「ユイ。結婚前に約束した契約期間を、来月で終了しようと思う。すでに王家には了承を得ている。来月には、あたらしい妻を迎える手続きが必要になる。というわけで、きみもこれからの人生をあたらしいパートナーとすごすもよし、一人を満喫するもよし、とにか
く好きにやってくれ。おたがい、それぞれの人生でしあわせになる。おれたちの結婚は、しょせん親どうしが決めた「幼馴染婚」ってやつだ。おれたちの間には幼い頃からの情みたいなものはあっても、愛はなかった。おれもきみも、来月から自由だ。いいね?おいおい、そんなに笑顔にならないでくれ。なんだって?おれも笑顔だって?おかしいなぁ。一応、神妙な表情にしているつもりなのに」
この日、夫であるアントニー・パウエル公爵から離縁を告げられた。もともと、わたしたちは契約結婚だった。彼には愛する女性がいることも知っている。
何もかもわかっていた。覚悟をしていたはずなのに、その覚悟が足りなかったみたい。
いままで自分の気持ちをごまかしていたけれど、ごまかしようがなくなっている。
しかし、もうどうしようもない。
いずれにせよ、わたしには時間がない。残された命の時間も含めて。
それだったら、命ある限り病を抱えている彼をどうにかしてあげたい。
彼とすごせるわずかな時間だけでも、彼が少しでも元気になるよう努力したい。
そして来月彼の前から去れば、命が尽きるまで彼と彼が愛する女性がしあわせになるよう、祈り続けたい。
彼に離縁を告げられた日、わたしはそう心に誓った。
※全三十五話。ハッピーエンド確約です。とんでもなくゆるゆる設定です。ご容赦いただけましたら幸いです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-09-14 21:31:41
62014文字
会話率:26%
親離れして良いんですよ。
最終更新:2021-10-21 20:00:00
3716文字
会話率:23%