目の先に映る世界は凄惨な光景で埋め尽くされている。
手からは生き物が動脈を小突く一定の鼓動が伝わり、そして目には、まだ手沢のついていない一抹のナイフを通して地面に流れていく体温が映る。出水した赤の液体は、絶えず流失し続け地に大きな水たまり
を作っている。人間というのは、体内から半分以上の血液が出ると致死する可能性が極端に高くなると言われていることを思い出すに、目の前の血だまりがとうにその致死量と呼ばれるものを超えていることは火を見るより明らかだった。
さっきまで雨を降らしていた霧がかっていた雲は一時顔をそらし、代わりに覗かせた月がより鮮明に景色をはっきりとさせていく。月明かりに照らされてらてらと輝く赤黒い水たまりは、かさを増しやがて足下にまで及ぶ位になった。この乱れた呼吸は誰のものだろうと口をつぐむとそれは紛れもなく自分から発せられたものだった。他人から発せられる腐った鉄のにおいに脳漿がくらくらと陶酔し一歩退く、するとどろどろでネチャネチャとした粘液が足に絡んで思うようには動けなくなる。手元に残ったままの確かな感触を引き抜けば、そこからは止めどなく血が流れていく。
鈍く光ったナイフを見る。半液体から、反射された己の顔は酷く歪んでいる。
そうしてその肖像画を眺めていると、ばたりと眼前の人間だったものが肉塊に変わって崩れ落ちていった。
今日僕(私)は、人を殺めた。
あらかじめ準備していた高尚な動機も今となればほんの一縷のあまりたいしたことではなかったように、僕は思う。
あれだけ殺したくてたまらなかったはずなのに、殺したくはなくなってしまった私は、この事実を呪う。
神よ、願わくは変えられない物を受け入れる勇気を僕に。
願わくは、変えられない物を変える勇気を私に。
少年が、少女を殺してしまったことによって始まるピカレスク小説です。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-30 20:41:52
123933文字
会話率:39%
新生児仮死という言葉を知っていますか? 産まれた時に息をしていないのです。昔は赤ちゃんのお尻を叩いて「オギャア」と泣かせたそうですが、今は低体温治療、つまりコールドスリープをするのです。21世紀の最先端治療を受けて生かされた孫。そんな稀な経
験をしたうちの孫と家族の、楽しくて幸せな生活を覗いてみてくださいな。
※ 序章の三話は小説家になろう「じだらく魔女の孫育て」に掲載しています。その後はアメーバブログから改稿転記しています。アメブロのものより直接的な表現もありますので、ご注意ください。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-19 18:53:08
220694文字
会話率:6%
お母さんになろうとした少女の独白。
最終更新:2019-11-16 04:11:26
1294文字
会話率:0%
未来の日本で、ゲインはアイアラート対応司法捜査官している。アイアラートは保護システムのAIから出される推測アラートで、過去データから予見された大規模自然災害から個人的な災害までの多種多様な保護内容で通知される。
ある日、ヒロノという男の
保護通知が来た。現場に駆け付けたが既に男は自殺した後で、遺書とタイマーで消そうとしているファイル群が残されていた。
ゲインはファイルを調べ出すが、内容は超音波検査で発見された未知の反応に対しての研究論文だった。
論文では人間の心らしきものを識別でき、人類には心が無いものもいるとの結論だった。自殺の要因にはならない内容だったが、論文には続きがあった。
心を持つ人間にも種類があり、いわゆる輪廻転生できそうな者は非常に少数で、なおかつ生まれた時から決まっているというものだった。
この論文の公開は、宗教の否定や新たな差別の発生など、世界的にも大きな影響を与えることになる。ゲインはヒロノの自殺した原因と、自分がこれを知ってしまったことを後悔する。
データを消そうとしたゲインはAIにより緊急保護され、同時に世界から隔離された。論文内容は公開されるべきだが慎重に行う必要があり、知る者であるゲインの隔離は必須だった。
隔離期間は12年と言われたゲインだったが、低体温睡眠により2年程度の老化でその期間をやり過ごすことも可能とのことだった。
低体温睡眠を選択したゲインはAIから人間の可能性を聞き、そして人類自体の覚醒を見ることになるのではないかと思いながら眠りにつく。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-13 22:55:04
15450文字
会話率:53%
汚い部屋。人間が飼われている。もう少し先の方には、光が見える。でも遠い。ここで終わりそう。悲しい気持ちも寂しい気持ちもなにもない。からである。からになる。諦める。私は居ないものになる。からの音。無音でもない。笑う。消える。光る。内的な衝動。
声。聴く。鳴る。歌う。音を出す。手を叩く。リズムをとる。疑う。疲れる。小さくなる。止める。座る。もたれる。繰り返す。耳鳴り。体温。冷たさ。熱。移る。太陽の量。割れる。落ちる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-09 19:24:48
5765文字
会話率:0%
体温が少しだけ低いことが取り柄のJKはある日、危険な少女に出会ってしまう。彼女の通う学園を巻き込んでの残虐な恋愛。複数の女の子同士の愛が巻き起こす惨たらしいラブコメ。片思い百合。両想いの百合。複数のガールズラブがメインですので苦手な方はブラ
ウザバック。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-10-19 18:40:02
802文字
会話率:47%
些細な瞬間に悶々とさせられる、ギタリストの話。
自サイト、社会で呼吸(https://alicex.jp/sha/)に掲載しています。
最終更新:2019-10-11 21:30:26
958文字
会話率:0%
ずいぶん年の離れた先輩に、どうしようもなく片想い。
