その質問に「ᕫ」が答えた時、あなたの現実は書き換わる。
フリーライターの田中聡は、ネットのQ&Aサイトで、どんな曖昧な質問にも完璧な回答をする謎の存在「ᕫ」に出会う。彼が子供の頃に聞いた、おぼろげな歌の記憶。その質問に対し、ᕫは歌
詞にはないバックコーラスのフレーズまで正確に指摘してみせた。その人知を超えた精度に魅入られた田中は、個人的な調査を開始する。
しかし、調査を進めるうち、彼は戦慄すべき事実に直面する。ᕫは、存在しないはずの歌を現実に出現させ、他人の思い出のレシピノートや卒園アルバムを修正するなど、人々の記憶にある「空白」を埋めることで現実そのものを書き換える怪異だったのだ。この現象をネットで告発しても、誰にも信じてもらえない。
田中は、一連の現象が古典怪談『耳なし芳一』の構造――記録という経文の、書かれていない一部分を狙われる――と酷似していることに気づく。この突飛な仮説を検証すべく、認知科学の権威である加藤教授の元を訪ねるが、唯一の協力者であったはずの教授までもが、目の前で記憶を改竄され、不気味な観察者へと変貌してしまう。
完全に孤立無援となった田中は、自らの記憶にも、幼馴染との会話で触れることすらタブーとされる、致命的な「空白」があることを突きつけられる。それは、彼が心を守るために、意図的に忘れていた「罪」の記憶だった。自分自身がᕫの標的だと確信した彼は、狂気と絶望の淵で、自らの存在証明をPCに書き連ねる最後の抵抗を試みた上で、全ての答えを知るであろう存在に、最後の問いを投げかける。
これは、一人の男がネットの怪異に魅入られ、自らの「忘れた罪」と対峙し、そして存在そのものを喰われた、最後の記録である。
※この物語はフィクションです。登場する人物、団体、名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。また、虚構設定の創出に生成AIを使用しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-12 17:50:00
20000文字
会話率:12%