「お兄ちゃん」
「ん? ――!」
おもむろに俺の部屋に入って来た祐実(ゆみ)を見て、思わず息を吞んだ。
祐実は青を基調にした花柄の振袖を着ており、普段は下ろしている髪をアップにしていたのだ。
艶めかしいうなじが覗き、得も言われぬ背徳
感がよぎる。
「どうしたんだよその格好」
「……お兄ちゃんと、初詣に行きたくて」
「……ああ、初詣か」
確かに今日は大晦日。
子どもの頃はよく二人で初詣に行ったものだが、祐実が高校に入ってからは、祐実は友達と初詣に行くようになり、去年も一昨年も大晦日は別々に過ごしていた。
「今年は友達とは行かないのか?」
「……うん、今年はお兄ちゃんと行くって言ったから」
「そ、そっか」
何故今年に限って俺と行きたいなんて言い出したのかは見当もつかないが、別に断る理由もないしな。
「じゃあ、久しぶりに二人で行くか」
「……うん!」
「――!」
普段は無表情な祐実が不意にヒマワリみたいな笑みを浮かべたので、俺の心臓がドキリと一つ跳ねた。
イ、イカンイカン、妹に対して、何をドキドキしているんだ俺は。
今から約10年前、俺が9歳、祐実が8歳の時に親が再婚して義理の兄妹になった俺たち。
この10年、俺は祐実のことを兄としてずっと守ってきたんだ。
最近はめっきり大人の女に成長しつつある祐実を見て、煩悩に頭が支配されそうになることが増えたが、いい機会だ、除夜の鐘を聴いて煩悩を退散させよう。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-12-30 21:06:53
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