七十年の時を経て、はるか北方の空中都市に住まう〈天の民〉が再び〈地の民〉への侵攻を開始してから九ヶ月。
戦況は膠着し、戦線から遠く離れた〈地の民〉の国々ではまるで戦など起こっていないかのような平穏な日々が過ぎていた。
たった一人の身内
であった祖父ワクトーの死後、生まれ育った村を出た薬師の少年カナンは、流れ着いたプレストウィック国の領都の薬屋で住み込みで働いていた。
領都は表向きは平穏であったが、隣国ガラハイドの予言者の告げた不吉な予言が密やかに人々の心を不安にさせていた。
その予言によると、七十年前の先の大戦では越えられなかった天然の要害・ギズサ山脈を越えて、〈天の民〉の軍勢がここプレストウィック国に攻めてくるというのだ。
母親の身分が卑しいガラハイド国の若き領主を蔑んでいるプレストウィック国領主アリダールは、予言を携えてやってきたガラハイド国の使者を無下に追い返したが、その直後から国中の地の水晶をかき集め始めていた。
〈天の民〉は地の水晶には触れる事が出来ないという言い伝えがあったからである。
そんな中、カナンの雇い主の薬屋の主人が、報奨金欲しさにカナンが水晶の首飾りを持っていると役人に密告してしまう。
その水晶の首飾りは祖父の形見であった為、領主に献上する事を拒否するカナン。
激怒した役人がカナンを捕らえ、力づくで彼から首飾りを取り上げようとした時、突如黒衣の男が現れる。
この謎めいた黒衣の男エイデンとの出会いによって、カナンは天と地ふたつの民の存亡をかけた戦いに巻き込まれていくのであった。
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会話率:36%
祖父の形見である水晶の首飾りを奪おうとする役人の手を逃れ、ハネストウの薬屋を出て路地裏に身を潜めたカナンとエイデン。
しかし、そんな彼らの前に、今度は隣国ガラハイドの騎士スヴェアたちが現れ、カナンを予言者マリエルが予言した者だと告げる。
カナンはガラハイド国の命運を握る「鍵」だと言うのだ。
いきなりそんな突拍子もない事を言われ、困惑するカナン。
その時、突如〈天の民〉の空中砦がプレストウィック国の領都を襲う。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-10 10:41:59
15514文字
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王であるブレンに絶対の忠誠と献身を誓った、〈連者〉ヨル。
王から信頼と無二の友人という栄誉を受けながらも、ヨルがブレンに素顔を晒したことはなかった。
「ずっと側にいる」という幼き日の約束を叶えるため、ヨルは身分も性別も名前をも捨て、ブレンの
側にいる。
自分を殺すことで、成り立つ約束に満足したはずのヨルだったが、互いの成長と同時にやがて揺らぎ始める・・・折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2011-11-21 18:40:15
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