大道芸を稼業とするカイに拾われた孤児院出身のアリス。彼女はカイの弟子入りをして芸師として経験を重ねていく。次第にスキルも磨かれ順風満帆だった。しかしアリスには気になることがあった。それは師匠の秘密である。カイは、心に悩みのある人を拉致して
は、その人の不幸を取り除き幸せな人生に修正していくという魔法じみた能力を扱うことができたのだ。その能力に関しては終始一貫してアリスには黙秘していた。カイは凄腕の芸師だ。手品も扱う。それにはそれはどんなタネがあるのか。だが何年師匠に付き添ってもアリスはそれを暴くことができなかった。
しかしある時突然、カイと同じ能力を手にする機会がアリスに転がり込んできた。この能力があれば不幸な人を皆、幸せにできる。そう確信してならなかった。しかし彼女の身にふりかかったのは……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-07 12:11:38
109177文字
会話率:59%
むかし、オンボロ長屋に住む仁平という男がいた。働くのはまっぴらごめんだが、家にじっとしているのも気が滅入る。というのも、借金返済の催促に知り合いがひっきりなしにやってくるのだ。だから、彼はいつも町外れをぶらぶらと歩き回っていた。
そんな
ある日のこと。林のそばを通りかかったとき、ふと仁平は、地面にぽつんと突き刺さった一本の鍬を見つけた。
「なんでえ、こんなもの……」
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最終更新:2025-06-07 11:00:00
3866文字
会話率:64%
ある死んだ男。彼は戸惑っていた。自分が死んだことに対してではない。また、天国に辿り着いたことに驚いたわけでもなかった。人間というのは、どこかで自分を善人だと信じ込んでいるものだ。
彼が困惑したのは、天国の様子だった。どこかおかしい。住人
たちは慌ただしく行き交い、不安げな表情を浮かべている。穏やかで安寧に満ちた場所――そんな天国のイメージとはかけ離れていた。まる火災に見舞われた町のような騒がしさだ。
彼は近くを通りかかった住人を呼び止め、訊ねた。
「あの、すみません、何か事件でもあったんですか?」折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-05-29 11:00:00
1394文字
会話率:64%
「『もう戻ってくるなよ』か……。けっ、他人事だから言えんだよ」
そう悪態をついた男。雑草がちらほらと生えている砂利道に唾を吐き捨て、肩を怒らせながら歩いていた。刑務所を出たばかりのその体には自由の風が妙にこそばゆく、不快だった。
「今
からまともな人生なんて送れるわけねえだろうが。また何かやってやらあ……」
そう息巻きながら、転がっていた石を蹴り飛ばす。土埃が舞い、靴とズボンの裾にかかった。石は横へ逸れ、道の脇に生い茂る青々とした雑草の中へ消えていった。郊外の一本道。まだ街まで遠い。男はあくびをし、伸びをした。
そのとき、黒塗りの車が静かに横に滑り込み、ぴたりと停まった。
運転席の窓が下がり、中からスーツ姿の男が顔を覗かせた。
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最終更新:2025-04-30 11:00:00
1893文字
会話率:55%
ガーディソード公爵家の長女のラムは突然の襲撃にあい、妹のアルマを攫われてしまう。公爵家の力を使ってもなかなか居場所がわからない。そのため、兄達に内緒でラムはアルマを捜索する旅に飛び出してしまう。腕利きの魔術師だから、なんとかなると思っていた
のだが、ゴブリンの群れに襲われてしまい重傷を負う。たまたま通りかかった装飾品店の男性、ムスに救われたのをきっかけに二人は、一緒に旅に出ることになる。それは、二人の運命を変えるものになるとは知らずにーーー折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-07 00:00:00
214072文字
会話率:55%
昔々、わ人たちは遠い西の国にいた。寒い冬が続いてみんな食べ物もなく凍えていた。悪い龍がたびたび現れて竜巻を起こし、海の水が天に吸い上げられ、海は干上がっていった。わ人たちは魚が捕れなくなって困っていた。わ人たちが遠くなった浜辺へと出かけた
時、海の女神さまが現われて、わ人たちに干上がった海を歩いて渡り東の地に向かうように勧めた。
