わたしは狼だ。比喩ではなく本物の狼だ。
故あってとある貴族一家のお世話になっている。
しかしこの一家の娘──まぁわたしの主なのだが、もう少し落ち着いたほうがいいのではなかろうか?
この間も、森で狩りをすると息巻いて迷子になったり、泳げるよ
うになりたいと湖へ行き案の定溺れたり、供の者も連れずに町へくりだして誘拐されかけたり。
わたしがいなければどうなっていたことか……。
──いや、多くは言うまい。
こんな方でも、わたしの愛すべき主なのだから。
やれやれまったく、わたしの主は世話がやける。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-07-28 00:00:00
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会話率:18%