年末に突然山花という人物からメールが届き、それからかれとメールやチャットで交流するようなった。山花はぼくのネット小説『麦川アパート物語』の熱烈な愛読者である。何度も読み返しているようで、細部にまで異常に詳しい。何度かのメールのやり取りの後
、かれはぼくの小説の登場人物である舞の父親だと名乗った。ぼくの小説にモデルはいないので、登場人物に実在する親がいるはずがない。あまりに荒唐無稽である。山花は下心があるかもしれないと警戒したが、自分に危害を加えそうもなのでそのまま交流を続けた。すると他の登場人物の親たちが現れ、リモートで話をすることになった。そして、みんなで娘たちが住んでいる麦川アパートの場所をつきとめようということになった。どうして架空の物語が現実とリンクしていったのか、そこには親たちの子供たちへの切ない思いが隠されていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-12-17 00:00:00
73785文字
会話率:1%
おれは競馬が好きなだけのどこにでもいるような中年男である。ある日、おれは万馬券を当てたのだが、近寄ってきたじいさんが、おれが当たるのは前から分かっていたというのだ。このじいさんは少し頭の呆けた自称・予言者であったが、成り行きでおれが住んで
いるおんぼろの麦川アパートに一緒に住むことになった。そのじいさんがあろうことか家出少女の萌を拾ってきたんだ。それからというもの、出会い系サイトで知り合った元・女子プロレスラーの幸子や左腕に「アキラ命」のタトゥーを入れた男好きの彩乃など、一癖も二癖もある12人の若い女たちと共同生活することになった。女たちはキャバクラやコンビニ、ラーメン屋で働いて、給料をすべてアパートに入れてくれた。それじゃあハーレムじゃないかと思うかもしれないが、そんな良いものじゃないんだ。でも、それなりに楽しい日々を過ごしていた。ところが、おれたちは小学生誘拐未遂事件やカレー毒殺未遂事件などに巻き込まれ、アパートは世間からカルト集団の巣窟とみられるようになって、排斥されるようになったんだ。こうして、自分たちの行いとは無関係に、アパートの住人は世間に翻弄されることになっていった。さて、我々麦川アパートの住人はどうなっていくのだろうか。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-10-17 00:00:00
72982文字
会話率:29%