それは、当に、光の道。
光は、そのまま、本堂の弥勒菩薩像を、捉える。
光の軌跡を追う様に、カメラの目線は、弥勒菩薩像を、捉える。
弥勒菩薩像は、横顔に日の光を受けて、輝いている。
くすんだ色合い。
木造。
外側の、塗りも装飾も、ほとん
ど、剥げている。
であるにも関わらす、「輝いている」としか言い様の無い佇まい。
光を浴びている横顔は、語り掛ける。
決して、上向くことは無い。
決して、眼を開けることも無い。
こちらを、向くことも無い。
が、確実に、語り掛けて、語り続ける。
会いに来た人々に、参拝に来た人々に。
興味本位で覗く人々に、ただ同行しただけに人々に。
コウタに、タカギに、その他の人々に。
コウタが、頷いている。
いつの間にか、うんうん、頷いている。
話し掛けられたかの様に、うんうん、頷いている。
タカギは、デジビデを注意して覗くが、コウタの他に、誰もいない。
コウタが対しているのは、弥勒菩薩像のみ。
レンズ越しに、弥勒菩薩像を見ていたタカギは、デジビデを下ろす。
レンズ越しでなしに、直で、自分の眼で、弥勒菩薩像を見る。
‥‥‥‥
うんうん。
頷く。
心と頭に、暖かい気体が、流れ込む。
それを動力源に、走馬燈が、廻り出す。
今までの記憶が、廻り出す。
その走馬燈は、『死』とは真逆の、『生』に拠ったもの。
廻っているだけでも、なにか、『うわあ!』とか『パアア!』とかの、好ましい感じがする。
幼き頃の、メリーゴーランドを、思い出す。
山門から、弥勒菩薩像へ、光の道は、伸びる。
伸びて、在り続ける。
その途中に、コウタとタカギは、佇む。
光の線は、みんな諸々一切合財包んで、輝く。
課長と課員、阿吽の呼吸の、喜び共有である。
仲が良くて、ノリがいい。
「はい、キチンと並んで、並んで」
課長の声に合わせて、課員が、動く。
ガヤガヤ喜びながらも、整然と、動く。
一列に、改めて、並ぶ。
列が、整う。
その時、窓から。
窓から、光が、射し込む。
日の光が、鋭く優しく、射し込む。
射し込んだ光は、列の上を、滑る。
課員の頭の上を、滑る。
一人一人の頭で、スキップし、加速を付けて、滑る。
加速を付ける毎に、滑らかさを増し、滑りゆく。
それは、当に、光の道
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-04-14 09:44:51
20271文字
会話率:20%
「別れましょう」生徒会長にも就任し、順風満帆に思えた俺に突然の言葉。中学2年間つき合っていた1歳年下の幼なじみに別れを告げられた。抜け殻になっていた俺に声をかけてきたのはオタクの楠原洋介。高校2年の年末にコミックマーケットに連れて行かれて俺
の人生が動き出したんだ。誰かも分からない小説家やイラストレーターに頼み込んで同人小説を作ったり。くすんだ色の高校生活に色が付いてきたと思ったが、心の穴は埋められない。これはそんな主人公、三瀬治樹に巻き起こる騒動の話だ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-01-06 15:15:17
28983文字
会話率:72%
ある日バイトの職場にて 一人のアルバイトが植物のアロエを貰う。カレは「植物を育てている人は心が優しくて好き」と好意ある女性の言葉に、お客さんに植物を育てたいのだと熱く語りそれを真に受けたある一人の女性がアロエをカレに渡してくれた。
貰った時
は満面な笑みを浮かべて受け取ったが、いい加減なカレは3日も持たずして育てることを止めた。
店の裏側にごみ捨てに行った主人公は、ほったらかしにされているアロエを見つけ、何故あんなところに置いているのかとカレに聞くと、別に欲しかったわけでもなく育てるのも面倒だからと、アロエを早く枯らせる為の処置の為置かれていた。
アロエは水も貰えず元気が無く葉の色も緑から枯れくすんだ色になっていた。
それから何か月もたち、日差しのきつい夏を迎えていた。
一つだけ外に無下に置かれ、日差しのきつい中放置された植物。それでも外で必死に成長しようとしてる姿に見るに見かねた主人公はアロエを貰うことにする。
だが、家に持って帰って育てているとある日知らない女の人が横になって一緒に寝ていた。
しかも可愛くて、冷たくて、柔らくて、気持ちぃぃ。
植物とドタバタな日常を過ごすファンタジードラマ折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-06-23 20:48:08
1666文字
会話率:5%
自らを無色と思い込む物静かな青年、友木昌平(ともきしょうへい)は物心ついたときにはすでに母親の記憶がなく、常に心にぽっかりと穴の空いたまま過ごしていた。そんなある日、目の前に同じく「無色」を自称するくすんだ色をした妖精に出会ってしまう。
「ワタシが本来の力を取り戻すために協力しなさい」
そうして協力することになった昌平だったが、調べていくうちにどうやら母親の消息にも関係があることもわかり………
また隣に住んでいるひとつ年上の幼なじみ、常盤永遠子(ときわとわこ)も悩みを抱えていた。「どうしたら昌平にもっと頼ってもらえるのかな…」
ミステリアスで少し悲しい。そんな青春ストーリー始まります。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-12-22 00:10:13
7044文字
会話率:36%
父親とのつながりは「名前」と「ペン」だけ。
そのつながりを自分から断ち切ろうとしている女性の元に届く贈り物。
当人には伝わらないかもしれない父親の優しさも、ありますよ、ね。
過去作品の投稿です。発表時と名義が異なっています。
最終更新:2014-03-22 15:10:17
1150文字
会話率:0%
アトリの勤める会社は、神素(しんそ)という特殊な気体で地球を茶色いガス惑星に見せかけ、宇宙人の侵略から人類を守っている。それは青く美しい地表を、あたかも裏返したかのように茶色くくすんだ色に変えてしまうことから、「リバーシブル・アース」計画と
呼ばれていた。
ある日、アトリは町でホトトギスという少女に出会う。少々言動のおかしな女の子だが、なぜだかやけに気になり、アトリは休みの日には彼女と会うようになる。
やがて宇宙人が地球に近づき、リバーシブル・アース計画が発動されるのだが――。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2011-11-12 14:10:13
85627文字
会話率:22%