その年の冬至は、朔旦冬至《さくたんとうじ》の日だった。朔旦冬至とは、新月と冬至が重なる年の冬至のことで、19年に1度しか訪れない日だ。古来、冬至は極限まで弱まった太陽が復活する日。すなわち「復活の日」とされていた。その日こそ、バーツラフが復
活できる日だった。バーツラフは息を殺して二人が近づくのを待った。
「頭の悪そうな父親と、ウサギのように臆病そうな子供よ! そなたらの知性や人格などどうでもよい! 余を、ここから解放するためだけに動け! 余を千八十年の惰眠から蘇らせよ!」
バーツラフは暗闇の中で叫んだ。聖ヴィート大聖堂の正午の鐘が鳴りだす。観光で訪れていた桃井千早と紡≪つむぐ≫親子は、発光する宝物庫の扉の中に吸い込まれていった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-06-14 12:00:00
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