わ人たちは海の女神さまの言葉に従い、東へと向かうことになった。長い長い旅が始まった。わ人たちの行く手にはサラルたちが待ち受けていろいろな悪さをして、わ人たちの歩みを止めようとした。わ人たちはそれを何とか追い払い、東の国へ進んでいった。長い旅のおわりにわ人たちがたどり着いた東の国は、果実の多い森が広がり暖かい海に色とりどりの魚が群れていた。わ人たちは海の女神さまに感謝し、その東の国で暮らし始めた。
しかし、長い年月が過ぎ、わ人たちがもとの西の国や長い旅を忘れかけた頃に異変が起こった。突然、西の大きな火山が大爆発を始めた。炎を上げる火の川が麓を埋め尽くし、森は焼け果て、大量の灰が空一面に吹き上がり太陽は姿を消した。灰は地上に絶え降り積もり、森や草原の獣はいなくなり海も白く濁り魚はいなくなった。わ人たちは灰に埋もれ何処に進むことも出来なくなった。しかも山から火を噴く恐ろしい龍が現れ、わ人たちに襲いかかった。わ人たちは濁った海の中に逃げ込むしかなかった。陸に戻れなくなったわ人たちは溺れて海の底へ沈んでいった。
深い海の底に沈んでいったわ人たちは、そこで思いがけない世界を見る。深い海の底は青い空の下、暖かい風が吹き、緑の草原に花が咲く楽園だった。そこは海の女神の国だった。海の女神の国の人達は優しくわ人たちを迎え、見た事もないご馳走を出してくれた。助けられたわ人たちは、海の女神の国で幸せに暮らすことになった。あっという間に一年が経ち、わ人たちは、海の上の国に戻って様子が見たいと、海の女神にお願いした。海の女神はこれを許し、すぐにわ人たちを海の上の浜辺に戻してくれたが、その土地はやはり灰に埋もれ住めるところではなかった。わ人達が困っている様子を見て、海の女神は今度は海岸に沿って北へ向かって進み、ずっと北にある大きな湖を囲んだ土地に行って、国をつくるように勧めた。わ人たちは海の女神の言葉通りに東の国を離れ、海岸沿いに北へ向
かって旅をはじめた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-05 17:09:01
49044文字
会話率:5%
罠にかかった鶴を助けた心優しきおじいさん。
鶴とマッスルくんからの恩返しを受けることとなった。
最終更新:2025-06-03 22:16:01
2367文字
会話率:36%
忘れられない、あの夏の日の約束。そして、君のいない今。
都会での生活に退屈していた高校生・草下隼人《くさか はやと》は、ある夏、父親の故郷である山間の「水楢村」へ、不本意ながら移り住むことになる。
そこで彼を待っていたのは、どこか浮
世離れした美しい少年・夏生湊《なつき みなと》との運命的な再会だった。
湊と過ごすうちに、隼人の脳裏に蘇り始める、幼き日の断片的な記憶。
手を繋いだ温もり、秘密基地での他愛ない約束、そして、靄のかかったように思い出せない「何か」。
なぜ、こんなにも大切な記憶を忘れていたのだろうか――?
再構築されていく絆とは裏腹に、湊の周囲では不可解な現象が起こり始める。
始まりは、かつてその祠に触れた瞬間から。
そして、二人の運命は、再び取り返しのつかない方向へと動き出す。
「僕とずっと一緒にいるって、キミが願ったんじゃないか」
蝉時雨の鳴り響く夏の村を舞台に、忘れられた記憶と禁断の約束が交錯する。
少年の日の純粋な想いが、時を経て切ない恐怖へと変貌する、エモーショナル・ノスタルジックBLホラー。
――君を失ったあの夏から、俺は何度も、この「夏の来な処《くなど》」で君を語る。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-02 21:26:19
24721文字
会話率:36%
塾で知り合った友人は、とある日精神疾患にかかった。人前に立つことさえ出来なくなった友人の夢は漫才師だった。それでも何度も面会にいきポツリポツリと話せるようになって次第に俺たちだけなら話せるようになっていた。
彼が夢を語ると決まって俺らは、作
り笑いをして叶うさと勇気づけた。
君に会わなかったらこんな苦しみはなかったんじゃないだろうかと悩む日々であったが、一番苦しんでいたのは彼だと気づけなかった。
とある日彼が、死にたいと言葉にした。それからみるみる弱っていった。彼の目の前で宣言した。俺らが漫才師になってお前を笑顔にさせるからお前もいつか漫才師になってくれと。その日俺らは家を飛び出した。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-01 12:14:27
324文字
会話率:0%
世間と自分に勝手に壁を作り、生きてきた女がいた。
