幕末の江戸の片隅で、好まざる仕事をしながら暮らす相楽遼之進。彼は今日も酒臭いため息を吐いていた。
かつては天才剣士であったこの男も、今では生活に疲れた浪人者に成り果てて、もはや武士と誇れる士道もない。
妻を亡くし、その想いと共に残っ
た幼い娘。彼らが住まうは自遊長屋。そこの住人たちはみんな貧しく、相楽も貧しい。
少し世話焼きな娘のお花、一本気な錺り職人の夜吉、明けっ広げな棒手振の八助。他にも沢山の住人たちと、助けあいながらの日々を過ごしている。
迷い苦しむときの方が多くとも、大切なものからは目を逸らしてはならないと、ただ愚直なまでの彼らに相楽は心を寄せていた──
そんなある日、相楽に思いもよらない凶事が降りかかるのであった……
◆全24話(完結済)
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-06-11 15:15:39
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会話率:34%