2025年の夏。沿岸南西域と呼ばれる街に、一つの不穏な予兆が忍び寄っていた。
それは「新型出血熱の疑い」とされる、ごく短い行政放送から始まった。
報道は沈黙し、専門家は口をつぐみ、街にはいつの間にか赤い標識と封鎖線が並び始めた。
人々は最初
、これを単なる風評や予防措置だと信じようとした。
しかし、やがて訪れる「十三日目」を迎える頃、街は確かに何かを失いはじめていた。
この封鎖の背後には、五年前に忽然と姿を消した一人の男、疫学研究員・凍鷺夢生(いてさぎ・むう)が残した映像記録があった。
彼は2020年の秋、まだ誰も黒血熱の名を知らない時代に、次の言葉を残していた。
――「黒い八月が来る。
十三日目に兆しが現れる。
この街は数字の中で終わる。」
当初は荒唐無稽な陰謀論として一笑に付されたこの予言は、やがて現実に重なってゆく。
感染は数字に置き換えられ、記録は管理され、公式発表は次々と修正されていく。
「収束」という言葉が繰り返される一方、街には防護服を着た監視員が増え、隔離区域が膨らみ続ける。
そのどこにも、終わりは見えなかった。
記録を追うのは、一人の記者、夜澄エレナ。
行政放送と統計の背後に潜む「計画の設計図」を暴くため、彼女は失踪した凍鷺夢生の足跡を追い始める。
次第に明らかになるのは、この感染が単なる疫病ではなく、支配のために仕組まれた「予定された流行」である可能性。
そして、その全貌を「記録者」と名乗る匿名の存在が監視しているという恐るべき事実だった。
この物語は、感染が拡大するパニック小説ではない。
「封鎖される街で、記憶と記録がどう塗り替えられていくか」を見つめる、ひとつの終末の記録である。
黒血熱の感染経路を、誰が、何のために計画したのか。
行政と報道の沈黙はどこから始まったのか。
そして、予言とも呪いともつかない「黒い八月」の正体は何なのか。
疫病の恐怖だけでなく、情報が封じられ、人間が数字に還されていく過程が描かれる。
終息を告げる放送が流れても、そこにあるのは安堵ではなく、ひとつの問いかけだ。
「あなたがこの先、新しい封鎖の街に出会ったとき、その沈黙に耳を塞ぐのか。それとも声を探すのか。」
記録は未完のまま残されている。
それをどう読むかは、読み手に託されている。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-19 21:00:00
24141文字
会話率:25%
社会人の藤原裕也は、ある日ふと自分の名前に違和感を覚える。
お盆に久々の帰省を果たした彼が、実家で見た“ある映像”は、確かに自分を映していた。
ただし、呼ばれていたのは「裕也」ではなかった――。
最終更新:2025-07-19 02:06:44
1485文字
会話率:24%
この物語は、私が見た夢から始まりました。
それは、真夏の早朝に見た、あまりにも強烈で、そして不穏な夢。
目覚めてから数分経ち、そして数ヶ月経っても、その映像と響きが脳裏にこびりつき、まるで本当にあった出来事かのように奇妙な感覚でした。
そし
て、少しネタバレになるのですが最近、あるアニメをずっと観ているのですが、その影響で、あるキャラクターが夢に出てきて、私を助けてくれました。
この夢にはどんな意味が込められているのか。そして、登場人物は何を伝えたかったのか。
そんな疑問が、この「デッドライン・ドリーム」という物語を生み出すきっかけとなりました。
※少しアレンジしています。
また、夢が途中で終わってしまったため、オチは全て私の想像となります。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-18 19:15:32
2449文字
会話率:28%
Vチューバー「団三郎様」の中身は、都会のアパートの二階に一人暮らしする地味なOL。
ありふれた日常を一人酒を楽しみながら、面白おかしく語るだけのライバー活動が趣味だった。
ある日たまたま背後のベランダ側の窓に、人が通る姿が目
撃された。隣の部屋でついに殺人事件が起きたのだ。
