――星を仰げ。音なき祈りを叫べ。
滲み崩れる凍て空に、どうか、その手を差し伸べて。
少女は夢を見ない。それはきっと、この胸に閉じ込めておくほどの羨望は、彼女にとって、あずかり知らないものだったからなのだろう。
かつて、蒙昧の只
中を生きていた。己のなすべきことを新たに見出し、今はただ、あの人を楽にしてあげたいと、それだけを望み、長い月日が流れた。
それはまるで奇跡のように、突然のことだった。
反転した世界を落ちゆく少女は、遥かな空と先の大地で、二つの憧憬と巡り逢う。
これは、ついに訪れた終着点の物語。
少年は夢を見ない。それはきっと、終わりのない反覆の果てに、かつてこの胸を満たした渇望が、彼の記憶ごと凍りついてしまったからなのだろう。
今なお、疑問の只中を生きている。己のなすべきことはとうの昔に見失い、今はただ、人間のいない場所へ行くこと、それだけをよすがに、長い旅路を歩んできた。
それはまるで厄災のように、突然のことだった。
見知らぬ箱庭に引き摺りこまれた少年は、地に潜る空と先の大地で、二つの異分子と巡り遭う。
これは、ついに訪れた始発点の物語。
――星を仰げ。手を焦がせ。
己が踏むべき影道は、炎の軌跡と共にあり。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-10-27 11:21:05
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会話率:32%