──この店は、まだ名前を知らない「物語」のためにある。
どこにあるのか、誰が開いているのか、誰も知らない。
それでもふとした夜、心に雨が降ったとき、人はなぜかこの店にたどり着いてしまう。
小路の奥、薄明かりの看板。その上には、一匹の黒猫
が静かに座っている。
扉を開ければ、古びた木の床と、ジャズのレコード。そして、無口なマスターが出迎えてくれる。
名前も、年齢も、性別すらもわからない。けれどその声は、なぜか、ずっと昔に聞いたようなぬくもりがある。
──この喫茶店「月夜ノ猫亭」は、誰かの心が迷ったときだけ、姿を現す。
訪れる人々は、皆、何かを抱えている。
過去の痛み、未来への不安、言えなかった言葉、消えてしまった夢。
だがここでは、猫たちが静かに寄り添い、マスターがひと匙の言葉を差し出してくれる。
一杯のコーヒーの香りと、記憶をそっと撫でる猫のまばたき──
そして、帰り際にポケットの中にそっと残された“なにか”が、彼らの物語に続きを与える。
これは、“誰かの人生の一夜”にだけ灯る、静かな灯りの物語。
すべての回は独立した短編として読めるが、やがて店の秘密やマスターの正体が、少しずつ明かされていく。
読んだあと、心のどこかに、そっと温かい余白が残る──
そんな物語を、あなたに。折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-05-17 07:00:00
10618文字
会話率:22%
エルシャール帝国の帝都ラシフェンは不夜城とも呼ばれていた。夜が更けても店という店には煌々と明かりが灯り、昼間の喧騒と変わらない賑わいを見せている。もともと、帝都と冠するに相応しい賑やかな街ではあったが、それはここ数年さらに顕著になっていた。
――魔王軍の台頭により、帝都附近に出現するダンジョンが増えたためだ。
そんなラシフェンの中堅ギルドに勤める、独身アラサー三人組、トリニティ、イングリッド、アプリコットのぐだぐた女子会。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-15 18:26:10
22808文字
会話率:70%
平成を迎えることなく滅びた種族がいた――名を麒族(きぞく)という。
太古より、この世には二つの支配種族があった。
昼の覇者:人類。最初に火を灯し、最後に刃を振るった。
夜の帝王:麒族。最初に夜を統べ、最後に夢を見た。
人類が陽の下で耕し
、築き、増えゆくあいだ、
麒族は闇の中でそれをあざけり、狩り、喰らってきた。
夜は麒族のもの。
一歩でも踏み込めば影が動き、命が引き裂かれる――。
幾千幾万年もの間、人類は夜の恐怖を耐え忍んだ。
だが、人類はついに手に入れる。
電気という、史上最大の武器を。
街に明かりが灯り、世界から夜闇が消えた。
麒族の狩場は奪われ、彼らの命運は崩壊していく。
時に、昭和五十八年。
舞鶴学園の二年生・死ノ儀流一郎(しのぎ・りゅういちろう)。
彼は、麒族を討つ『攻類神道(こうるいしんとう)』の処刑人だ。
人類の支配を盤石にするため、夜の残党狩りに生きている。
本来なら、彼の手には麒族を屠る銘刀『鬼包丁』があるはずだった。
しかし、その刃はある因縁で封じられ、その業を奪われていた。
それでも彼は戦う。
人々に夜の安寧を捧げるために。
そんな時に現れたひとりの少女――時女宵子(ときめ・よいこ)。
彼女は、封じられた銘刀『鬼包丁』を打つ刀匠の娘。
人類の刃を鍛える者の血を引く、運命に呪われし者だった。
今、流一郎と宵子は出逢う。
戦いは新たな地平へと踏み出すのだった――。
月は照らす、誰にも読まれぬ昭和の遺言を。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-06 13:04:50
128612文字
会話率:41%
和風ファンタジー
男を惑わし食う人魚の血を引く凍華は、自分の素性を知らず叔父の家で暮らしていた。青い目と波打つ髪のせいで忌み子だとしいたげられ、日々罵倒され暴力を振るわれていた。挙句、従姉妹が裕福な家の娘が通う女学校に入学するために、郭に売
られてしまう。
十六歳の誕生日に廓に売られた凍華は、月明かりを浴びた途端耐えがたい喉の渇きと飢えに襲われ、客の男の首に手を掛けた。
