この手が。看護師として、生きる手助けをし、そして生きる希望となっているはずなのに。
(自分がただ虚しいだけ。空っぽの自分過ぎて……空っぽなんです)
川瀬が言った言葉を思い出す。梶井は握っていた手に力を込めた。
(君はこの手を誇りに思っていい
はずだ)
✳︎✳︎✳︎
『生き時計』と呼ばれるデジタル数字によって国民の寿命を監視し、自殺を未然に食い止めている『デボラシステム』。政府組織『生き時計管理課』で徹底管理運用されているこの正義をかかげるシステムに、かつて疑問を持つ者はいなかった。だが、人の生き死にを操作することに違和感を持ち始めた者たちが次々に立ちあがると、その疑問はおおいに膨らんでいく。
その中のひとりオペレーターの梶井=ルイ=レイモンドはある日、川瀬 町子の『生き時計』の動きに、ちょっとした違和感を覚える。看護師として自分の人生や人の死に疑問を持ちながら生きる川瀬。双子の妹を亡くした彼女には驚くべき特殊な異能力が備わっていた。
✳︎✳︎✳︎
二年以上前に投稿したものを全面的に改稿しました。以前の作品は検索外にしてあります。R15は、たぶんプロローグだけです。1話目は登場人物の紹介のみの回で、2話目から始まります。お読みいただければ幸いです。エブリスタさんでも投稿です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-06-09 09:12:47
91682文字
会話率:34%