「団三郎様」は事件解決の証拠映像を撮った事で、一躍有名になったわけだが、調子に乗り過ぎアカウントを凍結された。
続いて始めた「夢見ガチコ」 の人生相談室も、殺人事件を巡るトラブルに巻き込まれて凍結──使用していたパソコンごと回収され、アパートを追い出されることに。
メンタル強者の彼女が次に取った行動は果たして⋯⋯⋯⋯
この物語は公式企画「夏のホラー2025 水」「執筆応援フェア」の投稿作品です。
なろうラジオ大賞6にて投稿した短編作品「ベランダを散歩していたのは誰って話がバズった」 元になっています。
関連作品に「夢見がちな配信者」 「生配信していただけなのに 〜 あるライバーの背後で起きていた事件 〜」 があります。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-18 12:01:56
9797文字
会話率:13%
Vチューバーの「団三郎様」の中身は、都会のアパートの二階に一人暮らしする地味なOL。
日常を一人面白おかしく語るだけの、生配信が趣味だった。
ある日たまたま背後のベランダ側の窓に、人が通る姿が目撃され、隣の部屋でついに殺人事件が
起きた。
「団三郎様」は事件解決の証拠映像を撮った事で、一躍有名になったわけだが⋯⋯
この物語はなろうラジオ大賞6にて投稿した短編作品「ベランダを散歩していたのは誰って話がバズった」 が元になっています。
☆ しいな ここみ様の個人企画「瞬発力企画」投稿作品となります。
一日目のキーワード「東京」、二日目のキーワード「夢見がち」 が使われています。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-16 01:38:16
6000文字
会話率:14%
世にも奇妙な物語風の短編ホラー集になります。
オチに命をかけています。
いつか、世にも奇妙な物語で映像化される事を夢見ながら、執筆しています。
大量にストックがあるので徐々に公開していきます。
宜しくお願いします。^ ^
最終更新:2025-07-18 02:20:24
56612文字
会話率:27%
映像を学ぶ大学3年の綾瀬楓斗は
卒業制作のキャストが直前で辞退し、絶望の中にいた。
そんなある日、本屋で偶然目にしたのは
かつて同じ授業を受けていた女子学生・小野夏海。
病を抱え、夢を諦めかけていた彼女と
夢を映像に託そうとする彼。
フ
ァインダー越しに見つめた彼女の瞳は
どんな台本よりも
強くまっすぐに“生きる”を語っていた。
" 主演になってほしい "と願ったあの瞬間から
二人の “ 夢と命をかけた物語 ” が動き出す ──
『君とのエンドロールを夢見て』
夢は終わらない。
君が生きていた証を、映像に残すから。
“ 命の終わり ” と “ 夢の始まり ” が交差する
涙と希望の青春物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-17 23:31:36
16872文字
会話率:22%
大学2年の蒼井律(あおい りつ)は
映像学部でホラー映画の脚本を学びながら
一人暮らしを始めたばかり。
ある日スマートフォンに
見知らぬアプリから通知が届く。
──【水の使用量:昨日より23.2L増加しています】
インストールした覚え
のないアプリ《miz-no》。
調べても情報はなくアプリ自体も存在しない。
それ以来、深夜2時を過ぎると
自宅の水場で音がするようになり
通知は【シャワー使用】【洗面台に人影】といった
不気味な内容へと変化していく。
誰もいないはずの浴室。
だが、画面越しに映った“濡れた誰か”の姿──。
現実とスマホの境界が溶けていくなか
律は《水》にまつわるある事故の痕跡に辿り着く。
そして最後に届いた通知は、たった一言だった。
──【次は、あなた】
現代の孤独とテクノロジーを通して描く
静かに滲むホラー。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-13 00:53:45
3549文字
会話率:9%
