阿藤敬は、勇者だった。魔王討伐を成し遂げた、勇者だった。しかし敬は、過保護な仲間に守られ続け、何もせずに魔王討伐にまで辿り着いてしまった勇者……本人曰く、養殖勇者だった。
空虚なままに魔王討伐の旅から戻り、相応しくない称賛に耐えられずに飛び
降りを敢行した敬は……何故か、また勇者として魔王討伐を目指さなくてはいけなくなる。自分には出来ない……そう思う敬は、しかし二度目の魔王討伐の旅を始める。
今度は一人で、少なくとも最初だけは……誰の力も借りず、もう一度ちゃんと勇者としてやり直そう。その決意を胸に、養殖勇者は旅立っていく。
敬は知らない。
自分を鍛えた仲間たちが、勇者に勝るとも劣らない実力者だったことを。
敬は知らない。
自らが倒した魔王との戦いで疲弊した世界が、どう変わっているのかを。
自分の実力を知らないままの勇者の、どこか奇妙な旅が、幕を開けるのだった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-06-10 23:31:27
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