航(わたる)と瑞希(みずき)が二人で暮らすようになってから、三月が過ぎようとしていた。ある冬の朝、スマートフォンの着信表示が微かな電流を航の胸の奥に走らせた。唯(ゆい)の声を聴くのは十年ぶりだった。懐かしい声が胸の奥の扉を直接叩いた。
「
剣(けん)が、亡くなりました。」
唯は、注意深く感情の乱れを削ぎ落とした静かな口調で剣の死を告げた。返す言葉を探しあぐねているうちに、唯は葬儀の日時と場所を伝え始めた。航はテーブルの上にあった広告チラシの裏に、震える手でメモを取った。“唯は、大丈夫か”という言葉が喉元まででかかってたけど言葉にできなかった。窓際に歩いてカーテンを開くと、見慣れていた住宅街の風景ではなく、時間の流れから切り取られた旧い白黒写真のような景色が音を潜めて佇んでいた。今、唯のいる場所でも雪は積もっているのだろうかと暗い空の向こうに思いを馳せた。
「おはよう。」
振り返ると、すぐ後ろに瑞希が立っていた。いつもの朝と1mmも変わらない“おはよう”だった。パジャマの上に僕のスエットパーカーを無造作に羽織り、両手を自分の息で温めながら、僅かに首を傾げて僕を見上げていた。
「雪、酷くならないといいね。」
窓の外を見上げながらそれだけ言うと、瑞希はくるりと踵を返して朝食の支度にとりかかるために台所に向かった。
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剣の葬儀で唯と再会してきた航。
「指一本触れてない。」
嘘をついた。
「いい子だね。あの人の前では。」
「でも、心には触れた。多分。」
少しだけ思わせぶりに言ってみた。瑞希の口が重くなった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-04-22 08:05:15
24808文字
会話率:50%
令和5年8月6日、ボクは広島の病院で90歳の曾祖母ちゃん(父の父の母)に会って、彼女の80年前の白黒写真を目にした。
それは天使みたいにすごく可愛らしい女の子だった。この子を生身で拝見してみたい。時の流れは残酷なものだな。なんで自分があの
時代にいなかっただろうと残念に思ってしまった。
「この子に会いたいか?」
「はい」
そして気がついたらボクは昭和18年にタイムスリップ? しかも当時の曾祖母ちゃんの体で!?
そのまま元の時代に帰れず、幼女として戦争時代を過ごしていく。
『夏のホラー2023』公式企画の参加作品です。
注意:広島を舞台として、第二次世界大戦や原爆にも関わってシリアスな描写もあります。
短編のつもりだったが、結局意外と長いので3部分に分けました。1日1部分投稿します。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-09-16 19:06:33
8904文字
会話率:39%
オルゴールみたいな音が聞こえる。
やがてそれは、ぽんと弾けて愉快な音楽へと変わっていく。
サーカスみたいな、懐かしい子ども時代みたいな、わくわくして泣きそうになる曲が、いつもそのアパートには漂っていた。
童話(?)です。突発的に書
きました。
エブリスタにも同じ名前で同じ話を投稿しております。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-04-19 07:00:00
12759文字
会話率:27%
アプリで写真を加工する女の子とそれに否定的な男の子との恋の話。彼女がアプリで加工するのにはワケがあって、それには昔の白黒写真が関わっているらしい。加菜絵が写真アプリを使う理由とは。
そして二人の関係はどう変わるのか。
【こんな人におススメ】
・両想いなのにすれ違う高校生の純粋な恋の話が好き
・写真アプリってなんで使うかわけわからん
エブリスタの妄想コンテスト「写真」応募作品です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-03-01 18:46:31
4355文字
会話率:35%
お父さんが古いアルバムを落札した 白黒写真の可愛い女の子が写っていた
最終更新:2019-04-01 00:21:50
557文字
会話率:0%
色覚障害の女子校生と、白黒写真にこだわるクラスメイトのちょっとした物語。
※ 不適切や不快感を与える表現がありましたらご連絡下さい。訂正または全文削除等の対応をさせて頂きます ※
最終更新:2018-02-06 20:24:45
5410文字
会話率:43%
キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン
「はい、みなさん教科書223ページを開いてください。今日は近現代史、カリーヌ王国連合の黄金期であり、教育、政治、産業、金融の改革についてやっていきたいと思います、まず……」
私は先生の話
を聞かずに空を見上げていた。「ねえねえ、もしかしてこのスズキって、あなたのお父さん?」隣に座っていたクラスメイトに声をかけらた。その子が指をさした教科書には、若い顔立ちをした父さんが白黒写真で写っていた。私の父さんは、革新的なことを次々と成し遂げた人だ。小さい頃から色々お話を聞かせてもらったっけ……
*これは、フィクションです。この内容にでてくる団体、地名、人名などは実在しません。
また、R15指定、残酷な表現は保険です。
一話ごとが短いです。ミスも多く、改訂するのも多いです。
毎月1回 第1週目の日曜日 朝0時更新予定です。
初投稿なのでお手柔らかにお願いします。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-03-13 00:00:00
34034文字
会話率:42%
大嫌いな父が残した手帳。震える文字でメモが添えられていた。
――身勝手なお願いだが、父さんの大事な人に、俺の想いを伝えてほしい――
そして、手帳には一枚の古ぼけた白黒写真と、稚拙な地図、そして暗号化された数字の羅列が続いていた……。
※重複投稿:のべぷろ!、星空文庫、pixiv
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-07-12 00:48:35
80443文字
会話率:57%
叱られるのが怖くて嘘をついてしまった子供と、死と戦争の記憶の話。
最終更新:2010-04-30 02:28:19
2314文字
会話率:24%