切通雄二は朝眼が覚めた時、異様な世界にいる事に気が付く。切通の家は高台にある。眼下に常滑港や飛行場が見下ろせる。それらが全て消滅して、海がすぐ目の前まで迫っていた。家は何十年も人が住んだ事がないように荒れ果てていた。妻の幸子もいない。
慌てて外に飛び出す。家の周りには工場や借家が建ち並んでいたが、全て無人で荒れ果てていた。
海は家の5メートル程先の崖下まで迫っていた。空は分厚い雲が垂れ下がり、僅かに雲間から薄日が差していた。女の全裸死体が波間に漂ってくる。それは殺したはずの前妻の麗子だった。彼女の死体は切通の目の前で、たちまちに腐乱して消えていく。同時に切通の家や周りの家などが崩壊して大地に吸い込まれるようにして消えていく。後の残ったのは切通と1本の松の樹のみだった。
この時切通はすべてを悟る。この世界は麗子とその母の静子の怨念の世界だったのだ。切通はこれから何が起こる事を全て知った。
切通は空手道場で師範をしていた。佐原静子は入門して約1年後、稽古をつけた事で切通と結婚する。母の静子も切通家に住む。静子と麗子はスーパーの洋装品店で働いている。2人は家にいる事はほとんど無かった。
切通の結婚の蜜月生活は長く続かなかった。麗子自身切通との2人だけの生活を拒絶していた。2人のすれ違いの生活が始まる。静子が自分の店を持ったことで、切通家の財産の使い込みが発覚する。
切通は麗子との離婚を要求するが、静子の謝罪で元の木阿弥となる。
切通は幸子と知り合う。彼女の優しさが切通の心を支配する。彼は幸子と結婚するために麗子と別れる事を真剣に考え始める。
静子の店が潰れる。切通は使い込んだお金の返済を静子にせまる。
やがて静子が切通の食事に猫いらずを入れている事を、切通は知る。麗子達の殺意を知った切通は2人の殺害を計画する。山の中の松の樹がある場所でまず静子を殺す、次に妻の麗子を生きながらに埋めて殺す。そして幸子と結婚する。
だが幸子との蜜月の生活は長く続かなかった。幸子が気管支炎で死ぬ。その原因が死んだ麗子たちの怨霊にあると悟った切通は、警察に自首する。2人の遺体が掘り返されて、切通は死刑となる。
麗子と静子の怨霊の世界に囚われた切通の霊はやがて2人の棲む地獄へ連れていかれる事を知る。
その時幸子の姿が天界から現れ、切通を救い上げるのだった。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-03-29 09:02:11
53007文字
会話率:12%
ブチ切れると、何をしでかすかわからない、そんな自分を変えたい、そう思ったKは、ある禅寺の体験ツアーに参加した。そこは、外見は確かに立派なところであったが、住職がかなりの曲者で、はたしてここで大丈夫なのかと不安を抱く。しかし、真剣に体験をとり
くむ中で、Kは、自分自身、心の安静を得て、悟りを開眼したかに思った。そんな中、事件は突然起こった。流血しながら、住職に襲いかかるK、住職に喝をいれられ、Kははっとした。元の木阿弥だ・・・こんなことではダメだ、Kは心を入れ換え最後まで体験ツアーをやるきる。日常に戻ったKは、新聞であの禅寺が炎上したことをしる。Kは、信長が焼き討ちにあったあの本能寺をとおく思い描いていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-05-17 14:49:47
4496文字
会話率:23%
又川峰次(またがわみねつぐ)は悩み多き人生を送ってきた。自ら「ビョーキ」と称する悪癖のせいだ。
階段はかならず右足で最後の一歩を踏む。信号は点滅する前に渡りきる。横断歩道は白いとこしか歩かない。通学時は決して走らない。エトセトラ、エトセ
トラ。
自分ルールで自分を縛り付けている彼は、自分の理想とする姿から乖離した物もまた苦手だった。それらを彼は「人生におけるバグ」と呼んでいる。
そんな彼が、いま気になって仕方がないバグがあった。それは旧校舎の外壁に取り付けられた大時計だ。その時計は常に現在時刻より二時間進んでズレていた。そしていくら修理しても次の日には元の木阿弥になってしまう、そんなバグ。
見ているだけで落ち着かない時計に対してついにしびれを切らした峰次は、クラスメイトで唯一の友人である彼乃岸(かのぎし)ゆかりを誘う。彼女もまた、大時計のズレが気になるのだという。
そうして二人は共に旧校舎への侵入を試みることにしたのだが……。
※ブログ「兎塚放送」にて同作品を掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-07-20 21:16:40
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会話率:49%