立ち入り禁止の屋上に踏み入るとある少年を追って、中学二年生の梓(あずさ)は屋上の扉を開いた。その先、青い空に手を伸ばして静かに涙を流す男子生徒の姿を見て、梓は息をのんだ。
彼は、まるで空に溶けてしまうように見えた。
はかなげな、細い少
年。白い腕を目いっぱいに伸ばして何かをつかもうとする彼を見て、梓は気づけば涙を流していた。その理由は、分からなくて。
彼の姿に、ただ、不思議な懐かしさを抱いていた。
屋上にいた同じクラスの轟(とどろき)陽人(はると)は、不登校で長らく学校に通っていなかった。そんな轟と梓の間には、クラスメイトであるということ以外には、何の接点もなかった。
屋上で二人が会った日を最初に、轟はまるで不登校のことなど忘れたように学校生活を送っていた。
気づけば梓は、轟を目で追うようになっていた。
不思議な雰囲気をまとう轟の姿を、教室で探していた。グラウンドを走る轟を見つめた。
それと同時に、梓の周りでは次々とおかしなことが起こり始める。
校舎の四階の窓の外の狭い道を悠然と歩く猫の姿を見たり、梓が所属する文芸部にて部誌の切り裂き事件が起きたり。
苦しい立場に立たされる梓の前に、姫を救う騎士のように、轟が颯爽と現れた。
轟に関わる度に、様々な感情が梓の中に生まれた。
そんな梓と轟には、だれにも言えない秘密があった。
そして、空色が二人を繋ぐ時、忘れていた記憶が戻ってくる。
猫と人が紡いだ幸福な日々は、未来への道を作り出す。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-09-01 17:52:25
32148文字
会話率:21%
未華子は、二十歳。専門学校に通っている。学校が終わるとアルバイト先である個人経営の店【和食処 悠の里】へ直行する。その店の親方は、最寄り駅の商店街で和食店を古くから営んでいた。
ある日、親方は、辞めていった板前の補充をするつもりで、駅の
掲示板に求人広告を出した。それを見てやって来たのが善幸だった。
彼は二十三歳。高校を卒業し、職に就くも興味が持てなかった仕事は潔く辞めてしまう。一言でいえば、忍耐力に欠ける青年だった。
ところが、この店で見習いとしてひと月が過ぎた頃から、魚の捌き方に興味を抱くようになる。包丁など手にしたことがない彼が〝俺は料理人になる!〟と決断したのはこの頃だった。
ある日、事件が起きた。それは、善幸にとって〝なんでもない普通の女の子〟から、異性を意識させるステージへ格上げしなければならないほどの突発的な出来事だった。
未華子は、奥まった小上がりで、衝立て二枚を引き寄せ接客用の着物に着替えていた。突然、パーンッ、パーンッと、二度ほどケツを杓文字で引っ叩くような音を立てる。衝立てが倒れたのだ。露わな下着姿を善幸だけに見られてしまった未華子……。
ある日、未華子は善幸をデートに誘った。東京駅で遅い昼食を済ませ、夜景のきれいな【港の見える丘公園】へと向かった。その途中、山下公園に立ち寄る。山下公園を散策しながら、彼女は自分が大動脈弁膜症で、いずれ大手術を受けなければならない身体であることを打ち明ける。
その後、向かった【港の見える丘公園】では、複雑な家族関係であることをも話してしまった。今となっては、すべてを一気に話してしまったことを後悔した。ある日、親方が病で倒れ止む無く閉店した後、善幸からの連絡は途絶えてしまったからだ。
最初で最後のあのデートから一年が過ぎていた。
山下公園の桟橋に艫と舳を身動きできないように錨泊されている氷川丸。その姿を、未華子はひとりベンチから見据えている……。
善幸は親方から紹介された店で見習いとして再び働きはじめていた。その店で、精神力と忍耐力を身に付けようとしているのだろうか。ともあれ一端の料理人になるために頑張っているに違いない。
でも……もう迎えに来てくれてもいいのでは? と未華子は“ある覚悟”を持って待っていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-08-28 09:18:53
168449文字
会話率:38%
「うわっ…やだ。誰かの悪戯いたずら?」
畦道の隅っこで首のない生物が転がっていた。トラクターに轢ひかれたのか、柄の悪い子供の悪戯か…血だまりから察するに多少生きて、殺されたのだろう。
惨い仕打ちを前に妹も息をのみ後ずさっている。
猫や
狸が死んでいるのも見かけるもののこれまで残虐な死体はあまり目にかからない。夜の暗がりの中ぼんやりと浮かび上がる毛並みが生々しさを増さしていた。
「…埋めてあげる?」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
日本列島のどこかにある──とある山間部の、窪地にある狗守村いぬかみむら。そこは昔から山に住み、里に降りてくる山犬──オオカミの伝承が多く残る地であった。彼らは神秘性を纏い、人間に敬われ神と同一視されていた。
人口は多くは無いが、人々は農業を生業とし、周囲の村には数少ない学業施設などもある。
そんな平和な村で、ある事件が起きた──
