比奈の背後に男の幽霊が見えると言われ、克代は該当する人物を探し当てる。比奈に死霊が憑いているのはもはや間違いなかった。克代は死霊に負けないよう比奈を鍛えると共に、もしもの際を考えて比奈のリュックに水やカイロ等を詰めて備えた。
折も折、比
奈が誘拐された。誘拐犯の一人は、比奈の唯一の友だった葵を痛めつけ、死に追いやった男であった。幽閉された比奈はすんでの処で葵や他の霊達に守られ、無事に救出される。
比奈の幸せを一心に願う克代。その心は十分に比奈に伝わり、いつしか比奈にとって克代は無くてはならぬ人になっていた。
その克代が奈緒美に刺されて死んだ。奈緒美は克代が夫に離婚届を送っていたことを知らず、一日も早く離婚するよう頼む為に克代を訪ねたのだが、離婚届は送ったと言う克代の言葉を嘘と思い込み、刺したのだった。殺す気は毛頭無かったが、脅すつもりで持っていった包丁が仇となった。
比奈の腕の中で息絶えた克代の身体はキラキラと輝き、それに呼応するように比奈の身体から青白い光が吹きだして、克代の煌めく光りに吸い寄せられてゆく。比奈の放つ青白い光の中には様々な男女や子供が現われ、最後に晴れ晴れとした笑顔の葵が、まるで別れを告げるかのように比奈の周りをぐるりと回り、それから克代の光りに吸い込まれていった。
克代を刺して始めて正気に戻った奈緒美。ついこの間まで、本妻に申し訳ないと分を弁えて倹しく暮らしていたが、一人娘の優香が名門小学校に合格し、上流階級の人達と付き合うようになってから変ってしまったのだ。
妾だった奈緒美の祖母。それが原因で自殺した伯父。子供にだけはそんな目に遭わせたくなかったと、奈緒美は過去を振返って弁護士に語った。
それを聞いた比奈は、「誰かが庇ってあげなければ、優香ちゃんが可哀そう!」と叫ぶ。比奈自身が『人殺しの娘』と虐げられた過去があるからだ。
かつて比奈の父知之は、会社の命令で大勢の社員に解雇を通告した。その時に自殺者が出て、知之は自分を責め苛み、その結果、酒に溺れて妻子に暴力を振るうようになった。優しかった父親の荒れ狂う姿に比奈の心は傷つき、父は死んだと、その存在すら消してしまうようになっていたのだった。
比奈が父と再会した時、父は会社を辞め、深く反省して酒を断ち、昔通りの優しさを取り戻していた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-01-22 16:30:27
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会話率:33%
一之瀬比奈には友達が居ない。どんなに努力しても友達は出来ず、いつしか比奈はリストカットを繰返すようになっていた。その比奈に葵という名の友が出来た。だが葵は、『天空の楽園に導いてくれる七色の光』について教え、『唐獅子』の根付けを比奈の手に残
して、死んだ。
葵の後を追おうとして樹海を彷徨っているうちに比奈は克代と出会う。
克代は夫と二人で懸命に働いて功成り名を遂げ、仲睦まじく暮らしていたが、突然夫の愛人奈緒美から離婚を迫る手紙を受取った。晴天の霹靂であった。ショックのあまり夫を殺した克代は死ぬ気で樹海を彷徨うが、死を目前にして、山ほど居る友の中に、真の友が一人も居ないことに気づいて愕然とする。
死体と遭遇した比奈と克代は命からがら樹海を抜け出し、克代の従兄弟徳次を頼って故郷に逃げる。そこで克代は夫が死んではいなかったことを知り、離婚届に署名して送る。子供の居ない克代は、死んでしまえば生きた証など何一つ無く、ただ虚しく朽ちてゆくだけの自分があまりにも惨めで情けなく、せめて誰かの役に立ってから死にたいと思ったのだ。
克代が幼い頃、故郷の村には戦地から引きあげてきた兵士がいた。ガダルカナルの激戦で大勢の戦友を失った兵士は、戦友達の遺族に其々の戦友の最期の様子を知らせる為にあちこちを行脚し、最後にこの村に落ち着いたのだった。霊媒師から兵士の世話を頼まれた徳次は兵士が亡くなった時に、天空へ昇っていく七色の光を見たという。
拒食症で痩せ細っていた比奈は、克代と一緒に暮らすようになってふっくらと元気になっていった。比奈から「父は既に死に、母は私が邪魔」と聞かされた克代は、せめて比奈が元気になるまで助けてやりたかった。だが一緒に暮らすうちに比奈が普通で無いことに気がつく。死霊が憑いているのではないか?
地獄の淵まで追い詰められ、危うい処で助かったのは比奈のお陰と感謝する克代は、なんとかして比奈を死霊から守りたいと願う。
二人は老人ホームで働くようになるが、或る日、比奈は泥棒の濡れ衣を着せられて絶望し、再び野山を彷徨う。「虐められる人間は、いつでもどこでも虐められる」と嘆く比奈を、「虐められるのは、むしろ素晴らしい人だからだ」と諭す。克代は比奈に、死霊に打ち勝てるよう強くなって欲しかった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-01-22 16:21:01
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