室町幕府を開いた足利家の支流で、将軍継承権も有していた名門・今川家。その最後の当主・氏真は今川家を潰した事から世間一般に“暗愚”の印象が強い。
しかしながら、果たしてそうなのだろうか? 息つく間もなく襲い掛かる逆境に呑まれまいと奔走する
一人の男の物語。
<『KAC2024 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2024~』参加作品>
第4回お題:『ささくれ』
※当作品は先述したイベントに投稿しました作品に加筆したものとなります。
カクヨム版はこちら→https://kakuyomu.jp/works/16818093073489317336折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-07-09 19:00:00
25156文字
会話率:15%
その男はボロアパートの部屋に入ると、ふんと鼻を鳴らし、荷物を降ろした。
男は出所したばかり。新たな始まりの時と言ったところ。
しかし、それは決して更生、これからは良い人間として生きようというものではない。
刑務所は寒々しく劣悪な環境で
心はささくれ立つばかり
看守も意地悪で飯も質素、虫歯は治療ではなく抜歯、風呂は……と、不満を挙げたらキリがない。
唯一の癒しは現実逃避、いや彼にとっては現実的であると言えよう。
犯罪計画を練るというものは……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-09-01 11:00:00
3677文字
会話率:32%
塾帰りの篠原君は、同級女子高生の皐月さんに偶然出会った。
しかし彼女は、おっさんの首を絞めていた。
意識がなくなっているおっさんを篠原君はどうにかする為に奔走する。
なぜ彼女のためにそこまでするのか。
それはひとえに愛ゆえに。
最終更新:2022-11-30 11:21:47
408文字
会話率:14%
憎悪の花の開花時期は安定した時が決まっていない。
春のうんざりする強風の日に咲いたことがあれば、夏の粘っこい陽の明かりの中、冬のささくれ立つ氷の下から生えてきたこともある。
秋の空虚な曇りの日にもっとも多くの数が観測されるが、大概は、
種がくだらないストレス、被害妄想、自己嫌悪、人間不振に襲われたときに咲くようになっている。
憎悪という名称は種の強がりだ。これは確かに憎しみ苦しむものであってほしい、倒されるべき悪であってほしい、そんな種の願望が込められただけのただの二文字で、咲く花の一本に一本に酷い毒性があるわけでも、まして有用な効能があるわけでもない。
そんな何百本咲き誇ろうが相手にされない花が、今年もプランターに数本だけ顔を出す。
園芸の本があれば誰でも咲かすことができるだろうその花の、土中で朽ちていく種の殻は、それでも、自信ありげにこう言うのだ。
ここは花園だと。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-06-17 14:33:07
5249文字
会話率:7%