「どうされましたか」
階段から聞こえてきたその声に真昼含め五人全員が振り返る。
そこには死神を傍らに携えた名探偵が地に降り立っていた。
佐原玖音はその日、絶海の孤島にある洋館に、同輩の物部葵と、一つ先輩の望月真昼と共に身を寄せる運びとなっ
ていた。
玖音は、夏休みの長期休暇を利用して、真昼に彼女が所有する洋館にバカンスをしようと葵と共に誘われていた。玖音は「もちろん」と了承し、その無人島へとたどり着く。
玖音はすぐに思い知ることになる。
名探偵と別荘この組み合わせで何かが起こらないわけもなかったのだ。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 13:05:39
41708文字
会話率:42%
ある晩、山奥の小さな村に住む健二は、山を越えた街で行われる祭りに向かっていた。道中、ふと耳にした声が気になった。「健二、そこにいるの?」その声は、彼の名前を呼んでいる。だが、周りには誰もいない。
健二は心臓が高鳴るのを感じながら、声のする
方へと近づいた。「健二…おいで…」声はさらに大きくなり、彼は恐る恐る振り返る。振り向くと、背後に薄暗い影が立っていた。目は彼をじっと見つめ、今まで聞いたことのない寒気を感じさせる。
「おまえ、もう戻るな…」影が囁くと、急に風が強く吹き荒れ、周囲の木々がざわめいた。その瞬間、健二は全身の毛が逆立つのを感じ、いつの間にか声が聞こえなくなった。
健二は全速力で村へと戻り、決して振り返ることはなかった。しかし、その夜、彼の耳の奥で今も響き続ける。「健二、戻っておいで…」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 11:00:00
532560文字
会話率:29%
あるクリスマスの夜、男は池袋を歩いていた。
寒風が吹きすさぶ中独り身の自分を嘆いていると、突然後ろから驚きの声が上がり、振り返ると、黒い波打つ球体が浮かんでいる。
驚きも束の間、そこから大量のモンスターが溢れ出し、人間達を襲いだし
た。
男は必死に走り、一つのデパートに逃げ込む。
縮こまり隠れる中で、全世界中が同じ状況に陥っており、未曽有の大パニックになっていることを知った。
同時に、ほとんどの人間が魔法と呼ばれるようになる力を発現していることも。
男は恐怖を感じながらも、夢にまで見たファンタジーが目の前にあることに歓喜する。
まず何をしよう。どうやって楽しんでやろう。
これは一人のオタクが、現代を死に物狂いで冒険する『Real』である。
【第1巻】デパート内攻防戦 編
【第2巻】始まりの地 編
【第3巻】繋がり 編
【第4巻】首都戦争 編
※この作品は賞に応募しようと書いた作品なんですが、途中で、話の内容的に「あれ?これなろうの方が向いてんじゃね?」と思い投稿してみた物です。
ぜひ読んでみてください。
カクヨムにも掲載中
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 10:08:03
1864088文字
会話率:51%
あれから、1年。 以下 2020.3.12 の「ちょいちょい」より
弁当箱大のソニー製ラジオを出して
スイッチを入れて聞く。
もちろん、山奥なのでNHK(笑)
3月11日がやってくる
希望をもってすすむ。
誰かが言った
「
運命の分かれ道、行くも、もどるも・・」
もう4,5年前になるか、
居酒屋で、
宮城出身の人とややしばらく、震災時の話をしていた。
最後に言われた言葉。
「もう、振り返るのはやめよう。じゅうぶんだよ。
前を歩こう」
たしかにその通りだな(笑)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 07:00:00
819238文字
会話率:6%
17歳の少女、香坂葉乃はとある理由により出来る限り人目を避け生きてきた。高校は退学、家にも居場所などなくほぼ虚無のような心を携え屍のように生きていた。
すると、ある宵の頃――自殺願望を抱きつつアーチ橋の上から水面を眺めていると、不意に
名前を呼ばれハッと振り返る。すると、そこにいたのは何とも怪しいローブ姿の男性で――
*当作品は、小説投稿サイト『エブリスタ』『カクヨム』『アルファポリス』でも掲載しております。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 00:01:04
3780文字
会話率:53%
自分用メモ、10分程度でできるので毎日書きたいと思っている
