海の向こうの珍奇な植物を集めた王立植物園の別園は、”呪いの森”と呼ばれていた。
貴重な植物を守るために、そこは高い塀に囲まれ、警備兵が巡回し、世と隔絶されていたせいで、あらぬ疑いを抱かせたからだ。
その場所で働くトムと呼ばれる青年は、人嫌い
で気難しく、彼の森と同じように人々を拒絶した。
そんな”呪いの森”に、ある夏至の日の満月の夜、ジャネットと名乗る少女がやって来る。
どこか浮世離れした彼女は、トムの頑なな心に入り込んでいく。
しかし、トムにはある秘密があり、ジャネットもまた、ある事情を抱えていた。
二人が出会うことで、互いの運命が切り開かれることになる――。
*
『婚約破棄の忘れ形見』(N3030EH)の蛇足編・第四弾ですが、本編よりもずっとファンタジー。
スコットランドに伝わるバラッド『タム・リン』をモチーフにしています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-03-05 21:00:00
54190文字
会話率:35%