「やあやあ」
民話学者である教授が猫を抱きながら席に座った。
教授は私と話をする時はいつもこの猫を抱くようになった。
猫について詳しく聞いたことはないが、もしかしたらどこか悪いのかもしれない。
「教授、その猫を随分可愛がってらっ
しゃいますね」
「なに、最初は保護するだけのつもりだったのだがね、いつの間にか研究室に入り浸るようになっただけのことだよ」
そう言って教授は静かに笑みを浮かべた。
私も精一杯の笑顔を猫へと向けたものの、猫はこちらの方を見ようともしないようだった。
あからさまな落胆を自ら打ち消すように、私は本題へと入ることにした。
「それで、今回はどんな話を聞かせてくれるんです?」
「そう、それだ。 君、イギリスのフィスタという村を知ってるかね?」
「いえ、一度イギリスには行きましたが...」
「そこで教えてもらった話なのだ。 聞かせてあげよう」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-02-08 10:00:00
1006文字
会話率:0%
ヨーロッパ全域を襲った大地震を境に、世界の空は分厚い雲に覆われ続けていた。 ある日、西の果ての島から流れ着いた一人の少女が言う。「ヒベルニアにだけは太陽が照っている」と。 異常気象の秘密を探るためにヒベルニアを目指したのは、家族を失った異能
の少年、ヒベルニアの秘密を知るエディンバラ名誉司教、好奇心に負け続ける民話学者、冒険小説好きの書籍商。 18世紀のアイルランドとスコットランドを舞台に、彼らの旅が始まる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2011-12-30 22:53:49
263312文字
会話率:53%