キーワード:
最終更新:2025-07-24 23:12:15
8894文字
会話率:18%
ヒーロー協会から除名という名の追放をされた悪名高いヒーローの私は、そのヒーローで活動していたことを秘匿して郡部の町に引っ越しをした。
そこでヒーローに成りたての女の子が、私が元ヒーローであったことを知り、私に訓練をしてもらいたいと言い始
めた。
静かに、誰にも気にされず過ごすつもりだったのに、中々私を放ってくれない。
他人に教える、ということはとても難しい。
手探りで教えながら、過去を振り返る。どうやって教えられたか、どんなタイミングであったか。
先輩、あなたはどんな風に私に教えてくれていたのかな。
先輩、何を思っていたのですか。
なんてことを、ふと、人生2回目だけど頼りにならない私は思うのだ。
ハーメルンでも公開しています。
※ハーメルンで活動されている『難民180301』先生の『塵埃の魔法少女』に感化されて書きました。
こういうお話って結構好きなんですけど、『難民180301』先生が作った作品は特にグッとくるものがあるんです。
そんなお話がかけたらいいな、と思って書きました。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-24 22:52:49
22248文字
会話率:28%
ちょっと疲れた心に、ひと皿の物語を。
「ランチ2人飯」は、仕事や人間関係にモヤモヤを抱えた人たちが、昼休みにふと迷い込む不思議なお店で繰り広げられる物語。
客は1人だけ。
メニューはなし。
そしてマスターも、同じ料理を一緒に食べる――。
心をほぐす料理と、言葉少なめなマスターとの対話。
食後、振り返るとそのお店は跡形もなく消えている。
「誰にでも、そんな昼休みが一度くらいあってもいい」
小さな気づきと、静かな余韻が残るランチタイム物語折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-24 18:23:23
51194文字
会話率:31%
2010年の夏、地方の村に住む17歳の少女・葵は、祖母の遺した手帳に記された「空蝉」の言葉に心を揺さぶられる。蝉の声が響く縁側で、村の少年・悠と過ごすひとときは、夏の儚さを際立たせる。夏祭りの夜、川辺で二人は刹那の美しさを感じ合うが、夏が終
わると葵は都会へ、悠は海の近くへと別れる。時が経ち、葵は手帳と川石を手に、あの夏の記憶を振り返る。空蝉は、去りゆく夏の美しさと、愛した時間の証を象徴する。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-24 13:33:33
1736文字
会話率:50%
「……気持ち悪い。どうせ、この婚約も嫌なんだろ?」
――それは、婚約者との初対面で言うセリフじゃなかった。
貴族の義務で結ばれた政略婚約。
アーデン伯爵家の次男ノエルは、婚約者リヴィアに一目惚れするも、動揺から暴言を吐いてしまう。
謝る
間もなく彼女は留学し、以降のやりとりは一切ナシ。
「これはもう婚約破棄確定だな……」と覚悟していた数年後──
「ご無沙汰しております、ノエル様」
戻ってきた彼女は、誰もが振り返る“完璧な淑女”になっていた。
近づきたいのに、近づけない。
謝りたいのに、言い出せない。
なのに毎回エスコートされるのは、僕の方!?
やがて二人は、魔石に秘められた謎と学院内の異変に巻き込まれていく――
これは、不器用な少年と完璧すぎる令嬢が、すれ違いながらも心を通わせていく。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-24 12:10:00
152692文字
会話率:34%
ドイツ人とのハーフで、誰もが振り返る美少女・香澄クラウディアは、実は中学時代にデビューした正体不明の大人気ラノベ作家だった。
シリーズ4巻で累計100万部――“天才新人作家”と噂される彼女には、ある秘密の原点がある。
それは、小学生の頃。
自作の小説をバカにされた中、たった一人だけ「面白い」と言ってくれた少年・越智素直の存在。
夏休みの間だけ交流し、別れ、そして……彼の言葉だけを胸に、クラウディアは小説を書き続けてきた。
けれど――
「この想い、どうやって伝えたらいいの?」
何年経っても忘れられないその気持ちを、クラウディアは彼への想いを日記小説という形で綴りはじめる。
そして迎えた高校生活。地元に戻ってきたクラウディアは大好きな素直をまさかの再会。
しかも、彼もその小説を読んでいて……?