そこに飛び込んできた妖狩りは、凍華を見るなりやっと会えたと目の色を変える。
必死で妖狩りから逃げる凍華を助けたのは銀色の髪の妖狐。珀弧の名乗ったその男の元で、小狐や猫又と暮らすうちに凍華の傷ついた心は癒やされていくが、男を食うという運命からは逃れられない。
再び満月が来た時、激しい飢えが凍華を襲い…。
満月の灯りが人魚の力を増すなか、誰も食べたくないの凍華と、食われる危険性を知りながら愛を注ぐ妖狐。そして、妖狩りの真の目的とは。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-02-10 19:22:17
91166文字
会話率:40%
今は夏、7月の下旬なのでちょうど夏休みに入った頃だ。周りはすでに暗く、とてもじゃないが足元は見えない。そんな中、月明かりもささない草木が生い茂る森、その中に入る1人の男がいた。(わざわざちょっと遠い場所まで来たんだ、さっさと場所を見つけてこ
の世からおさらばだ)人気のない森でひとり、彼はロープと灯りを手に森の中を彷徨い始めた。彼は森の中を数分ほど歩き、ちょうどよさそうな木を見つけた。しかしそこには…
手に取って読んでいただけたら嬉しいです。処女作なので色々と至らない所があるかもしれませんが、寛容に見ていただけたり、ご指摘いただけると幸いです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-08-04 07:04:00
3775文字
会話率:34%
ドライブしてるときに、ラジオのDJが星の輝きの事を話しているのを聞いて、素敵な話だと思い書いてみました。
自分の大変な時は、自分には見えないけど、命を燃やしている証拠だって。その命の光は、きっと離れた場所に届く光になって、他の人たちの灯り
になるっていう話でした。
なんか、星を見るのが、これまで以上に楽しみになりました。離れていても、誰かが生命を燃やして頑張っているのを想像しながら僕も頑張っていこうと思います。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-04-19 20:43:27
275文字
会話率:0%
とあるトシのクリスマス。
世の中には目が痛くなる程の明かりが灯り、みんなこの日を祝福していた。
そんな中暗い部屋で一人その祝福を拒む一人の少女。
そこに現れた黒い軍服のような恰好をした少年。
何を思ったのかその少年を眺め、ふっと笑みをこぼし
た。
これは、とある冬の日に混濁に飲み込まれた人達の物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-02-14 22:57:59
11029文字
会話率:61%
主人公の名前は夏川(なつかわ)燈花(とうか)、二十八歳。隕石と遭遇する。
花火のような緑色の灯り、時空の狭間は、夕焼け空のような薄明かりだ。
燈花の名前の一文字を絡め、その隕石の名前を燈(あかり)と呼ぶ。
魔法が飛び出す異世界で、燈
花と燈の運命は……。
よろしくお願いいたします。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-08-22 07:00:00
89022文字
会話率:64%
とにかくひたすらに長い列車は各車両に明かりが灯り、全てに人が乗っている。
皆、降りるところは知っている。
最終更新:2017-11-19 22:17:24
4219文字
会話率:29%
夜の闇には、悪魔が潜むと古くからそう言い伝えられてきた国があった。人々は夜を恐れ、闇に飲まれぬよう護りを込めた"灯り"という名のお守りを家に飾り、身に付けるようになった。他国からこの国に訪れたものは、光輝く建物や人々に目
を奪われ、この国を灯りの国と呼ぶようになった。
いつしか時代は変わり、人々は闇夜を恐れることはなくなり、悪魔はおとぎ話に出てくる空想のものと多くのものが捉えるようになった頃、"灯り"という文化はこの国に残り続け、人々の生活の一部となっていた。街灯や家々の明かりは勿論のこと、着る服や置物、建物の一部などに"灯り"の技術は用いられ、国全体を仄かに照らし続けていた。