私の名前は猿橋 南風見(なふみ)。変哲もない、庶民的な女子のつもりだった。ベタだけれども、あの時までは。普通だった──────────
夏休みが始まり、主人公の猿橋 南風見は廃駅のホームで真夜中の異界に迷い込む。
異界から帰る事ができるのか。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
現在休載中したり、しなかったり。
見切り発車なんで完成はとても挑めません。が、一段落したら完結させたいです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-08-28 02:10:51
51036文字
会話率:33%
ザガイン王国第三皇女のアシュリーは、隣国のユースティア王国王位継承順位第一位のマルクス皇太子と婚約を結んでいた。
決して本意ではなかった婚約を受け入れていたアシュリーに、平穏な暮らしを一変させる事件が起きた。
「やっぱり、お前はいらないわ
」
マルクスの陰謀にまんまと嵌められていた事を知ったアシュリーは、自らに残された七日間で憎き元婚約者に復讐を誓った。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-08-13 21:26:07
12498文字
会話率:49%
宇宙を進む一隻の船。品物を輸送するだけの簡単な仕事の筈だった。だが帰りの途中でとある事件が起きた。
最終更新:2023-07-16 14:14:03
1064文字
会話率:2%
俺は決めつけが嫌いだ。
きっかけは小学生の時、クラスで給食費が盗まれるという事件が起きたことだ。
そこで一番に疑われたのが、貧しくて容姿も醜かった俺だったという訳さ。
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最終更新:2023-06-22 20:00:58
440文字
会話率:0%
深見那奈という美少女の手紙が下駄箱に入っていた。
告白だと思っていたのに、呼び出された学校の屋上に行ってみると、
「私と一緒に死んでください」と言われた。
告白ではなく、彼女は俺と一緒に死にたいだけだったようだ。
彼女は美少女で人気
もあって、何もない俺とは違うのに死にたいと言う。
断ったが、彼女はしつこく私と自殺しようと言って付きまとってくる。
そんな彼女にうんざりしているとき、学校で衝撃的な事件が起きた。
同じクラスの沢野が自殺したのだ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-05-28 20:45:34
9969文字
会話率:47%
約30年ほど前から産まれた新生児に能力が付いて産まれる事件が起きた。
各国では産まれた子供の能力について研究を進めていき、今では能力に合わせた職業に就くことが可能になり、能力者を育成する学校なども作られたがそれは世界の話であり
ここ日本では
能力者に対しては腫れ物扱い、そして能力者側からは能力者史上主義者や能力と非能力者での差別が問題になっていた。
物語の主人公である福山影司は超稀に産まれる、デュアルスキル所持者である
1つ目の能力は『ハイド&シーク』隠す能力
そして2つ目の能力は『変身』願った物やなりたい物に変身できる能力だ
日常生活と裏の生活を始める影司の明日はどっちだ
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-05-17 16:28:11
108534文字
会話率:70%
1990年。山荘で殺人事件が起きた。
その殺人事件の証人の証言を聞いてみよう!
最終更新:2023-05-05 12:00:00
1156文字
会話率:46%
吸血鬼の四郎を目覚めさせてから俺達は様々な冒険をして仲間も増えてワイバーンと名乗る事になり、密かに人間社会を守る戦いを続けた。
俺達の存在と他chの悪い悪鬼達との事は世間にばれてはいけないのだが、それをぶち壊すような新たな事件が起きた。
最終更新:2023-04-28 10:08:19
166542文字
会話率:25%
時は現代、様々な超常の事件が起きた際、裏から国を守る者達がいた。術と聖霊を使役し国を守る人々がいた。人それを『聖霊使い』と呼ぶ。その宗家の嫡男だった炎央院 黎牙は宗家嫡子であるのに聖霊術を使えず実家から追放・勘当を言い渡されてしまう。多くの
人間に絶縁され、傷ついたまま故郷を追い出される形で世界を放浪する。そして旅の果て、力尽きる寸前の彼の前に現れたのは?
「ずっと、あなたをお待ちしていました。継承者様」
これは一人の少年がボロボロになりながら自分の本当に大事なものを見つけ、成長して行く物語。
※ カクヨム様で先行連載中です折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-04-24 03:00:00
851781文字
会話率:64%
とある国の有名な観光スポット、「雪国」。ここで20XX年に事件が起きた!主人公の僕と探偵友達の桜田君で事件を解決していく推理小説!