何気ない日常でも好きだからこそ意識してしまう、悶々とした心情を描いた。最後の話のみ、創作。
お昼休憩/夏の更衣室/並んでお昼寝/冬の駅
この作品は、自サイト(社会で呼吸 https:/
/alicex.jp/sha/)にも掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-08-18 15:18:19
4703文字
会話率:38%
ある日、突然大切な人を目の前で失った少年の話
最終更新:2019-09-22 19:12:45
701文字
会話率:6%
私は君の温度を知らない。君もたぶん、私の温度なんて知らない。
最終更新:2019-08-13 20:26:12
1899文字
会話率:0%
朝目覚めると能力に目覚めていた。
体温を測ってみると99.9℃、戸惑う俺に階段から降りてくる姿があった。
日常×異能力 バトルもなにもないほのぼのコメディ。
この作品は「カクヨム」「自サイト」↓
https://mugi171015.we
b.fc2.com/index.html
にも掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-08-04 16:00:00
2654文字
会話率:59%
ちょっとしたポエム。
最終更新:2019-07-07 09:25:34
997文字
会話率:4%
二人の男女が崖下の海で浮きつ沈みつしている。ここは和歌山県三段壁…。冬の海に飛び込むことで男と女は心中しようとするが失敗してしまう。目の前には聳え立つ崖。冬の潮流は二人の体温を徐々にではあるが確実に奪っていく。死の瀬戸際に立たされて二人の
男女は互いの本性から目を背けることができなくなり…。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-06-24 00:00:51
11972文字
会話率:22%
警部は大統領官邸に急行
追悼式当日に大統領が身に着けていた背広等を確保した
最終更新:2019-05-26 19:46:49
515文字
会話率:14%
少し遠い未来、体温が上昇すると液体となってしまう奇病に侵された世界は、熱を捨てて凍りついた。
そんな世界で、元画家と、シャベルを引きずって街を彷徨う隻腕の二人の女性が出逢う。
最終更新:2019-05-04 19:41:12
4064文字
会話率:37%
日曜日って特別。なんで特別?そんなのあれだよ、気の持ちよう。
最終更新:2019-04-08 16:44:25
733文字
会話率:20%
バーテンダー、美容師、バンドマン
昔は3Bなんて言われて付き合ってはいけない男の代名詞だった
自分の人生を思い返すと現代でもそうだと思う
美容師である俺は別れたはずの女に路上で刺されていた
後腐れのない関係をモットーに生きていたがうまく
いかないもんだ
自業自得、因果応報
死ぬ瞬間に頭の中には恨み節ではなく罪の意識
雨で血が流れていき、力も抜けていく
ああ……死ぬなら女の子の胸の中で死にたかった
体温が下がるはずが次第に体は暖かさに包まれる
目が覚めるとそこは路上でも病院でもなく見知らぬ土地
明らかに自分の知っている世界とは違うここは
天国かはたまた地獄か
当たり前のように浮かぶステータスウィンドウを覗き込むと
神スキル 神斬り(ヘアカット)の表示
もしかしたら大変な事になるかもしれない
(不定期更新です)
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-04-01 11:00:00
22516文字
会話率:36%
伊月さんと光織ちゃんと書いている月桂樹の話の、ディオ目線。殆ど暗い。あとイル君がいません…
最終更新:2019-02-17 23:51:00
6402文字
会話率:30%
今日はお正月。私は昨日お姉ちゃんに、初詣に一緒に行くことを約束させた。だと、いうのに、お姉ちゃんは布団から全く出てくる気配がない。仕方なく布団から無理矢理引っ張り出すと、凄い勢いでこたつに突っ込んでいく。なんだかんだで朝食を食べていると、お
姉ちゃんは突然テレビを指差す。見ると、私の住んでいる地域が初めてお正月に氷点下になった、という報道だった。お姉ちゃんは、酷い低体温症で、過去に複数回病院のお世話になっている。それもあって、無理矢理連れて行きづらく、私は一緒に初詣に行くことを諦める。そんな私に、お姉ちゃんはパソコンを取り出しながら提案をした。それは、画面に映した地元の神社の写真を見ながら、擬似的に初詣をしようというものだった。私はそれだと満足できないけど、せっかくお姉ちゃんが考えてくれた代案だから、無下にするのも悪いと思って、私はその提案に乗った。こうして、お正月、こたつの中でお姉ちゃんと初詣をすることになった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-01-27 00:46:56
6555文字
会話率:57%
江戸時代。主に裕福なものを対象に盗みを行ってきた泥棒が、ついに牢に入れられることになった。
牢は牢でも、水を張った冬場の水牢。
体温は奪われ、片時も温まることは許されず、放っておけば水を吸いすぎた皮膚が、内側から破れていく。
それでも泥
棒は、この責めに口を閉ざしたまま……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-12-15 14:39:55
3277文字
会話率:4%
僕は平熱が高い。
当時はまだ体温が高いことに対する配慮などあまりなくて、体調は問題ないのにプールに入れてもらえないことがあった。
そんなある日、僕は授業中、保健の先生に連れられて、保健室へ。
そこには僕と同じ平熱の高い人たちが。先生は僕た
ちに、ある協力をお願いしてきた。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-06-08 18:19:48
3992文字
会話率:6%
17歳の私がネット恋愛をした結果
最終更新:2018-12-15 00:03:37
399文字
会話率:67%