その人は、決して恋してはいけない人でした――。
御忍びでやって来た収穫祭で、アナスタージアは一人の兵士と出会った。
野性味のある兵士は彼女にとって新鮮で、一目で恋に落ちてしまう。だが、本当の名前を告げることはできなかった。
アナスタージア
はリンザール王国の王女で、父王亡きあと祖国を背負う身だったのだから。
兵士が名乗ったのもまた、偽りの名前だった。
ここにいるはずのない者として、名乗るわけにはいかなかったのだから。
長く続く戦乱の中で芽生えた恋。名を偽りながらも想いは本物だった。
許されない恋だと知らずに、二人は一途に想い合う。
それが、戦乱を更に泥沼に引きずりこむことになるとも知らずに。
※「カクヨム」にも掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-10-13 22:40:16
149777文字
会話率:27%