新しい時代の幕が開いてから既に十年という時間が経った。妖怪変化魑魅魍魎の住み難い時代となって、時が経ち過ぎた。
江戸の昔から生きているような古参の者からすれば、大正の今と云うのは世知辛いものだろう。人間も、妖怪にとっても、等しい地獄かも
知れぬ。
そんな地獄の、或る夜の事だ。
―――暗黒の森を貫く豪雨。捨てられて幾年の山小屋。煌々と照る洋灯。遠雷。
黒衣の僧侶、濡れ鼠の書生、傴僂(せむし)男、芸者、私。
登場人物は全て揃っていた。完璧な状況、整った舞台、その只中に私も存在していた。
その時私は主人公でなく、登場人物の一人であり、舞台の一つであり、夜を成す歯車の一つであった。
十の歯車は重苦しく軋み、妖どもを集めていた。否、集め終わっていた。
そして始まった。私が生涯忘れ得ぬ雨夜の顛末、鏑矢は彼の一声から。
「一興、怪談会と洒落込もうかエ。」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-08-11 23:46:50
20077文字
会話率:22%
あの日の遠雷と。
飴と。
お母さんと。
周りのみんなと。
幼すぎた私の話。
キーワード:
最終更新:2014-05-02 15:26:56
1391文字
会話率:10%
そうして彼は、何度も何度も祖父を弔う。
最終更新:2012-09-12 12:38:11
1773文字
会話率:34%
遠くで鳴り響く遠雷。私は愛されている。夜中に鳴る電話、聴こえる音。マンションの一室で湿った世界がぐわんぐわんと広がる。一人の女性のお話。
最終更新:2008-10-15 22:47:44
2431文字
会話率:12%
夏休みもあと僅かとなった、遊びの帰り道。ふと見上げると、そこには大きな入道雲が広がっていた。
最終更新:2007-04-30 02:13:32
3834文字
会話率:34%