このお話はそんな生活の一部となった"灯り"という技術に魅力され、"灯り職人"となった一人の少年の物語である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-10-29 18:41:37
34207文字
会話率:61%
人はなぜに夜、思うのか、、
明かりの方を向くのか、、
その明かりの中に見えること
最終更新:2015-10-21 23:10:56
200文字
会話率:0%
今よりも昔、ある武家が、夜中に箱屋を訪れた。
灯りも灯していない店の中で、どんな箱でも作れるという箱屋に、武家は自分の娘を入れるための箱を注文する。
月明かりだけが照らす中、箱屋の主人は武家の依頼に対して――……
不条理ショート・ホラーで
す。
他サイトへも投稿した作品です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-06-09 09:46:53
1121文字
会話率:0%
一人の老婆の話をしよう。老婆の名前は誰も知らないし、誰も必要としていなかった。ここは昔、小吉原と言われる程遊廓や娼館が多くあった。夜中でも道には明かりが灯り、花魁達の白粉の香りが満ちていた。老婆は、島一番の太夫だった。※個人サイトに同じもの
があります。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-05-16 18:32:37
645文字
会話率:12%
とある街の駅前メインストリートより少し中道に入ったそのレストラン・秋空亭。昔からあるその店、昼は食べ慣れた洋食で美味しくボリュームのあるランチを、夜は一風変わって重厚なフレンチフルコースを取り扱う、小さいながらに地元でも人気なお店。特に家で
何かしらいい事やイベントがあると、必ずそこで食事を、という口に出さないお約束がある家庭もしばしば。シェフでオーナーの秋空氏は老年ながら、嘗てフランスで修業した経験もあり日本人の口に会わせながらもしっかりとしたフランス料理を楽しめる。勿論、料理がおいしいだけでなく、サービスも丁寧で行きとどいている。オーナー夫人の温かい微笑みや優しい気配りなどに癒される客も多かった。
だが、如何せん二人は年を重ね過ぎていた。一度オーナーが倒れてからは、無理せず、数量限定のランチと予約制でディナー客を取り、無理のしない範囲でほそぼそと営業を続けていた。それでも、地元で人気の店だったのは間違いなかった。
が、再びオーナーが倒れ、店には『営業休止中』の看板だけが数カ月ぶら下がるようになった。常連客や近所の住民は再びその店にオーナーが返ってくる事を望んでいたが、遂にその望みは果たされる事は無く、『長年のご愛顧、ありがとうございました』という看板が1枚、哀しげに揺れていた。
そしてオーナー秋空氏の葬儀から3ヶ月後のある夜、店に再び明かりが灯り、哀しげに揺れていた小さな看板はドアより取り外された。『営業開始1週間後より』。
小さな看板の上よりもっと上、【Automne ciel】と新しい店名の看板が其処にはかかっていた。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2013-09-05 21:53:24
203801文字
会話率:58%
追って、追われて、終れない。明かりが灯れば着いてくる。逃げて、逃げて、どこへ向かっているのだろう。何処へ辿り着けるのだろう。向かう先も来た道も、確かなものは何も無く、ただ独り、君と走る。僕と、駆ける。
なにも見えなかったお話。
最終更新:2013-03-31 10:10:43
2147文字
会話率:0%
遠く、街の明かりが灯り、目の前には田が広がるだけの静かな夜道。
幼き頃から幾度となく通った道。
舗装されたその道は、ぽつりぽつりとマンションが建ち並んでも、今だその面影を保っている。
最終更新:2010-04-19 22:34:50
1774文字
会話率:6%
今宵もこの遊郭に明かりが灯り、女という名の花が咲き、その花に誘われて男という名の蝶が花の周りを舞う。
遊郭の花々は一体何を思うのだろうか。
そして花々は何を求めているのだろうか。
最終更新:2010-01-07 01:20:41
1235文字
会話率:0%
私、ピアスが好きなの。だって、すっごくスリリングじゃない?
最終更新:2007-05-06 14:26:27
1269文字
会話率:0%