時は西暦2221年。人を乗せて移動出来る大型のドローンも、空に映し出される巨大な広告映像も、超小型の通話・通信可能なデバイスも、さして珍しくも無くなった今日この頃。
世の女性は、突如現れた未確認生物『レイパー』の脅威にさらされていた。
レイパーは『アーツ』と呼ばれる武器でしか倒すことは出来ず、護身用として女性は老若関係なく皆、アーツを所持する事を推奨された時代である。
高校の入学式へと向かう束音雅(タバネ・ミヤビ)はその途中、人型の蜘蛛のようなレイパーと遭遇し、親友の相模原優(サガミハラ・ユウ)と共にこれを倒す。
しかし倒したはずのレイパーが突如発光し、巻き込まれた雅が気がつけばそこは異世界。
彼女は知る。異世界も、元の世界と同じようにレイパーの脅威にさらされていることを。
そして彼女は決意する。異世界と元の世界にいる全てのレイパーを倒し、女性が明るく、安心でき、希望を持って人生を歩んでいける世の中を取り戻すことを。
――これは、束音雅とその仲間達が紡ぐ、絆と希望の物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-17 00:00:00
2126132文字
会話率:33%
映像媒体の復元技術が進んだ現代。株式会社スコーピストの庄野裕市はライブリマスタープロジェクトの作業中「ビーガル」と呼ばれる超周波生命体と遭遇、劣化したフィルムに収録されている空間へと入り込む力を身につける。そこは『サビ』や『カビ』といった劣
化要因が怪物化して世界を壊滅させようとしていた。裕市とビーガルの映像世界を守る戦いが今始まる・・・。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-16 05:50:00
206766文字
会話率:49%
「人生を変える物語を書いたはずだった。でも、それが俺の全てを壊した。」
夢だった作家デビュー。
その小説が映像化されることになり、制作チームと共に雪山の撮影現場で暮らすことになった俺、久遠ケンジ。
だが、誰も知らない。
この映画が完成す
る頃には、俺という存在がこの世から消えることを。
恋人を失い、仲間とのすれ違いの中で、俺は“自分自身”の物語を綴り始める。
完成まで9ヶ月。
それは、命のリミットでもあり、贖罪のための猶予期間だった。
——何を捨てて、何を残すのか。
最後に泣くのは誰か。
これは、たった一人の作家が「消える準備」をしながら、
“自分を生き直す”までの9ヶ月の記録。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-15 22:44:03
1776文字
会話率:17%
部員たちは新太郎をなだめ、映像制作のための準備を開始した。
最終更新:2025-07-14 12:00:00
2076文字
会話率:0%
「現代日本の落ちこぼれ大学生」が、謎の“配信神”の気まぐれで異世界転生。しかし剣も魔法も使えない彼が手にしたのは、異世界のすべてを“配信ネタ”に変える《投影魔法》の才能だった――!
舞台:異世界ファンタジー世界「エレノスト」魔物とダンジョン
が広がる中世風世界。この世界には《マジックチューブ》と呼ばれる《投影魔法》により、冒険や日常を「映像として見せる文化」が存在。
・マジックチューブ(投影魔法):YouTubeがモデル。視聴数=経験値。登録者数=レベル。動画収益=ゴールド。
・マジックエックス(短文投影魔法):Twitterがモデル。呟きが空中に流れ、魔心(♡)と魔罵(#)が飛び交う魔法SNS。
【主人公:ユウト・カガミ(加賀美 悠翔)】
現代の底辺配信者。チャンネル登録者12人で異世界転生。異世界に来てから、配信者ステータス「インフルエンサーLv1」として生きる羽目に。戦えないが、《配信者スキル》で仲間や装備の「見せ方」を強化する特殊能力持ち。広報・話術・煽り・編集能力・炎上耐性MAX。【システム設定:配信と強さが連動】
▼配信要素がRPGシステムに融合
再生数=経験値:バズるとレベルアップ!
