良い大学を出て、上場企業に就職し、綺麗な妻と結婚し、子ども二人に恵まれた。
誰もが羨む「人生の正解」を、俺はひとつずつ手に入れてきた。
順調だった。いや、完璧だったと言ってもいい。
ある日、妻がぽつりと呟いた。
「子どもたちに、ちゃ
んとした環境を用意してあげたいの」
その言葉に背中を押され、俺はタワーマンションの購入を決意した。
都心の再開発エリアにそびえ立つ、新築の制震タワー。
駅直結、徒歩0分。コンシェルジュ常駐、スカイラウンジ、ジム、パーティールーム完備。
そして何よりも、リビングから見下ろす景色は絶景だった。
価格は1億円――年収の10倍。だが、銀行は購入資金をポンと貸してくれた。
「年収1000万円の上場企業勤務」の肩書きがあれば、住宅ローンもクレジットカードも、すべてのドアが開かれる。
管理費は月3万円、修繕積立金は当初こそ1万5千円程度だったが、入居から数年で倍額に。
家計をじわじわと締めつけていく。
それでも、「まあ大丈夫だろう」と思っていた。
妻は専業主婦。子育てに専念してくれているし、俺が稼げばいい。
業績も好調で、ボーナスも毎年しっかり支給されていた。
……そう、「あの日までは」。
振り返れば、どの選択にも“理由”はあった。
無謀だったとは思っていない。むしろ、あの時点での判断としては“正しい”とさえ思っていた。
だが今、手元に残っているのは、
限界まで膨らんだ借金と、赤い封筒の督促状だけだ。
なぜ、あれほど堅実だったはずの自分が、ここまで転落してしまったのか。
なぜ、「正解」ばかりを選び続けた人生が、こんな結末になったのか。
この物語は
年収1000万円だった俺が、夢のタワーマンションを買い、
やがて自己破産するまでの記録である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-30 20:17:42
16214文字
会話率:13%
彼はホークと呼ばれる米国歳入庁(IRS)の特別捜査官。イギリス人だが、14歳で家出した彼の過去は機密扱いになっている。今回の任務はロンドンの証券会社に潜入し、ロシアの富豪が北米の犯罪収益を資金洗浄(マネーロンダリング)している証拠を掴むこと
。そして前任者の死の真相を突きとめること。ホークは株式営業担当として入社するが、膨大な業務に忙殺され、捜査は難航する。それでも前任者の謎の行動を辿り、社内にいる犯罪組織の協力者を探り、証人の美女を保護しようとする。やがて真相に近づくホークに何者かの魔手が迫る。更に機密のはずの家族を巻き込む事件が起こり、ホークは捨て身の救出に向かう。犯罪組織の手先を追い詰め対決の末、任務完了。帰国を前にしたホークに会いに来たのは……。
主な登場人物
ホーク……米国歳入庁(IRS)特別捜査官である主人公の暗号名。今回潜入中の名前はアラン・キャンベル。恋人の前ではデイヴィッド・コリンズ。
トニー・リナルディ……米国歳入庁の主任特別捜査官。ホークの上司。
メイリード・コリンズ……ワシントンでホークが同棲する恋人。
カルロ・バルディーニ……米国歳入庁捜査局ロンドン支部のリーダー。ホークのロンドンでの上司。
アダム・グリーンバーグ……LB証券でのホークの同僚。欧州株式営業部。
イーサン、ライアン、ルパート、ジョルジオ……同。
パメラ……同。営業アシスタント。
レイチェル・ハリー……同。審査部次長。
エディ・ミケルソン……同。株式部COO。
ハル・タキガワ……同。人事部スタッフ。東京支店のリストラでロンドンに転勤中。
ジェイミー・トールマン……LB証券でのホークの上司。株式営業本部長。
トマシュ・レコフ……ロマネスク海運の社長。ホークの客。
アンドレ・ブルラク……ロマネスク海運の財務担当者。
マリー・ラクロワ……トマシュ・レコフの愛人。ホークの客。
マーク・スチュアート……資産運用会社『セブンオークス』の社長。ホークの叔父。
グレン・スチュアート……マークの息子。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-11-14 15:00:00
318807文字
会話率:36%