至って普通の人生で降りかかった災難は珍しくもなかった。
そんな女は普通に生まれて、普通に生きて、普通に歪んだ。
成功からも、失敗からも、家族からも、友人からも、周りの全てから逃げて、逃げて
、逃げ続け、たどり着いたのはダンジョンの体。
ダンジョンになった女の数奇でイカれて歪んだ転生生活の行く末はいかに
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-01 00:15:54
7860文字
会話率:2%
生きていてもつまらないことばかり。17歳の少女、文飾莉(ふみ かざり)は、どこかに何か面白いことはないかと思いながら悶々とした日々を過ごしていた。ある日、運命めいた何かを感じ、通りかかったオフィスビルに違和感を覚え、何かに導かれるように足を
運んだ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-31 22:45:42
7242文字
会話率:36%
20世紀のとある日、人類は人工知能に負け、人工知能によって人類は絶滅しかかった、と思われたが、幾年もの歳月をかけて、人類は人工知能によって壊れた文明を立て直し、長い年月がかかったが、地球上にいる妖怪・幻獣などの種族とも共生出来る社会を築きあ
げた......。
....時は流れて30世紀。他種族と共生出来る環境となった人類が築いた国々は、次々と最新の魔術と科学技術を使い、電脳世界、人間界で上手く社会を築き上げた.....。
.....しかし、光が強くなれば、影は濃くなり、光を飲み込もうとするかの如く、国々を飲み込もうとする....。これは、そんな激動の時代に振り回されるニートだったアラサー男の物語である.....。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-30 19:13:25
124987文字
会話率:25%
ある山道にて、冒険者マインは山賊ガロスを追い詰めていた。
ところが、たまたま通りかかった魔王ディゲイルが、ガロスによって人質にされてしまう。
そして――
「こいつを殺されたくなきゃ、俺の言うことを聞け!」
最終更新:2025-05-30 16:35:12
2837文字
会話率:40%
かつては宮廷魔術師だったシュストは、その魔法の腕を生かし、現在は王都から離れた町で魔法塾を営んでいる。しかし、生徒はたったの三人。
彼の口癖は、
「復習はきっちりやれよ!」
なのだが、毎回これを言うので生徒からは呆れられつつも、どうにか
慕われている。
そんなシュストだが、生徒がいじめられたり、魔法を習うことを止められたり、悪い男に引っかかったりしたら、すかさず出向く。
時には恋人である令嬢アメリアにも相談しながら、シュストは教え子たちや塾に降りかかるトラブルに立ち向かっていく。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-09-22 18:50:06
103020文字
会話率:58%
自称小説家志望の底辺弱者のアラサー、天音真澄(あまねますみ)。彼女無し(年齢)低賃金で未来もクソも無い最底辺の人生に嫌気がさしながらもダラダラと生きているそんな彼。
ある日、真澄は愛用の煙草が切れた事に気付く。
嫌々ながらも近くのコンビニま
で外出する羽目になり外に出れば満点の星空を目にし、舌打ちをする。
煙草を購入して帰路に着くその直後、空を見上げれば流れ星が点々と空から下に落ちていたのを見てある事が思い浮かんだ。
昔からの「言い伝え」、「おまじない」。
それがふと頭に過った彼はそんな物があるわけがない、と諦めを感じながらも現状の変化に対し願わずにはいられなかった。
「どうか、こんなくそったれな人生にも生きる喜びをくれよ」
その言葉を皮切りに一つの流れ星が自分に向かって急接近してくる。
目の前までその星が落ちてくると小さい子供が真澄の前に現れこう言い放った。
「初めまして、きみの願いを聞いて参上したオーカスだよ。今宵、きみは星々の戦いに勝ち抜くための戦士に選ばれました。どうか僕と一緒に一番星を目指して戦って欲しい」
星とは何か。願いとは何か。現れたこの子供は一体何者なのか。
突然、自分の身に降りかかった変化に頭が追いつかなくなった真澄の今後は一体どうなるのか。
未だかつて味わった事のない戦いに慄きながらもこれから出会う戦士たちから己が目を背けていた痛みや苦しみを感じて何を思うか。
"選星バトルロワイヤル"、ここに開幕致します。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-30 00:00:00
