高級住宅地、及び、高級マンション各所に、宅配便配達人の姿が見える。
宅配便受取人は各家庭の世帯主で、実際に宅配便を受け取ったのは、世帯主の配偶者、子息、メイド、またはヘルパーといった人々であった。
さて、事件が起こったのは午後九時だっ
たが、それ以前に帰宅し、宅配便に不信感を持った、実際に警察に届け出た世帯主も存在した。
その重量から、箱の中身は恐らく本であろうと家人たちに推測された。実際、そのような事例は多かったのだ。
そして午後九時。ついに爆弾が爆発する。
被害世帯は二百。直接の死者は世帯主が六名。配偶者、子息も含めた被害者は二百名を超えた。
事件直後、被害世帯の異様性はすぐに判明した。財務省官僚、及び、民間会社に天下りした元財務官僚の家庭のみだったからである。
事件は世間を震撼させたが、国会は休まない。
A国会議員。
「日本経済が長期にわたるデフレ状態にありながら、あくまでも財政出動を実施しない理由について、財務副次官、明確に、お答えください。
B議長。
「C財務副次官!」
C財務副次官。
「国民生活を健全に守ることに関しまして、プライマリーバランスの黒字化は、骨太の方針にもございますように、政府として必要な政策でございまして……」
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-01-29 06:06:39
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「共同募金にご協力、お願いしまーす」
街頭でそんな声がすると、ついふらふらと募金箱の前で財布を開いてしまう。
女子高生の呼び声は、誘蛾灯のように世のおじさんたちを引き寄せる。
一方で、高校支援を担当している若い官僚は、予算削減の対抗
策を練っていた。
「なっ、協力してくれたら売り上げの一部を回してやるからさ」
財務官僚を巻き込み、空前絶後の共同募金がスタートした。全国の高校で売り上げを競わせるという壮大な取り組みである。
はたしてこれが、日本の未来を築く一歩となりえるのか。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-10-09 12:46:12
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