変わる世界、忘れてしまった古い思い出、きれいなものたち――
――たぶん、わたしたちは昔ほどきれいじゃない。
子供の頃にあった、純粋さとか、希望とか、単純さ、そんなものはいつのまにかなくしてしまったり、元の形を変えてしまったりしている
。それでも、わたしたちは日常を通過させていく必要がある。惰性的に、よんどころなく、いくぶんかは愉快に。だって、それが世界というものだから。
ある日の教室で、わたしはふと彼女に目をとめた。特別な形をした星座を目にするみたいに。彼女は一人でじっと、本を読んでいる。その姿は不器用で、危なっかしくて、頑なで――何より、傷つきやすそうに見えた。
先生から頼まれたこともあって、わたしは彼女と接触する。何しろ、ずっと昔は友達だったのだ。その時のことは、もうほとんど思い出せなくなっていたとはいえ。
でも、彼女との会話はうまくいかない。彼女が何を抱えているのか、わたしにはわからない。その瞳には、とても大切な時間と、大切な場所のことが映っているような気がしたのだけど。
そして、ある雪の日のこと――
わたしは思い出す、彼女の瞳に映っているもののことを。
(17/8/23~17/8/30)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-12-30 00:00:00
23708文字
会話率:32%
日本国憲法には生存権と同じように、日本国民であれば等しく「自尊権」が保証されている。これは、自らの生命の自由であり、不可侵のものである。
「自尊権」の実現のために、全国各地に「国営安楽死センター」と呼ばれる施設が用意されている。
津々浦々に
設置された国営安楽死センターの入り口を潜るものは少なくなく、そこで働く職員は大小さまざまの悩みと向き合いながら業務をこなしていた。
これは、国営安楽死センターの職員として働く者の日常をまとめたものである。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-07-03 00:29:48
4893文字
会話率:16%
遥か未来の世界
超科学と意思を持った大自然、全く異なる二つの力が制する二つの世界が誕生した。
発展を遂げすぎたテクノロジーによりコンピューターが世界を制し、人類を管理している世界。そして、自然が意思を持ち、人々に万物の力を与え
、人々と大自然が共存する世界。自然と科学、世界は全く異なる二つの力による対立が起こり、戦いが繰り広げられていた。コンピューターによる完全なる統一制度化が進み、管理社会となった国、メトロシティ。超人工知能イーヴァを中枢とする革命軍によって統治され、食事睡眠労働全ての生活の最適化により人類は完全なる管理下の元、最も理想的とされる社会体制を与えられる。
そして、意思を持った大自然と人類が手を取り合い、共存する大地、ノアフロント。大地の全生命の自由を主張し、大自然の王とされる大樹ユグドラシルの恩恵のもと結成された反乱軍によって守護される。
メトロシティとノアフロント。全く異なる二つの力が今、激突する。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2013-11-16 05:50:10
11704文字
会話率:42%