6795文字
会話率:47%
釣り針引っかかった鈴と一緒に彼女は現れた。
この半年にわたって夜釣り中で語られた物語。
行き場をなくした切ない思いと、先の見えたあきらめ感が交差していく。
そんな物語です。
最終更新:2025-05-26 00:19:15
12683文字
会話率:24%
姉がプレイしていた乙女ゲーム。その筆頭攻略対象キャラクターである、ローゼサス王国第一王子に転生していたアランサス。
だが、どうにも事情が違う。
悪役令嬢の立ち位置にある幼馴染の婚約者は、政治的事情から女として育てられた、自我は立派に男の俺
様女装男子。
このまま彼と結婚、傀儡仮面夫婦ごっこは願い下げだと、ゲームの『ヒロイン』である聖女との恋愛を目指すも、『ヒロイン』もまた、諸事情から女と偽っていた筋骨隆々女装男子だった。
前門の女装男子、後門の女装男子。
絶望するアランサスの前に、今度は謎の魔物が現れて、大暴れ。
「話が違う」と、己が運命と役に立たない前世情報に悲嘆しているうちに、アランサスは世界の命運のかかった戦いに巻き込まれる。
こんな間違いだらけの転生設定でも、愛と友情でハッピーエンドを模索したい。
これはそんな王子様の物語。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-22 09:10:00
168236文字
会話率:41%
推が良いか、敲が良いか──。
小説を書いている人にならば通ずるものがありそうですが、そんなに悩まなくても良いじゃないか、とも思います。
賈島という人は「苦吟」と称されるほどに、詩文を作るのに時間がかかった、と聞きましたが、もしかし
たらこんなことを本当に考えていたのかもしれません。
こんな経験は、文章を作る人間には誰にでもあるわけではないと思うのです。
だから意図的にやってみた、その足跡がこの小説であります。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-21 16:20:09
15540文字
会話率:6%
――世界が変わったのは、朝、目覚めたときだった。
「右のタマが……ない?」ただひとりの“陰キャ高校生”に降りかかった、理不尽な物語。
ある日、スマホに届いた謎の通知。
《デイリーミッション:腕立て30回、腹筋50回、ランニング2キロ》
無視
したその夜、彼は――“何か”を失った。「次の指令は……不良に絡まれる女子を助けろ」喧嘩なんてしたことがない。人助けなんてしたこともない。でも逃げたら、“また何かが奪われる”。名もなき脇役が、世界に抗い、そして“主人公”になる物語。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-18 18:07:54
8195文字
会話率:18%
ジェニー・ケインズ男爵令嬢はまだ貴族学校就学前の一四歳にも拘わらず、婚約者を探していた。ケインズ男爵家は決して裕福な家ではなく、またジェニーも真面目だったから、将来を早めに定めておきたいと考えていたのだ。そんな時、ラニガン商会傘下の店の店頭
で、貴族の令嬢限定で婚約者募集中の張り紙を見つけた。ジェニーは商家もいいかと思い、応募してみた。そこで婚約者のテストと称した、密売品の運び屋のバイトをさせられるのだった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-18 07:41:05
6858文字
会話率:49%
「コーデリア・イーストレイク侯爵令嬢。君に問いたいことがある」
ピンク髪の愛らしい男爵令嬢ドナの教科書が破られ、私物が紛失した件で、コーデリアの仕業ではないかという嫌疑がかかった。どうやらレイモンドはコーデリアを婚約破棄することまで考えてい
るらしい。魔力の強いコーデリアは『威圧』という、他人を服従させる力を使えた。男爵令嬢ドナを『威圧』し、真実を吐かせることを選択する。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-04-08 07:45:39
4336文字
会話率:52%
九条滝の高校生活は、幼馴染みであり社長令嬢でもある無口な女子高生・桧山佳音のボディーガードを(嫌々ながらも)する日々。ある日、佳音が風邪で学校を休み、滅多にない放課後の自由な時間が滝に訪れた。どこか靄のかかったような感情を抱きつつも、滝は
