♂「突然ですが、2年ほど前の話をしていいですか?」
♀「突然ですね、でも、だめと言っても始めるんでしょ?」
♂「あれは2年ほど前だった」
♀「わかってますって」
♂「2年前だから堂々とハイタッチできた」
♀「なんの話?」
♂「野球の大きな試
合を見に行ったんですよ」
♀「ほう」
♂「ひいきチームが敵地に乗り込んで3試合を戦ったんです」
♀「ほう」
♂「最初の試合で、5回終了後のグラウンド整備の間にひいきチームのマスコットキャラが向こうのチアリーダーの人と踊ってくれて」
♀「いいですね。和気あいあいで」
♂「こっちの応援席もちょっと盛り上がったりしたんです。エール交換みたいなものと思って。ところが最後は『もう一つ!』というセリフで」
♀「『もう一つ』ってなんですか?」
♂「向こうのチームは前年も日本一になっているから『もう一度頂点』ってことと受け止めました」
♀「ひいきチームが負けるという暗示を、声高にやられてしまったんですね?」
♂「実際負けましたけど」
♀「そういえば相手チームって大試合で負けないので有名ですよね?」
♂「そのときまで本拠地で10連勝とかで、不敗伝説と言われていました。次の試合の同じ時は、こっちの応援席は静かだったんですよ。でも前の試合を見に来なかった人がいたみたいで、ノリノリになって」
♀「最後は『もう一つ!』と一緒に声を上げさせられたりしたわけだ」
♂「その人『しゅん』となってました。その試合も負けました」
♀「あらあら。最後の試合はどうでした?」
♂「踊りの途中でボクが『これ、最後はもう一つ! だからなあ』ってネタバラししたんです」
♀「向こうのチアの人にイヤな客と思われませんでした?」
♂「そうかも。そうしたら3連戦最後、もう明日からやらなくていいというラストで、マスコットの人が相手チアとのハイタッチを拒否したように見えたんです」
♀「ええ~? 単なる空振りとか失念とかでは?」
♂「ボクは信じています。マスコットの人は、プロとしてチアと踊ることはできても、軍門に下って魂を売り渡してはいなかったのだと」
♀「考えすぎじゃないですか?」
♂「その試合も負けましたけど」
♀「ひょっとして『二つのふはい伝説があった。負けない不敗伝説と、ハイタッチを拒む気高い人の不ハイタッチ伝説、略して不ハイ伝説』とか言うんじゃ?」
♂「てってれ~」
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-12-27 22:13:59
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