地球全体が汚染された近未来。人類は、地球再生に尽力する上層階級と、スラムで貧困に喘ぐ下層階級に分かれていた。下層出身のマリアは、高額な報酬目当てで上層階級の夫婦の代理母に立候補する。エリート層は子宮を外注するのが一般的になったこの時代、健康
な肉体しか持たない女にとって、それがほぼ唯一の成り上がる道なのだ。
処女であること=新品・未使用の子宮を武器に無事に採用されたマリア。しかし、子宮に受け入れた胎児はどうやら只者ではなかったらしい。妊娠後期になるにつれて、マリアは子宮から響く声に悩まされることになる。「マリア……母さん。助けて欲しいんだ」「うるさいうるさい! 言いたいことがあるなら、生まれてからせめて二年は待ちなさい」
神の子を自称する胎児と、処女にして妊娠したマリア。聖書さながらの「ふたり」は反発しながらも「母子」の絆を深めていくが──
以前投稿していた作品の加筆修正版です。副題なしでカクヨムとステキブンゲイにも公開しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-09-10 08:19:12
109012文字
会話率:31%