親友・白屋吹雪と買い物に出掛ける。その帰り、2人は痴漢に遭っていた同級生・矢倉ほのかを助ける。それ以降、滝に好意を抱いたほのかは彼との仲を深めていく。滝も純粋なほのかに惹かれていた。一方、突然「1人暮らしをする」と言いだした佳音は、理由を聞かれても答えず滝と口論になる。「嫌だったらやめればいい」という言葉を受け、ついに滝は佳音から離れていく。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-17 18:10:40
193732文字
会話率:42%
「妖」。人の世に住む異端の存在。人と妖が生きるこの世で起こる不可解な出来事には決まって妖が関係していると言われている。しかし、一般人には妖は見ることができず、その存在に気が付くこともできない。
その妖を祓い、人の世に調和をもたらす存在が
「陰陽師」である。
「倉宮晴人」は普通の高校生だった、ある日までは。
その日、晴人は子供の頃の夢を見た。京都にある父の実家に遊びに行った日の夜のこと。桜の木の上に座る人影を見た晴人は何となく話しかけに行って・・・。
そんなある日の出来事を夢に見たのが前兆だったのかこの日は普段感じない嫌な感覚を朝から感じていた。何とか高校へ行く準備は整え、家を出たが、気配は増す一方でどうにか振り切ろうとするが、遂には周囲を囲まれてしまう。
気配の正体は大量の妖で彼らは何故か晴人を狙っていた。妖達が一斉に襲いかかった直後、晴人を守るように無数の斬撃と炎が妖を薙ぎ祓った。たじろぐ晴人を守るようにして五人の「式神」が姿を現し、晴人を抱えてその場を後にした。
倉宮家の別邸に一時避難した晴人は式神「朱雀」から父「晴信」からの手紙を受け取った。中には倉宮家がどういった家なのか、晴人が狙われる理由、五人の式神についてが書かれていた。手紙を読んだ晴人は自身の身を守るため、陰陽師について考えるため、そして何より自分を主と呼ぶ式神達について知るために陰陽道を学ぶ塾「青霊堂」に入学することを決めた。
陰陽の道を学んでいく内に自身の血と妖に狙われる訳について知った晴人は式神達と共にどうやって迫りくる脅威を退け、自らの運命と向き合うのか。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-16 21:32:39
232773文字
会話率:30%
「可愛いぬいぐるみを作れ」
大国ロックミア共和国の首都、オックストンに店を構える高級服飾工房ハーディプール。
そこで働く若手服職人のネイトの元に、ある日突然思いがけない仕事が舞い込んだ。
事の発端は冗談のような話だった。
ロックミ
ア共和国は隣国ヘザーリン帝国と長きに渡って衝突してきた歴史を持つ。
両国の外交関係が悪化の一途を辿っていく中、ヘザーリン帝国は嫌がらせの一環として、国産の高級ぬいぐるみ「ベアトリス」を輸出禁止にした。
そして、この嫌がらせが思いもよらぬ波紋を起こす。
ロックミア共和国の権力者たちが、ベアトリスを欲しがる家族から非難され始めたのだ。
権力者たちからの輸入再開の訴えに耐えきれなくなった共和国の大臣は、ハーディプールに国産の高級ぬいぐるみを開発するよう命令を下し、その任務がネイトの元へと転がり込んで来る。
与えられた仕事は誰もが嫌がるものだった。
政府が絡む注文など、失敗した時のリスクを考えれば絶対に受けたくない。
そもそも彼らは服職人であって、ぬいぐるみ作りは完全な素人。
ネイトは礼儀知らずでたびたび客を怒らせ、短気で喧嘩っ早く他の職人と折り合いが悪い。
相方のラッセルは経験豊富な服職人だがハーディプールに来たばかりで、しかもネイトと同じく周囲に馴染めていない。
そんな爪弾き者2人が外れくじを引かされた。
ネイトとラッセルは当初、適当に仕事をこなしてさっさと解放されようと企てる。
しかし、事態は更に悪化する。
ロックミア共和国のモーリス元帥とヘザーリン帝国のドルフ元帥が、ぬいぐるみをきっかけに衝突。
激昂したモーリス元帥はネイトらに向かって、「このぬいぐるみ作りは共和国と軍の威信を賭けた争いだ」と叫んだ。
そして、「失敗は許さない。首を刎ねられたくなければ、最高のぬいぐるみを作れ!」と命令を下した。
ただのぬいぐるみ作りが、気がつけば命のかかった仕事に変わっていた。
ネイトとラッセルは慌てて本腰を入れだすが、彼らの前に多くの壁が立ちはだかる。
「俺にはもう、可愛いってのが何なのか分からねえ!」
こうして、2人の職人が悩み、苦しみ、ぬいぐるみに振り回される日々が始まった。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-15 19:28:53
95019文字
会話率:20%