羊子が死んだ。羊子は生前いじめられていた。いじめの首謀者だった晴は動揺した。彼女は羊子の死が自殺だとは信じたがらなかった。この中学校では数年に一度生徒が変死するらしい。それは何か人ならざるものの仕業なのかもしれない。羊子もきっとその何もの
かに殺されたのだ。晴はそんな自説を証明することに取り憑かれていった。
ところで、ぼくには想いを寄せている少女がいた。同じ学校ではない。どこに住んでいるのかも分からない。ぼくらはいつも道端で偶然出会い、この稲無田の街を散歩しながら話すのだ。「彼女」と過ごすのは楽しかった。だけど最近気になっていることがあった。ぼくは「彼女」について何ひとつ、その名前さえ知らないこと。そして、出会ってから随分経つのに、「彼女」の身体はまるで成長していないこと……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-01-03 17:45:43
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会話率:49%