最終更新:2023-04-20 08:02:16
4991文字
会話率:71%
学園祭当日。生徒会の書記である駒沢博人の通うメイトウ学園ではちょっと事件が起きた。
開会式で挨拶をした後、生徒会長兼学園祭実行委員長の駒沢恵が行方不明になったのだ。
いつも自由な恵が、唐突に行方不明になっても、生徒会一同に驚きはない。
だが
、実行委員長が不在となると、学園祭が中止にされかねない。
探し出すタイムリミットは、昼まで。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-03-24 14:27:35
11997文字
会話率:57%
時代劇マンガ『火附盗賊改方 神室十蔵(かむろじゅうぞう)』の主人公・神室は、自分が漫画の主人公であり、間もなく連載が終了することを知る。
それは編集部の手違いで起きた。
時代劇『神室十蔵』と、少女マンガ『恋はミルキーようかん』の紙原稿が混ざ
ってしまった際、二つの世界が一部で繋がったのだ。神室は少しの間だけ『ミルキー』のヒロイン、アマネとようかんを食べて交流した。
別の世界というものがあるのだな――。
幼少から武芸一本、悪を憎んで市中の平和を守ってきた十蔵は、覗き見た華々しい世界とアマネの虜になってしまう。
何とかまた、あの世界に行けないものかと考えていると、再び編集部で原稿が混ざる事件が起きた。
それは『神室』最終話、クライマックスでの出来事。
打ち倒すはずだった弐鉄という大悪党が姿を消したのだ。
弐鉄は別の漫画へ逃げたに違いない――。
期せずして神室も別の漫画へと旅立つ、弐鉄を引っ立てるため、そしてアマネとあまず~っぱい恋をするため!!
――劇画主人公が場違いに漫画を渡り歩いて少女漫画のアノ子を目指す!?
悪を斬り捨て、恋にのほほん、おかっぴき物語!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-03-06 10:00:00
16019文字
会話率:82%
焼死体が発見されました。
私の故郷であるアルカベシティで殺人事件が起きた。嫌な予感がした私は事件現場へ向かうが...
最終更新:2023-03-01 01:12:52
888文字
会話率:25%
王国の端、王国唯一の港のある男爵領にて殺人事件が起きた。犯人は既に逮捕済み。裁判も終了し有罪。あとは刑罰のみとなったところで、男爵の下へ助命嘆願書が届いた。
かくして、男爵は罪人に架す刑罰を如何にするか頭を抱えることになったのだ。
最終更新:2023-03-01 00:00:00
6993文字
会話率:29%
【高校は閉校。移動中に転移して引きこもりの世界に呼び出された件について。】
とある私立学校の修学旅行中に大規模失踪事件が起きて数ヶ月後。各所からの責任追及の果てに学校が閉鎖にまで追い込まれてしまった。
在学中の生徒達は地元の学校へと
転校を余儀なくされ寮暮らしを行っていた三つ子姉妹や孫達も地元のド田舎へと、帰ってくる事になった。
そして、あと数時間後には母さんが地元駅まで迎えに行く段になって、ある事件が起きた。
なんと高速バスが走行中に光って消え、数秒後に横転して路肩に止まっていたというのだ。
中に居るはずの乗客乗員は何故か居らず、煙を吹き出すバスだけが路肩に残ったという。
そのバスに乗っているはずの乗客達は、
「あの子達が貴方の世界に居るじゃない?」
「は?」
何と娘達だったのだ。私が焼き芋を焼いている間に何が起きたというのか?
こればかりは当人達に聞いてみない事には分からない話だった。
◇ ◇ ◇
これは世界に隠れて過ごしていた神の物語。
カクヨムにて同時連載。
https://kakuyomu.jp/works/16817330652579218578折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-02-21 00:00:00
96088文字
会話率:47%
ルゼ王国の文官カイゼルは頭を抱えていた。昨夜の王太子殿下の誕生パーティーで、事件が起きたのだ。陛下が外交中で不在の今、どうか穏便にイベントは済ませておきたい。そう思っていた最中、王太子殿下が、伯爵令嬢のフィアンセ『マリー』に対して”婚約破棄
”を告げたのだ。こんな事があっては後処理が大変なのに……。頭を痛めた中でも仕事はこなさなければならない。今日は国立貴族学園初等部三回生の学期末試験となる論文の採点がある。ボランティアのようだがこれも大事な仕事だ。気が抜けない。その中である生徒の論文に目をつけた。そこには無視できない内容が書かれていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-01-29 18:47:55
3711文字
会話率:8%
ある日、一つの事件が起きた。
最終更新:2023-01-28 15:01:22
4988文字
会話率:9%
「今あなたが住んでいる部屋で、かつて凄惨な事件が起きた」と彼女は言う。
(「カクヨム」でも掲載しています)
最終更新:2023-01-03 10:45:59
3195文字
会話率:26%