かつて、傾国の悪女と呼ばれた女性がいた。名を藤原薬子という。時の親王に妃として、薬子の長女が迎えられたのだが、親王は長女の付き添いでやってきた、薬子を寵愛する。のちに親王が平城天皇となり、平城天皇の弟の、嵯峨天皇と争いを起こした際、薬子は服
毒自殺をしたという。
では、本来の妃であった、薬子の長女はどうしたのだろう。母と一緒に服毒したのだろうか。
薬子の長女、名は聖良(ひよし)。彼女は母の死を見届けたあと、時空間を越えて、別の世界へと生まれ変わっていったのである。ただただ、つつましく平凡な幸せを求めて。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-01-25 22:35:00
64234文字
会話率:23%
兄、平城上皇との対立を乗り切り、名実ともに朝廷の頂点に立った神野は、その天分を発揮し、着実に国の形を整えてゆく。その許で、朝廷は後に「弘仁の治」と称えられる安定期を迎える。
藤原北家の長となった冬嗣と、忠実な臣で有り続ける藤原三守、彼
らの理解者で、よき友としての立場を守り続ける良峰安世ら。彼ら第一部からの登場人物に、神野や東宮となった大伴親王らの妻と子供たちや小野篁など、次世代の人物が加わる第二部。安定した治世、円滑な皇位継承を目指しながら、皇室の自律性を維持しようとする神野と、藤原北家の繁栄を目指す冬嗣との関係や、訣別した兄平城上皇への神野の想いなど、その人生を最後まで見守って頂ければ幸いです。
【主な登場人物】
〇神野(嵯峨天皇)
本作の主人公。冒頭時点で二十五歳。
〇藤原冬嗣
兄真夏の失脚に伴い、父内麿の死後藤原北家の長となる。神野が十三歳の年に異父弟である良峰安世を介して神野と知り合って以来、神野に仕え、その治世を支える。神野よりも十一歳年長。妻は藤原三守の姉、美都子。
〇良峰安世
冬嗣の母が桓武の後宮に召されて産んだ、神野の一歳年長の異母兄で、冬嗣の異父弟。良峰の姓を賜わって臣籍に下った。詩文の他にも楽や舞、騎射など多くに才能を発揮、神童といわれた神野の良き友人。
〇藤原三守
藤原南家。祖父が反逆者として処刑されたこともあって非常に謙虚な人柄だが、神野の側近として出世を重ねる。神野の最も忠実な臣。妻は神野の正妻、橘嘉智子の姉、安万子。その娘は後に小野篁の妻となる。
〇安殿太上帝(平城上皇)
桓武帝の長男で、神野の十二歳年長で前の帝。退位後に旧都平城京に移り、様々に朝廷に干渉を試み、ついには都を遷そうとするが、神野の拒否により失敗。剃髪して平城京で暮らす。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-17 16:31:49
110629文字
会話率:48%
「くれぐれも、兄弟仲良くな」
にこやかに言って頭を撫でる父帝(桓武帝)が、実の弟を無実の罪で殺したことを神野は知っていた。朗らかであでやかな母乙牟漏と、十二歳年長の兄で皇太子の安殿。彼らの愛情を信じてはいても、周囲で次々に起きる不吉な出来
事は、幼い神野の心に暗い影を落とす―――
☆
後の嵯峨天皇(神野親王)の幼少期からその死までを描く創作歴史小説です。兄である安殿(平城天皇)への複雑な想いや、臣下となる藤原冬嗣(北家)、良峰安世(異母兄)、藤原三守(南家)らとの友情がメイン。二部構成で長編ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
【主な登場人物】
〇桓武天皇
冒頭時点では53歳。後に現在の京都、すなわち「平安京」への遷都を行なう。果断の人。
〇安殿親王
平城天皇。桓武の長男。冒頭時点では東宮(皇太子)で、年齢は十六歳。
子供っぽく手が焼けるところがあるが、同母の弟妹、神野、高志のことはとても可愛がっている。
〇神野親王
嵯峨天皇。安殿の同母の弟。冒頭時点では四歳。本作の主人公。
後に「三筆」の一人に数えられた能書家で、芸術家肌の人。
〇大伴親王
神野の異母兄弟で同い年。後の淳和天皇。神野の同母妹、高志内親王を妻とする。
〇良峰安世
神野よりも一歳年長の異母兄。第二章で登場する。神野の友人となり、
その生涯を支えた。
〇藤原冬嗣
安世の異父兄。藤原北家出身で、父内麿は桓武に、兄真夏は安殿に仕えている。
神野の第一の腹心となり、藤原北家繁栄の立役者に。
神野とは持ちつ持たれつの盟友のような関係。
〇藤原三守
安世の学友。祖父が反逆者藤原仲麻呂の弟で、乱に連座して処刑されており、
その影響もあり非常に謙虚な人柄。神野の最も忠実な臣下となる。
姉の美都子は冬嗣の妻。自分の妻は橘嘉智子の姉、安万子。
〇藤原薬子
安殿が寵愛する女官。「薬子の乱」で有名。
〇藤原仲成
薬子の兄。安殿の部下で野心家。
【第一部構成】
第一章 春霙哀歌 -相次ぐ死-
第二章 夏日逍遥 -友との出会い-
第三章 行春散華 -桓武帝の死-
第四章 新帝即位 -平城天皇-
第五章 登極 -嵯峨天皇-
第六章 野分前夜 -二所朝廷-
第七章 疾風迅雷 -薬子の変-折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-09-12 21:31:57
146723文字
会話率:48%
史上最大の悪女、藤原薬子。薬子に魅了された後の平城天皇こと安殿親王。運命に引き裂かれながら愛さぬ者と結婚し、運命に逆らって愛する者と結ばれた二人に時代の波が押し寄せる。帝位に就いた安殿親王は薬子とともにする暮らしを手に入れるがその代わりに宮
中で孤立するようになり、失意のうちに帝位を去る。だが、平城京に逃れた平城上皇と薬子はここで市民の支持を集め、京都に反旗を翻した。それは奈良時代の終わりを告げる惨劇の始まりだった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2009-05-31 16:55:02
42335文字
会話率:7%