某大学の学生である僕草薙一樹は、実は御本家の令嬢にして未来予知の巫女姫である草薙光葉に仕えるお世話係、『語り部』であった。
常日頃から己の主であると同時に婚約者でもある光葉に対する永遠の愛を豪語していた僕であるが、彼女の双子の姉であり天
才的科学者でもある草薙涼華に唆される形で、光葉との挙式の前日に涼華が独自に開発したタイムマシンを使って五年後の未来に赴き、自分が光葉への変わらぬ愛を貫けているかどうかを己自身の目で直接確認することとなる。
しかし何と五年後の未来では僕は涼華と同棲していて、己の語り部に裏切られたために予知能力を失ってしまった光葉は失意のどん底に陥っていたのだ。
慌てふためいて涼華に過去に戻してくれるよう頼み込むものの、再びタイムマシンに乗り込もうとしたまさにその時なぜだか光葉が駆けつけてきて、「あなたは涼華にだまされているだけなのです。このままだと永遠に昏睡状態にされてしまいますよ⁉」と宣うのであった。
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33915文字
会話率:46%
私は俗に言う、『時を駆ける少女』である。
それゆえに、これまで数えきれないほどの世界を滅ぼしてきた、罪人でもあった。
この現実世界にはけしてSF小説みたいに過去や未来の世界と自由に行き来できるような、御都合主義的なタイムトラベルなぞ存
在しない。
なぜなら世界というものは、あくまでも一つしかあり得ないのだから。
よって何かの拍子で過去に時間移動すれば過去こそが唯一の現実かつ現代世界となり、未来に赴けば未来こそが唯一の現実かつ現代世界となるだけなのであり、そしてその結果かつての現実かつ現代だった世界はあたかも夢や幻であったかのように、ただ消えゆくしかないのである。
つまりタイムトラベラーはタイムトラベルをするごとに、それまで自分の存在していた世界を滅ぼし続けているのだ。
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31380文字
会話率:55%