チャンネル登録数=影響力・称号:「登録者1万人:銀の杖」など称号効果あり
動画収益=換金ゴールド:コメントやスパチャが収益になり、装備強化に使える
いいね=魔心ポイント(好感度):町民や冒険者から信頼を得る
炎上=魔罵コメント・マジックエックスでの爆発的拡散:負の注目で再生数が跳ね上がるが、一定以上で“呪炎”が降るペナルティ
【冒険・戦闘と配信の融合】
ダンジョンに潜る →《ダンジョン探索してみた》系動画
・魔物討伐 →《【ガチ】このスライム、ヤバすぎる》系サムネ
・仲間と合流 →《最強美少女剣士とパーティ組んでみた!》など美少女映え必須
・炎上案件 →《謝罪配信してみた》《○○さんとの決別について》
・PvPバトル →《煽られたからボコってみた【神回】》
「この世界、映えれば生きていける!」
再生数でレベルを上げ、動画収益で装備を強化し、バズと炎上を繰り返しながら、異世界最強の配信勇者を目指す物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-13 22:45:06
8766文字
会話率:57%
不肖「信頼出来ない語り手」明智紫苑のおバカ書評! ついでにボヤキ! 読む読まないはあなた次第です。さらには、音楽や映像作品、並びに舞台芸術についての感想もあります。
一部の記事は、個人サイト『Avaloncity』やライブドアブログ『A
valoncity Central Park』などにも転載しております。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-13 19:41:29
211513文字
会話率:2%
東京で映像制作をしていた主人公・**香月 燈(かつき ともる)**は、
謎のメールを受け取り、生まれてすぐに離れた故郷・出雲へと向かう。
差出人は「君の“灯り”を返す」とだけ書かれていた。
だが帰郷しても誰も「照木」という集落のことを知
らず、古い地図にかすかに記されたその場所を頼りに、山を越えた燈は、
やがて**「記憶が消える村」**へと辿りつく。
そこには、
・朝にすべての記憶が“リセット”される少女
・太陽の出ない空
・誰にも正確に見えない「古道」
など、不条理な現象が静かに存在していた。
燈が照木に足を踏み入れるたび、東京での自分の過去の記憶が少しずつ失われていく。
しかし、なぜかこの場所には**「自分がかつて確かにいた証拠」**だけが残されていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-13 17:59:14
10921文字
会話率:23%
しがないフリーター杉田智之は、一念発起してVTuberを目指すことに。
しかし、高額な初期費用に絶望していた矢先、怪しげな通販サイトで格安のV配信キットを発見する。
「騙されてもいいや」と購入し、アバターとして「200年を生きる青髪ロングの
美少女吸血鬼キリス・コーツウェル」を作成。
試しにオフラインでゾンビホラーゲームを実況テストすると、なんとゲームの世界にアバターの姿で入り込んでしまう!
しかも、吸血鬼の設定がそのまま反映され、超人的な力を発揮!
「これ、とんでもない配信ができるんじゃね?」
意を決して公開配信を開始すると、リアルすぎる映像とキリスの規格外の活躍に視聴者は騒然!
瞬く間にSNSでトレンドを独占し、デビュー配信でいきなり数万人が視聴する伝説のVチューバーが爆誕する!
果たして、この不思議な現象の正体とは? そして、智之(キリス)の異世界ゲーム実況配信の行く末は――!?
ハラハラドキドキの異世界ゲーム実況ファンタジー、ここに開幕!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-13 12:00:00
102782文字
会話率:24%
深夜、更新される謎のチャンネル「kokorocentury」。
自分の心を見透かすような映像と、語りかけてくる声。
少年は気づく。それは、“心を救う使命”を持つ者への招待状だった――
これは、見えない心の光が世界中の誰かを救っていく、希望の
物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-11 19:08:52
726文字
会話率:19%
2007年生まれの僕は、2024年になってマイケル・ジャクソンという存在に出会った。
彼の音楽、ダンス、魂の叫びに心を奪われ、毎日のように映像を見ていた。
しかし、彼はもうこの世にいない。2009年に、孤独のなかで亡くなった。
その運命を
知るたびに胸が苦しくなった――「彼を救いたい」と、そう願った。
そんなある日、目を覚ますと、僕は1992年にいて、なぜかマイケル・ジャクソン本人になっていた。
伝説のライブ、メディアの誤解、1993年の告発事件……。
未来から来たただのファンだった僕は、今や彼として世界の前に立たなければならない。
これは、推しの未来を救うために、歴史を変える決意をした一人の少年の物語。
そして、夢と現実が交差する、もう一つの1992年の記憶――。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-10 18:28:33
341文字
会話率:42%
【笑って、ちょっと泣ける、座敷わらし×現代日常の妖怪ホームコメディ!】
FXで資産の大半を溶かした青年の家に、アホ毛を生やした少女が転がり込んでくる。
その少女は、最高ランクの座敷わらし(チョウピラコ)だった。
座敷わらしの力で資産のV
字回復を達成した。
だが、ひとつ問題があった。
座敷わらしは家の中でも靴を脱ごうとしないのだ。
靴を脱がない妖怪と、靴を脱がせたい青年の戦いがはじまる!
世界よ、これが和風ギャグだ!
