「俺が家に帰してやる。君が帰るための道を作る。何があろうとも」
突如として邪神と呼ばれる悪しき神が現れ、
邪神の眷属である魔物によって滅びつつある大陸。
光の女神は邪神と魔物を討ち倒さんと、異世界から勇者を召喚した。
勇者
は女神の祝福によって与えられた
邪神を完全に滅ぼす事のできる光の剣を手に、仲間たちと旅を続ける。
そしてついに、邪神の住まう地である神殿の喉元まで迫った。
……しかし、最後の一手が届かない。
邪神は勇者の力に怯えて神殿に籠り、
神殿の周囲にある不毛の荒野には魔物どもがうろつき行く手を阻む。
神殿に辿り着けなければ、邪神を討てはしないのだ。
この状況を打破するべく、勇者ユウジの仲間である行商人シュエットは、
勇者たちと別れて独自に動く事を決意する。
時間はあまりにも少ない。魔物の脅威によって国家は破綻寸前。
それでも邪神の神殿へと勇者を辿り着かせるため、
協力者たちの力を借りてシュエットは準備を整えていく。
受けた傷が瞬時に癒える不死の少女パッセルと共に、大陸を駆け回って。
邪神を滅ぼす事が目的なのではない。シュエットの目的はその先にある。
平和な世界からこんな世界に無理矢理連れてこられ、
辛く苦しい旅をしなければならない少年のため。
初めて共に旅をした日に約束をしたのだ。
君が故郷に帰るための道を作ると。
これは女神の祝福もなく、魔術や奇跡も使えない、
ただの人間でしかない行商人が約束を果たす物語。
そして、彼の意地の物語だ。
*R-15。残酷描写、流血描写を含みます。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-05-31 20:10:36
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会話率:17%