山間に抱かれた街、雅都。
その美しい街並みは、竹林の緑に包まれ、風が笹の葉を揺らすたびに静けさの調べが響き渡る。
町屋の格子窓から漏れる灯火の柔らかな輝き、苔むした石畳を濡らす朝露――ここは、古き時代の美と静寂を保ち続ける街。
しかし、そ
の雅なる街の奥深く朱塗りの鳥居をくぐった先にある神社で異変が起きる。
神社の奥に祀られ、街全体を魔力で守護してきた「魔水晶」が、ある夜忽然と姿を消したのだ。
多重の結界に護られ、外部からの侵入は不可能――それが誰にも信じられぬ「神隠し」のごとき消失だった。
旅人の一条零。
彼は静寂の中に潜む違和感を見逃さなかった。
古い伝承が語る狐火の囁き、焦げた台座に残る微かな痕跡、竹林を渡る風が運ぶ奇妙な匂い……
これら全てが、この事件の背後に潜む「人ならざる意図」を感じさせる。
美しき雅都に隠された影――魔水晶の消失に潜む真実は、果たして伝承が語る「神の怒り」か、それとも人の欲望によるものか。
笛の音のように細く響く謎の糸を追い、静かにその真実を紡ぎ出す。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-12-17 17:10:00
19838文字
会話率:19%
とある大学生の非日常、夏休みに同じサークルの友に呼び出された主人公は、怖いものが視える人物であったため、手伝いに赴いた古民家で視えない恐怖に遭遇するのであった。彼は、一体何をみたのだろうか…
短編ホラー小説。第1弾
最終更新:2022-02-04 20:48:18
2868文字
会話率:8%
そうした気配が薄々這い回っていたが、勘三郎おとっつぁんのいまはとお久が産気づいたのは同じ刻限になった。長火鉢を真ん中にお店と奥を右往左往するうち、こきりこの鳴る音がますます渦を巻いてくる。それがその時のことなのか想い起す度に巻いてきた
渦なのか、こうまで年月が経ってしまった今となっては、埒もない。
錦の金羽織を背負ってこきりこかしゃかしゃ廻っていた手のひらサイズの勘三郎おとっつぁんは、いったんは体内に戻りいつもの悋気臭い顔で小言を繰り出したが、「こんなもん繰り返す阿呆もおらんやろう」と、いつもどおりのそっぽを向けた。
襖越しの向こうから赤ん坊がこの世に顔を出した最初の声がした。生まれた。助かった。両腕を二度まで上げて万歳をした。
「あの子は、わてや」
小さな勘三郎おとっつぁんではない。生ける骸に見えても、まだ本マモンの生の声だった。灰なんぞかき回してる場合やないと、親族みんな、その声の一音一音聞き漏らすまいと、耳をそばだて、筆をとった。
「わてが無うなったら、久の子がわてや。わてぇは、あの子に生まれ変わって、加賀屋を、お店を、この屋を守っていく・・・・せやからぁおのれ等みんなぁ安心したらえぇ・・・・・弔いは、あの子を棺の真ん中に座らして、来たもん皆んなに「この度のお生まれ変わり、おめでとさんで」って云わせるように触れ回れ。金屏風ならべて、こきりこ鳴らして、朱塗りの膳に金と銀の鯛を盛り付けて、大盃にひょうたん酒そそいで、廻してくれぃ・・・・・ちよも、せいも、とせも、まあも、あやも、くみも、なつも・・・・」と、女の名前ばかりなぞって、勘三郎おとっつぁんは死んだ。が、小さな勘三郎おとっつぁんはこきりこを鳴らしながら未だ女の名前を呼び続けている。
かよ さよ うめ かをる あやの まちる きさらぎ ふじつぼ あねわか よなくに さんかろう ことしず
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-05-29 07:09:55
144515文字
会話率:24%
私たちは最初、一対の箸でした。役目を終え燃やされながら、また一緒になろうと誓いました。それから私たちは何度も何度も巡り合います。ある時は靴、ある時は磁石、ある時は点Pとして。でも、すれ違いばかりなのです。果たして二人は一つになれるのか!?
最終更新:2020-08-04 16:38:16
2780文字
会話率:7%
長い階段を上り、朱塗りの門をくぐり抜け、そこに居るは…唐紅の水干に墨色の袴をきた狐面の人。
狐面に願えば…命を助けられると…ただし…願いには対価が必要である。
「その覚悟…アリヤナシヤ?」
最終更新:2016-06-09 17:35:24
1981文字
会話率:36%