素直になれない天才美少女作家と、昔の記憶を失っていた小説を書きはじめたばかりの少年。
文字に恋して、言葉ですれ違って――二人は、同じ文芸部で今の物語を書きはじめる。
恥ずかしくて、素直になれない。
でも、それでも書かずにはいられない。
文芸部を舞台にした青春すれ違いラブコメ、開幕!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-24 03:29:29
105452文字
会話率:40%
大学を辞めた主人公が、生活習慣の狂った1日を過ごす中で過去を振り返る。
最終更新:2025-07-23 23:38:51
4235文字
会話率:6%
人前で、笑顔を貼り付け十三年。
少しでも失敗を犯したら鞭で打たれ、最近は平手もおまけのようについている。
今はそんな鞭打ちのお時間。何回されても慣れないこの鞭打ちも、表面上美しい笑顔で耐えてみせる。
(何回やっても、慣れないわね……)
ルーリア・コキリ・セロライハラ。侯爵家の次女であるがメイドのような暮らしをしている。否、メイドより酷い暮らしをしている。
ワンピースに近い薄茶の埃まみれのドレス。埃を被った髪。その髪は血のように赤黒く、それが理由で家族に虐げられていると言っても良い。髪と同様、目も赤黒くて、まさに血塗れなのだ。瞳がルビーのようなんて、そんな綺麗なものではない。ルビーと呼ばれるものは透き通っていて、生き生きとした赤色の瞳のことを言うのだ。
ルーリアの瞳はそんな色ではない。
赤にはドス黒い黒色も混ざっていて、今にも死にそうな目をしている。髪も同じだ。埃を被って少しばかり見えないは見えないが、よく見れば直ぐに分かるということで。
そんなルーリアが鞭打ちの時間が過ぎて窓拭きをしている最中、母であるギュアカーラの聞いたことのないほどのご機嫌な声を聞き、ルーリアは怪訝そうに窓から門前を見る。すると、ギュアカーラの隣でメティーチェイアが上品なカーテシーを披露しているではないか。
その前には男性がいる。誰かしら。そう思ったのは少しの間。姉と母の自室があるこの廊下には、来ないのではないだろうか。
そう思い窓拭きを再開し鼻歌を歌っていた時、話し声が聞こえて横を振り返ると、あの三人がこちらへ来ているではないか。
ルーリアはバケツとタオルを置いて曲がり角まで逃げた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-23 19:46:21
97715文字
会話率:44%
中学時代、肥満体型を理由に「地味で、まるで着ぐるみ」と陰で嘲笑され、特に密かに憧れていたクラスの人気者・田中健太からは心ない言葉で深く傷つけられた佐藤葵。屈辱とトラウマを胸に、彼女は猛烈なダイエットと自己変革に励み、大学入学時には誰もが振り
返る美貌を手に入れていた。
大学の入学式の日、葵は変貌した姿で健太と運命的な再会を果たす。しかし、健太は目の前の美しい女性が、かつて自分がからかった葵だとは微塵も気づかず、一目惚れしてしまう。同じゼミになった健太は、持ち前の爽やかさで積極的に葵にアプローチ。葵は彼の必死な姿に、過去の屈辱が癒やされるのを感じながらも、心の中で静かな優越感を抱いていた。
しかし、ゼミである体格の良いおとなしい女の子が健太にからかわれる姿を目撃した葵は、健太の本性が何も変わっていないことを確信し、復讐の炎を再燃させる。
日に日に募る健太の恋心は、ついに告白という形で最高潮に達する。「俺、佐藤さんのことが好きだ。付き合ってほしい!」――自信満々の健太に対し、葵はきっぱりと告げる。「私、田中君みたいな人が苦手なんです。あなたの、弱い立場の人間を平気で笑いものにするような、その性格が。見ていて、過去の、ある嫌な光景を思い出させるんです。正直、うんざりします。昔、あなたに、もっとひどい言葉を投げつけられたことがあるから…」
なぜ振られたのか、なぜ「苦手」だと言われたのか理解できないまま、混乱と屈辱に打ちひしがれる健太。最後まで葵の言葉の真意に気づくことはなかった。
失恋のショックから立ち直れない健太と、過去を精算し、新たな道を歩み始める葵。二人の道は完全に分かたれる。健太は自分の本質に気づくことなく、同じ過ちを繰り返すかもしれない。葵の心には、勝利感だけでなく、彼が気づかなかったことへの微かな寂しさが残されていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-22 20:44:12
