり、この夜も腹を空かせていた。
男は「まあ、寝ちまえばいいだろう」と、いつもの調子で気楽に構え、灯りを消して布団に潜り込んだ。
すると、しばらくして――。
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-06-24 11:00:00
3529文字
会話率:40%
あ~よい、よい、よい。良い、良い、良い。酔い、酔い、酔いっと……。え~、むかしむかし、酒に酔った男がおりまして。ふらふらとした足取りで夜道を歩き、はてさてどこへ向かうのやら……。
いや、どこかでもう一杯か二杯、引っかけるつもりではあるの
ですが、迷っていたのは人生の岐路というやつです。酒が悩みを解決しちゃくれないとわかっていても、飲まずにはいられないのでした。
「おや……? へへへ……どうもお」
男は、通りの端にぽつねんと佇む一つの屋台を見つけた。温かな灯りが地面に滲んでいる。ふらりと吸い寄せられるように暖簾をくぐった。
屋台の客たちは皆、やや上を向き、にやけていた。その雰囲気に男もつられ、自然と頬を緩める。
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-06-18 11:00:00
1923文字
会話率:35%
むかしむかし、ある町にたいそう羽振りの良い商家の旦那がいた。金があるのをいいことに、昼間から酒をあおってはご機嫌。家族もそんな旦那にほとほと呆れ果てていた。
そんなある日のこと。旦那はいつものように縁側で寝そべり、一人酒をあおっていたが
、ふと酒瓶が空になっていることに気づいた。
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-05-18 11:00:00
1239文字
会話率:46%
『むかしむかしあるところに、一人の女侍がおりました。
ある夜、彼女は一人の幼い少女と出会い……
そして……
めでたしめでたし』
日本の童話はお好きでしょうか?
小さい頃に読んだ、記憶に残るおとぎ話たち。
楽しい話、怖い話、悲しい話。
本
作は、そんな話たちのストーリーを基にして
一つの物語として書いてみました。
「この話はどの童話が基になっているのか」
という風に考察しながら読んで頂くと楽しめるのではないかと思います。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-21 20:21:12
292700文字
会話率:24%
むかしむかし、あるところに、みんなから『じめ太郎』と呼ばれ、いじめられている男の子がおりました
最終更新:2025-06-14 09:50:25
1695文字
会話率:34%
『昔ばなしの、その後』
桃太郎は、鬼退治のあと何をして暮らしたのか?
かぐや姫は、本当に月で幸せだったのか?
浦島太郎は、玉手箱を開けた“その後”に何を見たのか――。
『昔ばなしの、その後』は、日本の誰もが知る47の昔話に、“その先の
物語”を描いた短編集です。
あの英雄たちの静かな日常、動物たちの知られざる続き、忘れられた登場人物の再登場…
それぞれの“その後”は、時に笑えて、時にほろりと泣けて、そして少しだけ不思議。
物語の舞台は、昔の村だけでなく、現代の町、SNS、カフェ、気象予報センターまで広がります。
鬼の子どもたちと畑を耕す桃太郎、バーチャル茶釜としてデビューした狸、
季節がめぐる頭を持つ男、そして“開けてはいけないつづら”の行方――
読後には必ず「続きを考えたくなる」、そんな余白を持った物語ばかりです。
本書は、子どもたちの寝る前に読んでも、大人がほっと一息つく時間に読んでも、
誰かと語り合いたくなるような、やさしくも深い“昔話リミックス”。
むかしむかし、の続きに出会いにきてください。
あなたが覚えている物語は、まだ、終わっていません。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-01 01:26:19
14502文字
会話率:14%
むかしむかし。
食の大地・ガストロノミアにふたつの国がありました。
ひとつは『なんでも食べる』ことで有名なオンニーボロ王国。もうひとつは『選り好みこそ美徳』とするスクィジット王国。
ふたつの国は、食の哲学を巡る戦争によっていがみ合っ
ていました。
そこで、両国の姫と王子が和平のために結婚する話が持ち上がったのです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-01 01:14:55
3117文字
会話率:32%
これはむかしむかし、本当にあったお話なのよ。
まったく信じない娘に私はこの絵本を読み聞かせる。いつか私がしてもらったように。願うならこの物語が永遠に語り継がれていくことを願って。
最終更新:2025-05-12 21:16:20
1162文字
会話率:29%
まず先にお伝えしておきたいことがあります。この作品はジャンルは童話としており、また話し方も絵本に似せて書いておりますが、内容はこれからどんどんダークにしていくつもりなので、前向きな内容を期待している方はスクロールをお願いします。
むかしむか
し、まだ人間と妖精が一緒に暮らしていた頃、小さな町に住むラッピー君は最近町の人が元気がないのを見て元気を出してもらうため妖精の力を使い「元気屋」を始める決意をする。しかしその力を使うことで様々なトラブルに巻き込まれていく…折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-07 11:26:14
834文字
会話率:12%
今宵は秘話。わらしべ長者の裏を語らせて頂きましょう。
真面目なお話でございます。かつての信念がつまったお話を、ご共有させて頂ければと存じているのです。忘れられたくないという妄執が紡ぐ、とある説話なのでございます。
むかしむかし、あると
ころで、ひとりの男がおりましたーーー。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-16 13:00:00
12891文字
会話率:18%
むかしむかしあるところに、
ふたりぼっちのおじいさんとおばあさんがいました
最終更新:2025-04-04 11:25:14
4063文字
会話率:25%
むかしむかし、あるところに悪い神様と心優しき少女がいました。
悪い神様は生まれながらに邪悪な心と天変地異を起こす力を持っていました。
悪い神様は心の向くままに雷を起こし、田畑を焼き、大勢の人々を殺しました。
やがて人々は悪い神様を【
悪神】と呼び、恐れました。
心優しき少女は生まれながらに清き心と人々を癒す不思議な力を持っていました。
少女は心の向くままに大勢の人々を助け、癒しました。
やがて人々は彼女を【聖女】と呼ぶようになり、敬いました。
あるとき、心優しき少女の活躍を妬んだ者たちが共謀し、少女にあらぬ罪を擦り付けました。
少女の名声は一夜にして堕ち、少女は【悪女】と呼ばれるようになりました。
※この短編小説は、拙作『幼女勇者チーちゃんの異世界奮闘記 ~限界ロリコンアラサー女がオリキャラ幼女に転生した結果 ><~』に登場するとあるキャラクターの独立エピソードとなります。
本編と全く関係ないエピソードなので、本編を読まずにこれだけ読んでも大丈夫です。
もし気になったら本編も読んでください!
あといいねと思ったらいいねもください!
よろしくお願いします!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-13 19:33:53
2099文字
会話率:4%
むかしむかし。それは海が、いつもより遠ざかったときのこと……
最終更新:2025-03-09 23:50:00
2335文字
会話率:5%
むかしむかし、あるところに…
しかしお約束通りのはじまりも、お約束を呼ぶとは限りません。
最終更新:2024-12-15 23:10:00
2427文字
会話率:0%
むかしむかしの捧げもの。もたらされる恵みもまた忖度なく、ただその事実を告げるのみ……
最終更新:2024-12-03 20:00:00
2323文字
会話率:3%
目覚めた世界は奇妙だった。
これから出逢う女性と共に。
むかしむかしか、とおいとおい未来の、
あるいは知らない
「自分」を見つける物語
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何も知らない主人公を助けるヒロイン達。
異世界懸けた
波乱の人生の物語!
(バトル要素と恋愛に重きを置いてまあ、あとギャグあるかな?)
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-09 16:01:56
2017文字
会話率:46%