大陸の東にある大国稜の皇都、永春。東西交易で栄えたこの都には、多くの異類が人に紛れて暮らしている。高級青楼、金繡楼の主人である双月祥は、西域から来た青年だが、普段は永春一の美貌の妓女宵娥として振舞っている。その正体は、二百年を生きる吸血鬼
であり、金繡楼の妓女もみな同族だった。
名門白家の養子で道楽息子と評判の青年暁賢は、月祥が吸血鬼であることを知る数少ない人間のひとりで、飲み友達として付き合っている。
ある日、若い女の死体が発見される事件が立て続けに起こる。いずれも血を抜かれた痕跡があったため、他の異類から月祥ら吸血鬼が犯人として疑われる。濡れ衣を晴らすために調べ始めた月祥と、友達だからと言いながら好奇心満々で協力する暁賢は、被害者たちが新興宗教〈精魄道〉に関りがあることを突き止める。これ以上被害者を出さないため、また月祥は自分たちの濡れ衣を晴らすため、〈精魄道〉の秘儀への潜入を計画する。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-07-02 12:13:35
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会話率:45%
通常の月とは別に『セカンドムーン』と呼ばれる特殊な光を放つ六つの月が天に浮かぶ世界『ムーンレイ』――そこには『セカンドムーン』から『月光』を呼び出しその身に纏うことで超常の力を発揮する『月詠』と呼ばれる特別な存在がいた。『月詠』達は空に浮
かんだ、赤、青、緑、黄、紫、銀の月から同色の『月光』を呼び出し使役することで人間を超越し絶大な力を発揮することができた。そして国々はその力を用いて絶えず戦争を繰り返していた。
そんな世界の遠い昔、戦乱の時代。突如通常の『月詠』を超える怪物がある日現れる。その名はクロウツ。彼が『月光』を呼び出す際には、空に今まで存在していなかった七番目の黒い月が浮かび、その身には六つの月の光のどれとも違う『黒い月光』を纏っていたという。そしてその力は通常の『月光』を遥かにしのぎ、その圧倒的な強さのもとクロウツは突然世界を侵略し始めた。
『黒い月光』を纏った悪魔が現れ腕を振れば大地が割れ、剣を刺せば海が裂け、街を通れば大勢の人々が肉塊と化す、そんな地獄絵図の中で抵抗する者ももちろん現れたが意味など無かった。その後一年と経たず、たった一人によってムーンレイは崩壊寸前にまで追いやられたのである。そんな事態を重く見た各国は国の間にあったわだかまりを捨て連合軍を作りクロウツ討伐に乗り出す。
その後、大勢の犠牲の末、ヴァルファレスという一人の騎士とその仲間たちによってついにクロウツは討ち取られる。倒した後もその伝説的な強さは後世まで語り継がれたが、クロウツ亡き後は『黒い月』や『黒い月光』が現れることは二度と無く、クロウツ諸共その存在は疑問視されやがてヴァルファレスという伝説的な英雄の物語を脚色するために生まれた設定と見なされるようになっていった。『銀月のヴァルファレス』というおとぎ話の中の設定として、である。
そしてクロウツが死んだ千年後――ヴァルファレスが生まれたレギン国の王都パルテンにとある少年がやってくる。少年の名はラグナ。騎士採用試験を受けるためにやって来た彼の身には、かつて世界を滅ぼしかけた呪われた力が宿っていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-05-31 22:52:29
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