4003文字
会話率:31%
王宮の中庭にひっそり佇む古井戸には、婚約破棄で身を投げた令嬢の霊が出るという噂があった。ある深夜、伯爵令嬢リエージュ=ブリュッセルは、その噂を確かめるため、興味本位で禁じられた中庭を訪れる。
真夜中0時。井戸を見つめていた彼女の背後から、
不意に男の声が響いた。振り返ると、そこには黒髪の青年が立っていた。古風な貴族の装束を纏い、どこか影のあるその男は、自身を“幽霊ではないが、体を失った存在”と語る。
彼は王宮内で命を奪われ、体を隠されたのだという。魂だけがこの世界に留まり、自分が“見える者”を探し続けていた。リエージュが初めての存在だったのだ。彼には記憶が一部欠けており、名すら名乗れないという。
リエージュは警戒しつつも、青年の必死な願いに心を動かされる。「なぜ私に?」という問いに、「他に誰も見えないから」と答える彼の姿は、悲しくも真摯だった。
やがてリエージュは口元に笑みを浮かべ、「明日、またここで。条件はそのときに話す」と言い残してその場を後にする。
それは偶然の邂逅ではなく、運命の始まりだった。井戸の底に眠る真実が、今静かに目を覚まそうとしていた――。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-22 01:40:00
22754文字
会話率:34%
300ptあればそこそこ人気あったと言えるかな〜と思って!
私、2020年からエッセイ書いてるんです。5周年記念です!軽く歴史ですね!
少しなろうエッセイの流行りも見えるので、案外貴重資料かも。
最終更新:2025-07-20 08:20:43
3114文字
会話率:2%
今でこそ人にあげて喜ばれる絵になりましたが。
私の始まりは、酷いものです(遠い目)
でもね、好きを肯定していけばいつかは上手くなるんだよ。どんなものでもね。
そしてそれは、幸せな生き方なんじゃないかなぁって思うんだよ。
最終更新:2021-10-04 17:27:18
3694文字
会話率:0%
『神との対話』は、アメリカ人ニール・ドナルド・ ウォルシュ(Neale Donald Walsch)さんの著書です。
私は、日本で年間3万人近い自殺者が出ている窮状を憂えています。テレビで鉄道人身事故のニュースを見るたびに、心が痛むの
です。
私はかつてホスピスを目指した病院がうまくいかず、赤字のためにできた億単位の借金返済に追われました(ノンフィクション『いのちの砦』を参照ください)。順風満帆の人生から、一転して絶望の淵に立たされたのです。
自分探しの旅をしていた時に、この『神との対話』に出会ったのです。著者のニールさんは、私と似たような人生を歩んでいますので、強く共感を覚えました。
この書は、私が今までに出会った本の中でも最も秀逸な作品の一つでした。対話形式で書かれた本書をまとめるのは、たいへん難しいことでしたが、人生に悩み真理を求める人々に少しでも役立つようにと、診療の合間をぬってその大要をまとめて、Wikipediaに投稿したのです。
あなたの人生を振り返るきっかけになれたらと、祈ってやみません。
私の説明はあまりに稚拙なものですので、 興味のおありの方は、原著を読まれることを心からお薦めいたします(市町村の図書館やAmazon にも置いてあると思います)。
┌----------
神との対話①②③:ニール・ドナルド・ウォルシュ著/吉田利子訳 サンマーク出版/1997年 価格:普及版 各800円
続編:神との友情 上下・神とひとつになること・新しき啓示・明日の神・神へ帰る・神との対話 完結編
└----------
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-20 02:00:00
1657318文字
会話率:3%
ある頃から、戦場に現れては戦死者の死体を連れ去る魔女の噂が流れるようになった。
曰く、激しい籠城戦が行われた日の翌朝城から死体が消えた。夜明け前に畑作業に出た農夫が、道を一人歩く女を見かけ不審に思い声を掛けたが笑い声を残し女は掻き消え、その