【本作は、KADOKAWAグローバルコミック編集部の注目作品(2025.5)に選出されました】
※マンガ原作・映像化希望です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-10 07:05:59
9392文字
会話率:23%
正座の姿勢で高速道路を爆走中――俺は風圧と虫の猛攻を受けながらも、ただひたすら前を目指していた。
そんな折、背後から響くサイレンの音。
何事かと思えば、「そこのブ――人、止まりなさい!」って俺かよ!
最終更新:2025-07-03 07:26:31
2688文字
会話率:13%
映像作家としての夢に破れ、借金を背負った28歳の片山京奈は、昼はローカルスーパー「ライフ志村」、夜は昭和風定食屋「ツバメ亭」で働く日々を送っている。週六勤務、住み込み。利息の支払いに追われる生活の中で、感情は徐々に沈み、笑顔を浮かべる余裕も
なくなっていく。
それでも、賄いの一品に込められた気遣い、女将のぶっきらぼうな優しさ、マスターの視線、客たちの無言の欲望――それらを全身で受け止めながら、京奈は働き続ける。「見られている」ことを意識しながらも、あくまで沈黙を貫く彼女の姿は、店の空気を静かに変えていく。
唯一の楽しみは、日曜のスーパー銭湯「湯楽の里」で過ごすひととき。身体を洗い、湯に浸かり、仮眠室で目を閉じる間だけ、京奈は「誰でもない自分」に戻れる。
けれど日常の延長には、誰にも見えない「非日常」が静かに口を開けている。
これは、見られることに慣れ、見られることでしか稼げなくなった女の、一日という名の、静かな断崖の記録。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-07 15:18:55
10379文字
会話率:15%
神守村(かもりむら)ー奥多摩の廃村。この村の湖には「水分主(みくまりぬし)」と呼ばれる水神・蛟蛇(こうだ)が住み、水分主は世を潤わせる神水を降らせると言う。
飢饉や天災、騒乱は蛟蛇が怒り狂っているとされ、天災騒乱が続いた際、これ以上の災難を
避けるために、水分主に子供を捧げる人柱の儀式が行われていた。その水分主へ捧げる生贄を・御饌児と呼ばれていた。しかし、この儀式は天才避けとは別に、育てられない子供を処分する口減らしの手段でもあったと言う。
この人柱に使われていた湖を、子供を食らう湖「児喰湖」と呼ばれた。
年月は流れ現在、神守村の跡地に立つ高岡病院では児喰湖に沈んだ子供の霊が彷徨い、高岡病院やその近隣に住まう子供を道連れに攫うと言う。その児喰湖の都市伝説を追っていたジャーナリスト・稲垣聡が変死体で発見され、逃げ惑う監視カメラの映像には謎の和装の少女が写っていた。
同時期、高岡病院の医師・仁科琢馬が行方不明となり顧問弁護士の葛城耕作は私立探偵の榊原龍太郎が調査の依頼を引き受けた。調べて行くと、稲垣の部屋には児喰湖と高岡病院の関係性を書いたルポルタージュ、そして高岡病院の身辺で少年少女の行方不明事件が多発。
そして事件には、相次いで和装の少女の目撃証言があった・・・。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-06 15:50:22
5126文字
会話率:41%
義体化が進んだ都市、アッシュシティ。
複合企業と傭兵が街を牛耳るなか、清掃員ヤマモトは黙々と都市の“端”を回り続けていた。
彼は特別な人間ではない。過去もなければ、誇りもない。
ただ、壊れた義体を拾い、直すのが趣味なだけの、静かな男だった
。
ある日、いつものように作業中、異様に綺麗な義眼を拾う。
そこからヤマモトの視界は、わずかに歪み始めた──
それは金庫の映像、紙幣の山、そして“自分が英雄になる”未来。
現実と妄想の境界が曖昧になるなか、ヤマモトは確信する。
「この金さえあれば、俺は変われる」と。
やがて、彼は“都市の守護者”を名乗り、廃棄された倉庫街へと向かう。
誰にも知られず、誰にも気づかれず。
ヤマモトは、自分だけの伝説を追いかけていた──
■都市に埋もれた名もなき者たちを描く連作短編シリーズ《灰に眠る者たち》第一話。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-05 20:40:47
16931文字
会話率:21%