腐ったニシンに当たって死に瀕したシェイクスピアが一言「無念」とつぶやいたその時、現代日本ではひとりの女子高生が現実に倦んじ果てていた。
ストラッドフォード・アポン・エイヴォンの霧雨が日本の街角を吹き抜ける桜吹雪と二重映しになったその時、
沙翁と呼ばれる文豪の心は、少女「翁(おきな)沙(いさご)」の身体に宿る。
俳優としての経験がものをいい、超人的な適応力で現代日本の女子高生生活を始めた享年52歳のオッサンは、ほとんど宿命的に芝居の匂いを嗅ぎつける。
文豪ウィリアム・シェイクスピアがそこで見たのは……。
原作者としては我慢がならないレベルにまで叩き落とされた『ハムレット』であった。
我が子にも等しい作品を無造作にこねくり回され、思わず稽古場に乗り込んだ沙……少女ウィリアム・シェイクスピアの前に立ちはだかったのは、やけに英語が達者で胸と態度の大きい演劇少女であった。
(この作品は、『カクヨム』様にも掲載しています。)
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-08-08 13:07:35
100321文字
会話率:30%