後をいくつもの死体が呻き声を上げながら連なり歩いていた。
曰く、平原で両軍が激突し何千人もの死者を出した翌朝死体が消えた。停戦協定を結び両軍の死者を回収に向かった部隊が、打ち捨てられた武具を残し連なり歩き去る死体を見た。追いかけたが日が昇り始めると女の笑い声と共に掻き消えた。
曰く、夜中に馬車を飛ばす商人が道なき道を歩く女を見かけその後に続く死者の大軍を見た。商人が死者の大軍に驚いていると背後から女の笑い声が聞こえ振り返ると誰もおらず、再び死者の大軍を見やると女と共に掻き消えていた。
噂である、しかし見た。と言い出す者が後を絶たず、ここ数年続く戦争の地で死体が消えるようになったのも事実であった。
茨の魔女である。誰が言い出したのかは不明だが、死者を引き連れ消える女は茨の魔女と呼ばれるようになっていた。
そして茨の魔女の噂に、新たに騎士が加わる事となった。
妖馬の背に乗り、魔剣を振るう騎士である。
かの魔女に仕える騎士が現れ、魔剣によって城を、砦を、大軍を打ち砕く。死者は茨の魔女が連れ去り、騎士は次の得物を求めて妖馬を進ませる。
骸の騎士である。
これは骸の騎士と呼ばれるようになった少女と、その従僕が茨の魔女と交わした契約の物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-19 23:50:00
44359文字
会話率:36%
夢が──私を絡め取っていく。
見慣れたはずの駅の、見知らぬ路線。
ただ静かに、発車の時を待つ列車。
行き先も知らず、あてもなく、私はひとりきりだった。
乗らなければ──そんな衝動とは裏腹に、胸の奥にある薄気味悪さを拭えない。
「この列
車には乗らない方がいいですよ」
振り返ると、見知らぬ男性が立っていた。
そうして緩やかに目覚め……ようやくそれが夢だったと気づく。
夢の感触はまるで現実のように生々しく、私の中に居座り続け──再び、夢は私を迎えに来た。
これは、夢に囚われかけていた私と、夢の中で出会った“彼”との、ささやかな記憶の話。
* * *
全2話完結(本日夜完結)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-19 21:37:42
5332文字
会話率:13%
この世界には、「ケーキ」と「フォーク」が存在する。 ケーキ──甘美な香りと味を持つ、極上の存在。 フォーク──何らかの理由で味覚を失い、ケーキを“美味しい”と感じてしまう人間。 ケーキは自分がケーキであることに気づけず、フォークとの出会
いで初めて己の本質を知る。 だがその瞬間は、時に“捕食”の危機でもある。 社会人1年目を目前にした雪白 恋(しらゆき れん)は企画開発部で働いており、天然ドジな新入社員と部署内で可愛がられていた。 そして鬼上司として恐れられる烏羽 尊(うば たける)主任の下で、叱られながらもひたむきに頑張っていた。 しかしある朝、通勤電車で“ソレ”は起きた。 突然見知らぬ男に腕を掴まれ、耳元で囁かれる。 「……君、ケーキだよね?」 必死に抵抗するも力では敵わず、もうダメかと思ったその時、駅員に引き離され間一髪で助かった。 それが原因で遅刻した雪白は、職場の廊下で仁王立ちする主任の烏羽と鉢合わせる。 「お前が遅刻とは珍しいな。正当な理由があるなら聞くが」 雪白は怯えながら頭を下げるが、烏羽は怒るどころか襲われたことを心配してくれて 意外な優しさに触れたその瞬間から、雪白の中で主任の存在が変わり始めた。 ──その後 出張先のホテルで、烏羽が風呂に入っている間に一人ベッドに転がりながらスマホでドM受けのBL漫画を読む雪白 頬を赤くしながら「…俺もいつか…こんな…」と妄想に耽っていたその背後に、不意に聞こえる声。 「へぇ……雪白、こういうの見るのか」 驚いて振り返ると、バスローブ姿の烏羽が立っていた。 スマホは、彼の手の中 ──この日を境に、二人の関係がほんの少しずつ、変わり始める。 “捕食”の運命に抗いながら始まる極甘・背徳SMラブ折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-19 20:29:19
118207文字
会話率:24%