多くの歳月を人とともに重ねた物や道具には魂が宿ることがある。
この世界では、それを“精霊憑き”と言う。
幼い頃に森で拾われた女の子は、カリンと名づけられ、田舎の村で育てられた。
黒髪に黒い瞳。不思議な肌の色。低い鼻。この国では珍しい容姿のカ
リンは、人を相手にするのが苦手だ。
村のいじめっ子たちから逃げ回るうちに、知らず知らずに魔力感知の能力を鍛え上げてしまい、お陰で“物の気持ち”までわかるようになってしまったカリン。
魔法学院に入学するはずだったのに、手違いで、小間使いに就職することになってしまう。
「良かった。お城の小間使いなら洗濯物や掃除道具が相手。あまり人に顔を見られずに済むわ」
カリンは知らなかった。お城にはいくつもの“精霊憑き”たちがいることを。そして、物にまつわる厄介事が、彼女を待ち受けていることを――――。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-09-03 07:26:34
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会話率:13%