“それ”は地震ではなかった。
日本西海岸の静かな沿岸都市、嶺州県鳴神市。
そこに突如として出現したのは、無窓の巨塔――国家指定の最高機密感染症研究施設「アトラス棟」。
この建造物の地下には、人類史上最悪の致死率を誇る“何か”が封
印されていた。
そしてその存在を知ってしまった者たちは、次第にこの国の“情報の闇”へと引きずり込まれていく。
主人公は、元医療記者・須藤蓮。
報道の自由を失った現代で、彼は静かな日々を選んだはずだった。
だが、大学関係者から託された一通の封筒が、すべての歯車を狂わせる。
そこに記されていたのは「耐震等級未達」「地下で封じられる病原体」――そして、国家によって意図的に隠された構造上の“破滅の種”だった。
SNSも、新聞も、すでに声を奪われていた。
市民運動家・日向美鈴と共に、須藤は抗い、そして気づく。
これは「災害」ではなく、人間が起こした封印の破壊なのだと――
「この震源の名は、後に誰も語ろうとはしなかった。ただ、それが何を解き放ったのかを知る者は、あの夜を最後に姿を消した。」
「感染症 × 地震 × 言論統制」――最も現代的で、最も恐ろしく、そして最も静かな終末が、ここにある。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-24 06:00:00
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