今日は息子ダリルの誕生日であったにも関わらず夫のライネスは帰って来なかった。
息子が生まれてから5年、そろそろ愛想もつきました。
(どうして、なんで?!)
牢屋の中で王妃は爪を噛んだ。
(ここは『マリアーデの恋物語の
世界』で私はヒロインのマリアーデだ。
学園編のシナリオ通りに進めて王妃の座に収まったのだから追加パックのハーデル王国編が始まる筈だったのにどうしてシナリオ通りにちっとも進まないの?!)
追加パックでは王子と結ばれ、王妃となったマリアーデ達の元に隣国ハーデル王国から開戦が申し込まれる所からストーリーは始まる。
何とか応戦していたがハーデル王国とは国力で劣るこの国では僅かな時間稼ぎにしかならず遂に王城が落とされてしまう。
国王が不在の時を狙われた為、王妃として指揮を執っていたマリアーデの元へハーデル国王のイーサンが現れる。
血に濡れた剣をその手に携えながら現れたイーサンに震えながらも気丈に王妃として対応するマリアーデの姿に心惹かれた彼はそのまま彼女を攫ってハーデル王国へと凱旋するのだった。
ここまでがプロローグで舞台を新たにハーデル王国へと移してストーリーが始まるのだ。
ストーリーでは王妃になってから直ぐに開戦していたのにマリアーデが王妃になってから数年経とうが一向に開戦の予兆は現れなかった。
だから仕方が無くこちらから動いてストーリーを始めようとしたのだ。
開戦準備をしていたらイーサンは現れた、だと言うのに何故かその隣には既に別の女が居た。
バキリッ
噛んでいた爪が折れた。
(そうか、あの女も転生者か!それでゲームの知識を利用してヒロインの座を乗っ取ったんだわ!)
折れた爪先から血が垂れるが気にも掛けず爪を噛み続ける。
(きっとストーリーの強制力でイーサン様はあの女に良い様にされているんだわ!私がきちんとヒロインとして元の正しいルートへ修正しないと!)
そうと決まれば行動は早い方が良い。
マリアーデは牢の中からイーサンを直ぐに呼ぶようにと何度も叫んだ。
その結果、あまりにも煩いと喉を焼く毒薬を飲まされヒューヒューと空気が漏れる音しか聞こえない状態で処刑場に向かわされる事になる。
処刑場でイーサンの姿を見止めたマリアーデは激しく暴れたが兵士達によって難無く取り押さえられ、刑は執行された。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-01-06 21:07:54
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会話率:35%