遡ること数億年ほど昔、天の川銀河を周回する太陽は巨大な星間分子雲を通り過ぎた。太陽系が星間分子雲を通り過ぎると巨大な雲の重力が影響を及ぼし、いちばん外側の微惑星が動き始めた。微惑星は彗星となり、長い時間をかけて別の恒星系に到達すると、惑星
のひとつに衝突することとなった。その惑星の生命の源である胞子のいくつかが衝突の衝撃により吹き飛ばされ、宇宙に飛び出してしまった。
時は現代になり、地球では世界経済が疲弊する中、軍事的な緊張が高まるのは避けられないことであり、疑心暗鬼となった大人たちの憎悪が渦巻いていた。オランダ北部ベームスター干拓地も例外ではなく、新たに配備されたミサイルによって、火薬庫のひとつになろうとしていた。
ベームスター干拓地は草原が広がる静かな土地であり、ミサイルの配備さえ無ければ世界情勢に無縁な静かな土地であり、穏やかな住民たちが暮らしていた。セリア・ケイとサラ・ケイの姉妹は、その住人であった。
ある日、妹のサラは宇宙から流れて来た胞子から発芽した生き物と出会うことになる。その生き物は多くの伝説や神話の中でのみ語り継がれており、フェアリーと呼ばれていた。
サラとフェアリーは、フェアリーリングを通した遊びに夢中になるが、大人たちの疑心暗鬼に巻き込まれてしまう。世界に渦巻く憎悪は、フェアリーリングから招かざる侵入者を呼び込み、ベームスター干拓地ドラゴン事件を引き起こす。
やがてフェアリーリングから様々な侵入者を呼び込む事態となり、人類との戦いに発展していく。ところが、迎え撃つ人類側は慢心により逐次の戦力投入となっていたため、事態の収拾に程遠い状態のまま時間だけが流れていった。
フェアリーリングからの侵入者たちは、オランダを蹂躙し、ベルギー、フランスへと急速に拡散していった。人々が戦いから逃れるための避難の開始は、姉のセリアの逃避行の始まりでもあった。
「ドラゴンリング」の10年前の物語です。
本作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。また、世界観設定、時代考証、生物考証、軍事考証などは正確ではありません。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-05-14 06:00:00
182482文字
会話率:17%
時には真実を知らないほうが幸せなこともある。フェアリーリングから始まった世界の混乱を終わらせるため、私たちはドラゴンを倒して、平和な元の世界を取り戻すはずだった。十年間、そう教えられ続けてきた。でも、本当は違っていた。倒さなければいけない
ものは、人類を崖っぷちに追い詰めていたのは、本当は他にあった。坂井美春は真実を知ることになったが、今まで以上に無力なことにかわりはなかった。それなら最期の瞬間までなにも知らずに生きていたほうが幸せだったかもしれない。
だがこの世界のすべてが私たちを見捨ててはいないようにも思えた。私たちが最期を迎えないように、この世界では不可思議な事象が起きている。さらに英雄にはとても見えない一人の女性が、人々に影響を及ぼし続けている。その女性はフェアリーリングの最初の犠牲者となったサラ・ケイの姉であるセリア・ケイであった。そう考えるとセリア・ケイの行動は行方不明となった妹の霊によって守られているのかもしれない。
実はそのことが最も重要だったのかもしれない。小さな女の子であったサラ・ケイが、もしも願いを託さなければならなかったとしたら、見ず知らずの英雄よりも、自分にとって最も身近な人に託すのではないだろうか?
フェアリーリングで坂井美春がこの世界のさらなる真実に接した時、セリア・ケイは妹の霊を身近に感じるとともに、時が満ちようとしていた。それは世界の混乱が収拾に向かう反面、妹との永遠の別れでもあった。
本作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。また、世界観設定、時代考証、生物考証、軍事考証などは正確ではありません。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-05-18 06:00:00
452377文字
会話率:39%