「血の奴隷?」
最強のウィッチャーと謳われるイゼルは、それを聞いて思わず微笑んだ。「そんなの、とっくに昔の話だよ。今は人間が“主(あるじ)”となる時代だ。そうだろう、僕の小さなコウモリちゃん?」
メイド服を着た吸血鬼、ヴィオレッタは無表情で
、硬い口調で答えた。「はい、ご主人様」
イゼルは眉をひそめ、ヴィオレッタを強引に自分の懐に引き寄せた。
「お利口じゃないね」
「わ、私は——んっ!」
イゼルがヴィオレッタの首筋に手を伸ばすと、後者の表情がわずかに動いたが、抵抗はしなかった。ヴィオレッタの首には、黒い首輪が異様な存在感を放っていた。
ウィッチャーのお嬢様はその首輪をそっとずらし、吸血鬼メイドの首筋に顔を埋めると……噛み付いた。
◇
寿命論ではない。しかし、寿命論に勝る苦しみだった。
影魔(シャドウデーモン)の血脈はイゼルに常人を遥かに超える力と生命を与えたが、同時に彼女を絶え間ない戦友の死の痛みに晒し、罪悪感は彼女を苛み続けた。
「傍にいること」——それは彼女にとってあまりに贅沢な願いだった。
ある墓参りに訪れ、偶然捕らえられた一人の吸血鬼令嬢と出会うまで。
吸血鬼の長くしなやかな命は、イゼルに「この子をずっと傍に置きたい」という強烈な思いを抱かせた。そのためなら、吸血鬼と人間の盟約を破ってでもヴィオレッタを囚(とら)うことを彼女は躊躇わなかった。
◇
しかし、囚う対象こそが己の弱点であるならば、その強引さと固執もいつかは和らぐものだ。
「イゼル」
「何だい?」
ヴィオレッタは、今しがたキスした唇を舐めた。「タバコ、やめられないの? 口の中、煙草臭いわよ」
イゼルは困ったように言った。「うーん…それはちょっと難しいな…」
「じゃあ、もうキスしない」
「わ、私がやめる!やめるから!絶対やめるから!」折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-07-03 21:39:21
18511文字
会話率:37%
元は陸軍の英雄と呼ばれ、今は生まれ故郷でしがない何でも屋を営む主人公の夜叉神篤人。
そんな彼は、普段と同じように依頼者の自宅に直接訪問するために、鎖三月橋と呼ばれる橋を通ろうとするのだが、その時、海軍の軍服を着た少女、黒条綾音が海を眺めてい
る様子を目撃する。
知り合いというわけでもなく、別段、珍しいところがあるわけでもない彼女なのだが、どうしてか彼女から目を離すことができない夜叉神。
しかし、それは実は彼の戦友の死が関係していて!?
英雄と呼ばれた夜叉と、軍神と讃えられた黒の、儚く壮絶なラブストーリー。
二人は無事に結ばれることができるのか……折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-07-24 23:38:09
77211文字
会話率:35%
戦友の死を嘆いていた椿37型66こと椿は、ひょんなことから人間界の下にある妖界へと迷い込んでしまう。
そこで出会った、いの字と名乗る少女に雇われ、彼女の体と魂を取り戻す事になる。
この出会いは偶然か必然か、ふたりの物語が今、始まる。
カク
ヨムにも投稿していました。↓残骸
https://kakuyomu.jp/works/16817330656110797812折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-05-01 19:00:00
130595文字
会話率:52%
一九四二年一二月八日より開戦したアジア・太平洋戦争。
その戦争に人生を揺さぶられたとあるパイロットのお話。
※一部史実と異なる点があります。注意してください。
※初投稿作品のため、拙い点も多いかと思いますがご指摘いただければ修正してまいり
ますので、どしどし、ご意見の程お待ちしております。なお、六話ほどで完結予定です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-03-19 15:00:00
34759文字
会話率:35%
異世界転移をしたオレ。
しかし異世界はファンタジーではなかった。
長期化した戦争の中で自爆、特攻、生贄による死を覚悟し
戦友の死や戦争による不可逆の負傷を乗り越え
力強く生き残らなければならない。
現実世界に戻るために・・・
最終更新:2020-03-09 00:45:37
2055文字
会話率:4%
海に、空に、陸に、華々しく咲き誇り、死を怖れず、勇ましく戦う日本軍兵士達の物語
遠く離れた異国の地で、戦う兵士達は何を考え、何を想っていたのだろうか、、、、、
日本武士道此処に有り。
念仏唱えて懸かって来い。
大和魄が燃
えて燃えまくる幾多の戦い。
戦友の死の哀しみも乗り越えて、命の限り戦い抜く!
それが大和魄折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-10-13 10:00:00
37261文字
会話率:50%
―― 生き残ってしまった罪は、少年にあまりにも大きな傷を残した ――
人類が火星という新世界を手にした未来、そこは決して人類に明るい未来をもたらさなかった。
人類と異星生命体が生存権を賭けて戦争を続ける火星で、主人公 緋那神 翔 は一人
、生き延びてしまった。
戦友の死や、敵に背を向けた事実が心を苛むなか、戦地には似つかわしくない儚げな少女、マキナと出会う......折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-02-11 22:45:45
38731文字
会話率:43%
広大な領地と強大な軍事力を持ち、永い安泰を保ってきたとある王国。すべての軍を長きに渡りまとめあげてきた総司令官は頭を抱えていた。気の遠くなるような全軍の管理、繰り返される戦い、部下や戦友の死、死罪の宣告。国の要である人物は段々と鬱病と過労
に陥っていく。
豊かな生活を目指して軍に志願、入隊した青年ヴァルは、敵国からの思わぬ攻撃で総司令官の元へ向かうが、総司令官の鬱と体の限界を目の当たりにしてしまう。総司令官は考え、ヴァルに提案をする。
「お前に総司令を託したい。だから俺に死に場所をくれ。」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-05-03 19:23:20
4504文字
会話率:55%