第二王子の二ケロ・エルカは、王国の第二王子が代々背負う「蛙化」の呪いにより、生まれつきカエルの容貌で生きてきた。明るく単純、大らかな性格の彼は周囲に少しも悲壮さを感じさせず、執務の合間には領地の湖で騎士予備軍の子供たちに泳ぎを教えたり、漁師
の仕事を手伝ったりと民からの信望も厚い。ただ、カエルな見た目ゆえに王侯貴族の若き令嬢たちからは敬遠されがちで、男子の婚期を迎えたいまも嫁取りだけは望み薄であった。しかしそんな第二王子のもとに、隣国から売れ残りの公爵令嬢セーラが嫁いでくる。セーラもまた、不浄の象徴とされる「唇の痣」を生まれつき負って血族から疎まれ、生家を追放されたばかりの気の毒な身であった。忌まれた娘に特有の、自信なさげで伏し目がちなその寡黙さ。しかし第二王子二ケロにだけは、彼女が聖女に見えるのだった。蛙化の呪いは、二ケロ第二王子に真実を見抜く「ケロ眼(慧眼)」を与えてもいたのである。――(蛙化した俺なんかに聖女さんが嫁いできてくれるとか、なんのご褒美だよ。ありがたき幸せかよ! つーか、こんないい娘を追い出した隣国たぶん滅ぶけどもう遅いよ!)と二ケロ第二王子は内心動揺しながらも、セーラとふたり水入らずで新婚生活をはじめる。いや、カエルなので水は必要。とにもかくにも、家事に雑務にと健気にたち働く聖女セーラを二ケロ第二王子は褒めたおし、惚れ抜き、生涯守り抜くと誓うのだった。たがいに異性との恋に不馴れなものどうし、その距離はじれじれとしか詰まっていかない。それでもいつの日か、聖女の口付けが第二王子を蛙化の呪いから解き放つ、かもしれんケロ!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-06-21 06:06:36
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会話率:25%