時間に追われる男・佐野は、コンビニのレジで列を無視し、
小さな声で「急いでるんで」とだけ告げ、前へ進んだ。
ほんの数秒を惜しむその行動に、
誰も声をかけなかったが──
その空気は、静かにどこかへ積もっていた。
翌日、同じ店、同じ列。
今
度は誰かが彼に道を譲った。
あの日、割り込まれた誰かかもしれない。
……けれど、恨みの色はなかった。
譲られた佐野は、言葉を詰まらせたまま、
レジ前で財布の中の札が見つからず、弁当を戻す。
“やさしい仕返し”は、気づかせるだけの出来事。
誰も責めない、何も壊れない、
ただ、自分の影に出会うような物語。
──それだけのことです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-09 00:25:40
590文字
会話率:6%
吉澤という男は、隣人宛の郵便物を“面倒だから”と放置した。
それ以来、自分のポストには何も届かなくなり、代わりに見知らぬ手紙が部屋に現れ始める。
──誰にも書かれていないはずの、けれど自分に向けられたような言葉たち。
ある日、失くしたはず
の封筒の代わりに届いたのは、
「あなたが、ちゃんと届くと信じなかっただけです」というひと言。
それは、投函されなかった手紙がくれた、ささやかな“気づき”だった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-05 23:29:20
800文字
会話率:11%
道を譲ってもらったのに、お礼を言わなかった男。
それは、ほんの些細な無言だった。
だが、その日から男の周囲に、ゆっくりとした“変化”が始まる。
やさしく、静かに、けれど確かに返ってくる何か。
最終更新:2025-06-04 00:55:42
1504文字
会話率:3%