ある広場で、青年は公園のベンチに座った。
空は澄み、目の前に広がる青々とした芝生の上を子どもたちが駆け回っていた。
今日はとびきりにピクニック日和で、そんな日の公園のベンチには、新聞を顔にかけて、のけぞって眠る男性がいるのは普通だろう
。
青年と背中合わせのベンチで眠る男性も傍から見ればそれに違いなかった。
青年は本を片手で持ち、空いた片手で鮮やかに男性の尻ポケットに入った書類を抜き出した。
それを合図に、男性は今目覚めたかのように時計を確認し、足早にその場を立ち去る。
青年は数十分後に立ち上がり、ゆっくりと街の中心部に歩き出し、ついには人ごみに紛れて見えなくなった。
そのポケットには、乱雑に入れられた彼の仕事。
新聞の一面は…
『勇者失踪』
四作目「勇者は、勇者になるために。」
魔王討伐後の勇者たちの短編集です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-01-01 19:10:38
40902文字
会話率:8%
魔王城の最上階。
満面の笑みで喜び合う仲間を横目に見ながら、勇者は一人佇み、魔王の死体を睨みつけていた。
彼は徐に拳を握りしめると、魔王の死体に勢いよく振り下ろした。
………魔王の死体には傷の一つもつかなかった。
仲間たちは
勇者をじっと見つめた。
言葉を発する者は誰もいなかった。
反響する衝撃音だけが、いつまでも響いていた。
ーーーーそれでも、勇者は勇者であった。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-08-22 00:43:32
9331文字
会話率:1%
異世界転移をした男子高校生は苦労の末に魔王を打ち倒し、異世界の女性たちから大人気になった。思春期男子としてはまんざらでもない状況のはずだが、日本的女性が好きだと公言する彼にとって異世界の華やかすぎる容姿の女性たちはどうも受け入れづらい。王族
と結婚させられそうになってついに逃げ出す決意をした彼だが、彼に惚れ込んだ女性たちはもちろん彼を逃がしはしない。はたして彼は自分の幸運に気づいて幸せになれるのか。
※「チートでモテモテな異世界転移をしてもまったく嬉しくない件について」、「強くて優しい勇者様がちっともなびいてくれない件について」の続きの話です。それらを読まなくても問題はありません。
※本篇とは別に閑話を掲載しましたので、そちらもよろしければどうぞ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-11-02 21:29:23
44266文字
会話率:22%