天保七年春、歴史的な大凶作は三年続いていた。大坂城代土井利位は、米商人高津屋に依頼し江戸への廻米を秘かに画策し成功した。ところが秋になり、幕府は更なる糧米確保を目論み、江戸への廻米の幕命を発令した。米不足の中での強権発動で、京・大阪の不満は
高まった。
城代の近習、牧野小次郎は、町人に扮し、治安目的で大塩平八郎の私塾『洗心洞』の内偵を進めた。しかし、役人の私利私欲や豪商との癒着に嫌気がさし、次第に洗心洞一派の義憤に共感するようになった。また、同じ裏長屋に住む通い女中おせんに惹かれ、将来、所帯を持って小商いを一緒に営もうという夢を持っていた。
高津屋の一人娘おしのには、商家の息子で伝八という許嫁がいたが、伝八は突然婚約解消を申し出た。正義感の強い伝八は『洗心洞』で住込みの塾生になったので、決起した時、おしのに累が及ばないように、予め離縁を決意したのだった。しかし、おしのは一途で、伝八の決起と共に、自決する心積もりだった。
洗心洞は、知行同一を教えの根幹に据えていた。塾頭の平八郎は、東町奉行跡部良弼に政治改革の上書を提出した。しかし、分限も弁えず無礼者と、無視され叱責を受けただけだった。ついに、廻米令を機に天誅を下さんと決意する。かつて同僚だった与力、栗林隼人は平八郎に遺恨があり、塾生に返り忠(裏切り)をそそのかした。
翌、天保八年二月、小次郎は決起直前に檄文を入手、義と忠の板挟みに悩んだが城代に通報。一部塾生の返り忠も生じた。
洗心洞一党は、役人と豪商に天誅を下さんと決起し、大坂各所に火を放った。事件の当日、伝八は銃火を浴びて死亡、さらし首となった。自決を覚悟していたおしのだが、お腹の子のため、小次郎の説得で思い止まった。小次郎も騒乱の中、死亡。事件後、おせんは、小次郎との夢であったうどん屋の女将になった。大坂の町の炎上と共に武家社会の終焉を迎えた。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-05-14 21:55:18
161787文字
会話率:65%
武州忍藩(埼玉県行田市)の幕末をとりあげる長編小説。
第1篇は、忍藩の江戸湾(東京湾)警固。
突然の任命からペリー来航までの藩士達の奮闘を描く。
以下のブログでも(先行)連載中。
http://ameblo.jp/not6caras/the
meentrylist-1-10066165900.html
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和田孫兵衛:忍藩士。寄合。大塩平八郎の乱平定に活躍した・坂本鉉之助の娘婿。乱後は隠遁生活で学識を深めていた。
木戸兎毛:木戸家の次男坊。江戸での剣術修行後、活躍の場もなく悶々と過ごしていた。市井の生活に染まっており北武蔵の方言を話す。
木戸環:忍藩士。物頭。兎毛の兄。酒に酔わない限り冷静沈着。
後藤五八:忍藩士。寄合。人柄がよく周囲から信頼されている。孫兵衛にとって叔父のような存在。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-05-24 22:43:40
23207文字
会話率:27%
人気作家の志賀谷は都知事になりたいと名探偵藤崎誠に依頼した。
混迷が続く都知事選。
藤崎は彼の依頼を果たせたのだろうか。
最終更新:2016-07-28 04:00:00
1719文字
会話率:28%